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イエスの「こわれもの」DVD-Audio
乱立の末、淘汰されていく規格の多くはスペック的に優れているものは少なくない。
生き残るのはマーケットの席巻者であって、技術のイノベーターではない。
ましてやスペックの優れたものはコストが高く、マーケットからは嫌われてしまう。
かくてDVD-Audioはマーケットから消え、対抗する規格のはずだったSACDもあとを追おうとしている。
当初はこんなもの買おうなんて考えていなかった。
もっぱらオリジナルプレスのレコードを追いかけ、復刻されるCDの音がプアなのはマスターテープの劣化と考えていたため、劣化したマスターをどんな規格を使って復刻してもあまり意味がないと考えていた。
そんななか、私がオリジナルのLPの録音を「怪しい」と考えていたジェネシスが一連の作品をSACDでリリースした時に遅まきながらSACDプレーヤーを購入して聴き始めた。
それ以来SACDを少しずつ買うようになっていった。
昨年ななんとキング・クリムゾンが一連の作品を「終わったはず」のDVD-Audioでリリースを開始。
最初はSACDでのリリースを期待して無視を決め込んでいたが、昨年末にビートルズがこんどはリンゴ型USBにFLACフォーマットを収録してリリースしたの機にさんざん考えた挙げ句、M-Audioのオーディオ・インターフェイス「FireWire SOLO」を購入し、手持ちのMacbook→FireWire SOLOで再生することにした。
この組み合わせなら最低限の出費でとりあえずビートルズのFLACが聴けるしDVD-Audioも聴けるはず。さらにはたまに仕事で作曲する時にヴォーカルの収録にも使える。
ビートルズのFLACは素晴らしかった。
と、ここまでやったらFireWire SOLOのD/Aコンバータの能力に疑念を持ち、今まで持っていたバーブラウンのPCM1710搭載のDAC(「ラジオ技術」誌頒布のもの)に繋いだところ、48KHzまでならFireWire SOLOよりはるかに情報量の多いいい音がしたので、Macbook→FireWire SOLO→PCM1710の組み合わせで使うことにした。
残念ながら5.1chは聴けないが、設定の面倒な5.1chより当面2chステレオが優先だ。ここでこれまで持っていたクィーンの「オペラ座の夜」のDVD-Audioを聴いてみたところ・・・クィーンの「オペラ座の夜」のUKオリジナル盤マトリクス2/2はカッティングレベルが低くどうにもイマイチ感がいなめなかったのだが、この組み合わせで聴いたところ、ゲインも十分(当たり前か)でこれまで聴いてきた中で最高の「ボヘミアン・ラプソディ」が堪能できた。
続いていままで見送ってきたキング・クリムゾン「リザード」のDVDーAudioに移り、2009年リマスターの音質を確認した。
DVDーAudioの音質はSACDとは少し毛色が異なるが、通常のCDに比べ規格の優位性が際立っている。(規格自体が終わってしまっているのが残念だが。)
ここまできてようやくこのイエスの「こわれもの」の購入となる。
不朽の名作「こわれもの」はイエスの中でも特にオリジナル盤の音質が素晴らしいレコードだ。PlumないしRed&Maroonと呼ばれるオリジナルプレスの音はひょっとしたら70年代初期のすべて英国盤のなかでもベスト5に入るのではないかと思うくらいダイナミックでそれはもう国内盤、US盤、英国盤セカンドプレスとは全く別物の音がする。
随分前に紙ジャケットで復刻された本作はHDCD規格だったが、規格どうこう以前の問題でオリジナルの音質には遠く及ばなかったので5.1chだろうがなんだろうが購入対象としては完全に埒外だった。
それがクリムゾンのDVD-Audioでその規格の優位性に気づいたときはすっかり本品は市場から姿を消し、レア盤と化していた。
発売された時点で聴けなかったこともあるが、本品のレビューを読んだり、周りのコレクターたちの話を聴くと「いい音らしい」という話が聞こえてきて、それなりに熱心に探していたところ、このたびようやく購入することができた。
さっそく聴いてみたところ・・・(ここからはMacユーザーの戯れ言になっていくのだが)
ドルビーステレオで聴いてみたら、「ラウンドアバウト」の冒頭部分のアコースティックギターパートの大きなボリュームからアンサンブルに移行すると突然ボリュームがダウンする。
なんだこりゃ!? 一応聴き通してみたが「ハート・オブ・サンライズ」をはじめ、ダイナミックレンジの広い曲はすべてそうで、とても鑑賞に堪えない。
ひょっとして5.1chサラウンドを2chで聴いているのかと思って確認したところ、5.1chもステレオも音は違うのに同じ症状。ううむ。
さては三文エンジニアの所業か!?と疑ってみる前に通常のDVDプレーヤーに繋いでプレイしてみたところ、音はイマイチながら普通のボリュームで鳴った。
こうなるとオーディオ・インターフェイスのせいか?セッティングのせいか?
ということでいろいろ試しているうちにVLCというほとんどすべてのフォーマットが再生だけならできるソフトをダウンロードしてそちらで聴いてみたら、ようやくある程度の音質で普通に聴き慣れたバージョンで聴けた。そうか、今まで使っていたMacにデフォルトでついてくるDVD Playerというソフトは自動的に再生レベルを均一化してしまうのか。。。映画ならともかくDVD-Audioでは使えない。ということでVLC→FireWire SOLO→PCM1710で聴いたところ(やっとだよ・・・)
素晴らしい。素晴らしい音質だ。
オリジナル盤のダイナミックさにひけをとらない素晴らしい音だ。
マスターテープの若さという点で差はあるものの、ワイドレンジ感はレコードをはるかにしのぎ、特に高域の空気感が良く出ている。ドラムのソリッドな感じを出す低域もよい。
失踪するパートではそれほどでもないが、スローパートに入ると際だってくる。音色でオリジナルに劣るかもしれないが、これもひょっとしたらいい機材を使えばかなりいい線まで来るかも知れない。とりあえず今は48KHzで聴いているが96KHzだと機材さえ良ければかなりいいのではないだろうか。
すばらしいマスタリングだ。紙ジャケット復刻とは比べものにならない。マスターが激しく劣化しているわけではなかったのだ。
こうなると5.1chも聴きたくなってくる。うーん。そんなこと言ってももう音質的にあまり多くは望めないコンパチブル・プレーヤーくらいしか新品では手にはいらないし、第一この先DVD-Audioのソフトはほとんど増えないだろうから、そんなもんに大金ははたけない。
なんということだ。今年出るであろうクリムゾンの「太陽と戦慄」のDVD-Audioもぜひ聴いてみたいし、できれば5.1chで聴いてみたいものだ。どうしよう??? 私はまだ本品の魅力の半分以下しか味わっていないのだ。
最後にアルバムの内容についてだが、これくらいの名作になってくると無数にある賛辞を参照していただくのがよろしいかと思う。
個人的は「恐怖の頭脳改革」でも触れたエディ・オフォードの雑な仕事ぶりが素晴らしいと思う。(下記URLも参照)
http://blogs.yahoo.co.jp/hiro_eurasia/59432916.html
昔、素晴らしいと思った録音の空気感が何割か増しでこのDVD-Audioで再び甦る。
なんとかSACDで再発されないものだろうか・・・
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