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ちょうど1年前,山本敏晴氏に会いました。
お知らせする場がありませんでしたので,今回,晴れて皆様にご紹介します。
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彼はごく普通のちょっと小柄な男だった。
がっちりとした身体に坊主頭。
まるで格闘家のようだ。
当年とって39歳。
彼はよく飲み,よく食べ,よく語った。
「今あるNPOやNPO,国際団体の80%は嘘。うちはこんなことやっている。素晴らしい。だから寄付をくれ。会員になってほしい。まるで宗教団体だ。あの★でさえ,80%が人件費。これは国際援助団体とは言えない。適正なのは30%が維持費で,70%以上が社会貢献。それでなければ嘘だ」
それにしても,今までの著書は原稿料も印税ももらっていない。写真展や講演会も無料で行っている。
「よくできますね?」と話を向けると,
「それは私のお願いから来ているからだ。皆さんに少しでもいいから世界の他の国,とくに貧しいアフリカやアジアの国について興味をもって欲しい。もっとその国のことを考えてほしいと,私のほうからお願いしているのだから,私は何ももらわない。ただ,講演会で交通費をもらっている。でも持ち出しも多い。今まで貯金でやってきたが,そろそろ尽きてきた。今まで5000万ほど使った。最近は堕落して,マスコミの取材に対しては謝礼をもらっている」
山本俊晴氏は,1年の半分以上を海外で過ごす。
(http://www.act-org.jp/JAPANESE/index.html)
彼の国際援助活動の原点には,やはりアフリカがある。
小学校六年生の時、医師だった父とアフリカを訪ねた彼は,
群がるハエを払おうともせず、スイカを口にする子どもの姿に衝撃を受けた。
彼は,長い間、国際協力の道に入ることはなかった。
仮に医療ボランティアをして数百人の命を救ったとしても、
自分が日本に帰ってしまえば何も残らない。
工場をつくっても、西洋文明の押しつけになる。
「偽善ではないのか」という思いが消えなかったからだった。
でも,「未来に続くシステム」としての国際協力があるのではないのか。
それを確かめたいという思いが募り、2000年7月に,
世界約80カ国で医療支援を行う「国境なき医師団」に身を投じた。
「僕は普通の人間で,男だ。1人で海外に行き,いい女がいれば抱きたくなる。だから,妻から日本のエロ本を送ってもらっている。講演会でもそれはよく言っている。僕を偶像化しないでくれ。普通の人間だ」
ごく普通の男がごく普通に考え,このままでは地球は終わりになると分かったから行動を開始した。
「私は講演会でいつも言うことだけれど,この地球を「宇宙船地球号」だとすれば,日米欧を中心とする約二十億人はファーストクラスに乗っていて、ここでは水道の蛇口をひねれば飲める水が出る。スイッチを押せば電気がついて,テレビが無料で見れる。義務教育も無料。新聞やテレビという世界を見渡せる<窓>もある。一方、アジア、アフリカの四十数億人の大半はエコノミークラスですらなく、貨物室に乗せられ,ぎゅうぎゅう詰めに押し込められている。水道をひねっても水は出ないか,出ても大腸菌が混じった水が出てくる。電気などなく,テレビという娯楽もない。」
「地球号」の乗客は、貨物室内で急増中。五十年後、百億人に近づくというローマクラブなどのデータもある。人口爆発を放置しておけば、深刻な食糧難、環境破壊、そして、破滅的な人類間の争いが待っている。 環境学者によると,今からおよそ70〜80年後に,人口問題・食糧問題・エネルギー問題など,あらゆる面で地球はそれを支えきれなくなり,破局が訪れるといわれている。
「僕は心配だ。人口が100億を超える50年後の未来からなんとかしようと思っても,きっと間に合わないのではないか。人口100億を超えてしまう前のこれからの50年が,もしかすると人類が未来に続いていくための最後のチャンスになるかもしれない。」
今回,僕が彼に会ったのは,彼が「世界共通の教科書をつくる会」の代表と知ったからだ。
僕は今まで18年間ずっと理科の教科書をつくってきた。
環境問題,エネルギー問題,人口問題なども教科書の中で扱ってきた。
そのキャリアを生かせないか。わたしのノウハウすべてで,ほとんど無償で働く彼を支援することができないか。
その思いから彼にメールをして,会うことが決まったのだ。
でも,これは奇跡に近いことだった。
もう来月早々,彼はブラジルに行かなくてはならない。
ブラジルに行けばメールも通じない。
写真展が終わり,次の講演会が開催されるまさに隙間に僕たちの会合が奇跡的にセットされた。
僕は一番信頼しているデザイナーを一緒につれていった。
僕は彼と一緒に,中学理科の教科書をつくってきた。勿論,彼も地球の将来を案じている人間の1人だ。
山本氏は続けた。
「小学校も中学校も,国語,算数などの教科教育よりもまず国際教育が必要だ。世界で何か起きているのか,どんな知識,技術が必要なのかをまず分かって欲しい。それから教科教育をすれば,なぜ国語が必要なのか,社会や理科,算数,数学,そして英語が必要なのかが分かるはずだ。世界はこんなにも問題を抱えている。日本は特殊なのだ。日本人が日本人の枠でじっとしているのではなく,世界に目を向けて欲しい。世界が平和になるには,相手の違いを認めること,お互いの違いを認め合う事が必要だ。」
「世界共通の教科書の構想も今,6分科会が立ち上がっている。環境問題,エネルギー問題,人口問題を扱ったり,世界共通の歴史をつくったりする構想がある。順序としてはまず絵本のような教科書だ。
字だけでは伝わらない。次に環境問題の教科書だろう。世界共通の歴史が一番難しい。右からも左からも,キリスト教原理主義者もイスラム原理主義者も納得させられる歴史をつくるのが一番難しい」
僕たちは7時に会って,11時過ぎまでの4時間,語り合った。
僕はアフリカのブルキナファソで起きたトーマス・サンカラの悲劇を語り,坪田愛華ちゃんの「地球の秘密」や中丸薫の著書の存在を彼に伝えた。
彼からはシエラレオネで起きた事,国境なき医師団の理事を近いうちに辞めること,最近の著書の話,そして数え切れないほどの勇気をもらった。
しかし,彼は自分の活動に精一杯で,『地球村』の存在を知らなかったのだ。
僕は彼に,僕の知っている限りの『地球村』を伝えた。
「ぜひ高木さんの講演会に呼んでほしい。聞いてみたい」
僕たちは再会を約束して,JR田町の駅の改札で別れた。
僕たちは,普通の男が普通のことをする凄さを目の当たりに見て,二人とも異様に興奮していた。
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