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84歳の著者はまだまだ健在で、30篇を越える長編スパイ小説を書いてきている。
「パナマの仕立屋」があまり面白くなくて、久しく追いかけずにいたが、手にとってみる。
理不尽にして過酷である劇的な現実世界に、地に足をつけて堂々と渡っていくヒーロー、といっても大概は世知にたけているが家庭的には不幸で、やもめ暮らしのグスタフ・マーラー好きというような老境に入り始めつつある一見冴えなくみえる男という登場人物を中心においている。
この本では、正義感の強い若く有能な弁護士、亡父の財産=過去の影を引きずった銀行経営者、組織を向こうにまわす―それはその組織こそが利用している―破天荒なリーダー、チェチェン人の若きテロリストといった人々が登場する。
私の行ったことも行くこともないドイツのハンブルグの街が、息をするように描かれるのは、著者自身が現在の姿も過去の様子もよく知っているためだろう。
旧ソ連赤軍、つまりボルシェビキ革命軍の大佐が、この不思議な存在であるテロリストの父であるけれど、私利私欲と強欲によって得た膨大な資金を銀行に預けてあり、それを当然の遺産相続ぶんとして引き出そうとすることを中心にすえて、MI6やCIA、ドイツ当局の水面下の暗闘があるようにみえるが、そう活劇が始まる訳でもなく、案外流れは一見静的である。著者が丁寧に描く群像の一人一人に、じっくり目をやりながら読み進めた方がいっそう面白さを増すという気はする。
この種のエスピオナージを読んでいた方が、今の私には合っている気がする。
読み終えたころ、パリの乱射事件があった。
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この方の作品は、有名な「寒い国から帰ってきたスパイ」をもう、ずっと昔
映画「裏切りのサーカス」はDVDで、なにしろベネディクト・カンバーバッチが出ているので・・・でも、その時はわかったようなきがしたのに、もう一度借りてこよう
2015/12/3(木) 午後 10:58
> poetryfish9さん。そうですね。「寒い国…」はつとに有名です。どれをとってもそんなに遜色がないと思います。ありがとうございました。
2015/12/4(金) 午後 8:56 [ hiroaki_noji ]