第2思春期レコ買い日記・旧館

2010年4月にブログお引っ越ししました!

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Chitinous Ensembleの唯一の作品。

もう探し始めて20年以上という長年のWant物件だ。私のレコード探しの道程は人生のどのへんまで来たのだろうというある種の感慨に浸ってしまった。
私の周囲の人びとのそのほとんどがレコードなんてものに興味を失うないし、音楽そのものに大して興味を示さなくなった人が多いなかで、何で私は世界中のほとんどの人が恐らく知らないであろうこのレコードに、決して安くはない対価を支払ってまで所有したいと思うのだろうかとつくづく思う。
いや、勿論自分なりの理屈はとうとうと述べることはできるのだが、それとて大概の人から見れば明らかにどうでもよいことについて愚にもつかない手前勝手なヘリクツをならべている、ないしは浪費の自己弁護を展開しているに過ぎない訳で、聞かされる方こそいい迷惑だ。
という訳で、本ブログを読んで頂いている数少ない皆様は私の話を多少なりとも聞いていただけるとってもありがたい方々ということに気付いたところで、本アイテムの話へ移ろう。
バンド名のChitinous Ensembleとは直訳すると「キチン質楽団」(キチン質=昆虫等の外骨格。軽量・堅牢さが特徴)ということになる。
素晴らしいネーミングだ。バンド名を表したジャケットも素晴らしく、昆虫図鑑を見るような愛らしさ、美しさ、適度な乱雑さ、子供の頃に戻ったようなワクワク感を与えてくれる。そんなキチン質楽団を取り仕切るのはチェロ奏者のポール・バックマスターだ。ニュークリアスのイアン・カー、ソフト・マシーンのジョン・マーシャルをはじめ総勢60人近くの錚々たる面々が名を連ねているが、やはり本作の主宰はバックマスターであることは間違いない。

ポール・バックマスターは私にとってはサード・イアー・バンドのチェロ奏者というのが真っ先に頭にとって浮かぶが、それはどちらかというと邪道な連想で実際はエルトン・ジョンをはじめとする多くのミュージシャンのバックのストリングス・アレンジメントをしている人。あの帝王マイルス・ディビスからも高い評価を受けた大変な才人だ。ところが、彼のリーダー作品である本作を聴くと、サード・イアー・バンドでの活動は彼にとってやりたい音楽の一部であったことが伺える非常にアヴァンギャルドなものだ。
ざっとその音楽を表現をすると、ギル・エヴァンス的なジャズ系ストリングスをバックにマイルス・デイビス的なインプロビゼーションをしているわけだが、集団即興的色合いが強くいかにもブリティッシュ・ビッグバンド・ジャズという音に仕上っている。ただ、同じビッグバンド構成でも同国のマイク・ギブスやマイク・ウェストブルックらと微妙にタッチが違って聴こえるように思えるのは、やはりその素晴らしいストリングス・アレンジメントによるところが大きいといえるだろう。私はゲインズブール&バーキンなどで聴かれるエキセントリックなストリングスが大好きなのだが、そこまで露骨でないにせよ、十分に妖しく不安げな音に導かれ、リード楽器達によるテーマからアドリブを展開していく様は、バンド名通り図鑑からたくさんの甲虫(Chitinous)達がそのキチン質の体の下に隠していた透き通った羽を広げ、時にはぶつかり合いながら、夕暮れの空に飛び立って行くようだ。
長い間探していたこのアルバムは、正しく長年の間に私の中で勝手に堆積させてきた期待を裏切ることのない素晴らしい作品だった。

それにしても、なぜこんな作品が出来上がったのだろう?
これだけ多くの人々が録音の為にスケジュールを割いて集まったというのはたいしたことだ。
最初からそんなにセールスが見込めるとは思えないこのプロジェクト、ギャラだって少なかったとしてもこれだけの人数になると金額はかさむはずだ。これだけの人数を収容するスタジオだって大変だ。30人近い弦楽器奏者にパート譜を書く労力だってバカにならない。
よくぞまあレコード作品にすることころまで漕ぎつけたものだ。普通に考えれば大変だったはずだ。
内容が素晴らしさとともにバックマスターの才能に心から敬意を表したい。
当然ながらこんな巨大プロジェクトは継続できるはずもなく1枚で終了してしまうわけだが、このアルバムを聴いていて思うのは結局はやはりミュージシャン(いやクリエイターと言い換えた方がいいだろう)とは「執念」の強さというのものがモノを言うんじゃないかということだ。
これだけのことを軽々とやってのけたとして、もしバックマスターにより強固な執念があったら、多少は小編成にしてライブやツアーを行ったり(このへんを実際にやってしまうのが傾向は違うがマイク・オールドフィールドだったりする)、ポピュラー音楽との接点を見いだして作品を継続して発表したり、とにかく「やるんだ!」という思いの下、音楽史上の金字塔を建てていたかも知れない。
でもそのへんをやらない(実際「割りの悪い」挑戦だ)で、アレンジャーになってしまうところがバックマスターのバックマスターたる所以なのだろう。
翻って、どちらかというと「執念の人」タイプの私から見ると、これだけの作品をサラッと作って(いや実際サラッてわけにはいかなかったかもしれないが)割のいい編曲作業に移行したバックマスターのことを羨ましいやら、もったいないやら、なんだか複雑な気分だ。


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