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日本の外科医

 日本人は器用だから手術もうまい、といった自画自賛を日本で時々耳にします。

 世界的に権威のあるNew England Journal of Medicineに以下のような論文が出ました。

D2 Lymphadenectomy Alone or with Para-aortic Nodal Dissection for Gastric Cancer

 進行胃癌の手術時のリンパ節郭清はD2が(日本では)標準的ですが、これに大動脈周囲のリンパ節郭清を加えることの意義をランダム化試験によって調べたものです。日本の国立がんセンターが中心となって行われました。結果的には拡大郭清により治療成績は改善しなかったようです。

 この結果自体は、世界的に当然として受け止められています。同じ雑誌に数年前、胃癌に対するD1とD2郭清を比較した試験がオランダから発表され、差がなかった結論付けられました。これを受けて、欧米ではD1が主流になっています。リンパ節郭清が縮小傾向に向かっていることを支持する結論です。

 しかし、注目すべきは患者さんの生存率です。進行胃癌の術後5年生存率が70%前後、欧米では40%以下と見積もられ、驚くべき好成績です。このことは雑誌の編集者からのコメントでも触れられています。

 同様の成績の差はこれまでもよく話題になっていましたが、欧米からの主張は、日本人と欧米人の胃癌はタイプが異なる、といったものです。日米双方で手術を見てきた僕の個人的見解ですが、日本の外科医による胃癌手術に対する情熱、丁寧な研究や経験が手術手技の些細な点となって蓄積され、この好成績に繋がっているのだと受け止めています。これはランダム化試験では証明できない事柄ですが、手術手技のちょっとした違いが患者さんの術後の違いに繋がることを外科医なら誰もが知っているでしょう。
 
 日本人外科医がより器用かという議論には賛成しかねますが、日本人の気質は外科医に向いていると思います。

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今朝ちょうどこのニュースを経済新聞(12版・科学)で読んだところでした。・・・兵庫医科大学の笹子教授(ら)が国立がんセンターなど24施設で、1995年−2001年の間に治療を受けた患者500人の5年生存率を比較したもので、標準手術は69%、拡大手術では70%と差はなく、がんが再発する場所なども違いはなかったため「再発防止を目的に拡大手術をすべきではない」・・・というものでした。 削除

2008/8/11(月) 午前 10:07 [ cafe owner ] 返信する

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cafe ownerさん、コメントありがとうございます。このような外科的な論文が日本からもっと多く出るべきだと思っています。

2008/8/14(木) 午前 10:52 hir*fu2** 返信する

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