今日、バスに乗っていると、大きなギターを抱えた金髪の青年が乗り込んできた。
青年は汗をかきながら、自分の身長はあろうかというギターをよいしょと抱え込んでいるにも関わらず、いっしょに乗った老婦人に空いていた席を譲った。
すると、老婦人は青年にお礼をいい、はたと頭を下げるのを辞めた。
「どちらかでお見かけしたのですが…。おたく、テレビにでていませんでしたか」
青年は金髪の頭をかきながら、「うれしい、この前、ケーブルテレビにでたんよ」と答えた。
老婦人は目をキラキラさせて、「そうなの?やっぱりどこかでみたことがあると思って」と、踊るように話した。
青年はうれしいなぁ、とまた頭をぽりぽりかいた。
どうやら、青年はこれから大阪やら東京でライブを控えているらしく、これから向かうらしい。
老婦人は頑張ってね、と楽しそうであった。
傍目でみていて、僕はこの青年には今の時間を思う存分生きてほしいと願った。
後悔なんてしてほしくない、と自分の黒いスーツに包まれた膝の上にちょこんと置かれた、鞄に目を落としながら。
今日の歌
青葉市子『日時計』
|