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うそなのか本当なのか、多くの高齢者の口から「もう長生きなんかしたくない。」という言葉がよく聞かれる。だからといって早死にしたいというわけではないらしい。自分の将来に対する漠然とした不安感や希望のなさをほのめかす言葉だ。
一方で、90歳になろうかとするのに、毎日を輝きながら生活している女性がいる。
常に笑顔で人懐こく、大きな笑い声を絶やさない。会う人は皆、とても90歳とは思えない彼女のパワーに圧倒される。
10台の少女のようにきらきら輝いているのだ。
毎日特別なことをするわけではない。テレビで見たからためしに作ってみたの。といいながらハンバーグの作り方を研究してみたり、季節の花をベランダで眺めたりすることに喜びを見出しているのだ。
こういう人だから人との接点は大きい。もちろん新しく知りあう人は少ないらしいが、同じマンションに住む人からも慕われている。そういう接点がまた彼女を活き活きとさせる。
そんな彼女にも、大変なときがあった。
長年の夫の介護、その後すぐに自分自身大病し、しばらく入院しなければならなかったのだ。
しばらくして私の外来に来た彼女は、また私、ばかやっちゃったのよと、病気のこともまったく屈託がない。
「毎日毎日が楽しくて仕方がないの。」
そういい残して彼女は診察室を出て、町へ飛び出していった。
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