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馬籠の石畳を歩いていて白い梅の花を見つけた時、
ふいに、風が吹きました。
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風は、ひとつの歌を運んできました。

   まだあげ初めし前髪の
  林檎のもとに見えしとき
  前にさしたる花櫛の
  花ある君と思ひけり                      


藤村の「初恋」という詩です。

ここ馬籠は木曽路の宿場町。
島崎藤村はここで生まれ、あの「夜明け前」の舞台になった場所です。

藤村は生涯を通していくつかの詩集を書きました。
この「初恋」は藤村の処女作といわれる「若菜集」に収められています。
彼は詩歌についてこのように書いています。
「詩歌といふものをもっともっと自分の心に近づけやうと試みた。黙し勝ちな私の口唇は
ほどけてきた・・」

若き藤村もまた、胸にあふれた思いを言葉にこめて詩歌を誕生させていったのですね。
「詩歌は静かなるところにて思ひ起こしたる感動なりとかや。げにわが歌ぞおぞき苦闘の
告白なる。」詩集初版の序より

少し難しいなと思っていたら、こんな詩を見つけました。

「狐のわざ」

庭にかくるゝ小狐の
人なきときに夜いでて
秋の葡萄の樹の影に
しのびてぬすむつゆのふさ

恋は狐にあらねども
君は葡萄にあらねども
人しれずこそ忍びいで
君をぬすめる吾が心                「若菜集」



彼は胸に沸き起こる恋心を、小さい狐に重ね、愛しい君を葡萄に重ねたのです。



恋心・・・恋の風が起こる時
胸の中は熱くて、痛くて、やるせなくて、
そんな自分と向き合えるものは、まぎれもなく自分自身。
でも、抱え切れなくて、なんとかしたくて、


たとえば路傍(みちばた)の花に、恋の想いの咲き方を重ね、
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たとえば路傍(みちばた)の水のよどみに、恋の想いの浮き方を見つめ、
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たとえば路傍(みちばた)の流れに、恋の想いの激しさを思い知り、
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心の想いは命を宿し、声となり、言葉となり、詩歌が生まれるのです。





私は、しばらく目を閉じて、心地よく吹く風に漂ってみました。
ゆっくり目を開けた時、路地からまた新しい風が吹いてきました。
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馬籠の人たちの生活がそこにはありました。
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藤村が生まれ、育ち、ここで風や、水の流れや、小さな生き物達や
花たちを見つめながら、生きてきた場所。
そんな少しメランコリックな思いに浸り、
詩歌というものは自然の中に見出す自分の心のあらわれかもしれないと
思いながら路傍(みちばた)をゆっくり歩く小さな旅。
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白い梅の花は、林檎の白い花を

柔らかな春に近い風に乗せて運んで来てくれたのかしらと思いました。




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飛来☆星ラ
飛来☆星ラ
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