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現状、毎日のライヴ放送予定をチェック出来ないため、当面はネット音源のご紹介にフォーカスします。

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マーラーの4番のシンフォニーは、『最もマーラーらしくない』ものと私は長い間勝手に思い込んでいて、昔は苦手な曲の一つでした。何だか妙に優しくてメルヘンチックかと思えば、悪魔的なスケルツォが出てきたり。そうですね、もっと正直に言うと、1番、2番、3番、5番、7番に代表されるような、圧倒的な勝利の凱歌こそがマーラーの真骨頂であると、誤解していた時期があって、それらの曲ばかり聞いていました。イコール、4番だけでなく、6番、9番、大地の歌は正直苦手な部類でした(8番は別物)。この4番は特に全ての楽章が速いと言えるような音楽ではなく、緩急の変化が乏しくて退屈だ、と当時は感じていたのでしょう。若気の至りです(苦笑)マーラーの全交響曲が分かるように、いや、自分なりに聞けるようになりましたのは、本当に30代に入ってからようやく、という感じですね(苦笑)

今ではお蔭様で、実は1番よりも4番の方が好きだったりします(笑)特に何かきっかけがあったわけではありませんけど、やはり年齢的に変化する好みが、私も変わってきたんじゃないかな、と思っていますが。皆さんの中にもマーラーが苦手な方もいらっしゃるかも知れませんが、大丈夫です。一生無縁であることはまず有り得ませんから(笑)いつか突然分かるようになりますよ。

前置きが長くなりましたが、このガッティの4番も当初は買ってはみたものの、殆ど手をつけずに1〜2回聞いて蔵に入れてしまっていたものなんですが、今はその『悪行』を実に後悔しています(苦笑)これは4番の中でも美しさとおどろおどろしさとが絶妙なバランス感覚で共存し、かつ、ロマンティックな部分がこれでもかと表面に押し出された、極めて優れた名演であると言わなければならないでしょう。今回改めて聞き直してみて、飽くまでも『私の中で』ですが、バーンスタインやテンシュテットにも比肩する名盤であると評価します。ラトル&VPO、ティルソン・トーマス&SFSO盤と並び、こと4番に関しては頻繁に取り出して聞くことが多いアイテムですね。ベルティーニやシャイーの全集は未聴のため、これらを聞いたら逆転を許す可能性はありますが…

ダニエレ・ガッティについては以前ご紹介した通りですが、バルトークの『管弦楽のための協奏曲』や、レスピーギの『ローマ三部作』で颯爽と楽壇に登場した俊英も、既に50歳を目の前に控えた非常に脂の乗った年代に差し掛かりましたね。これも以前ご紹介した通りですが、フランス国立管のシェフとしての活動を開始しているはずです。今まではロイヤル・フィルの音楽監督としてコンサートに、そして各地のオペラハウスで活躍すると聞き及んでいるガッティですが、ディスクには全く恵まれていない。所属していたBMG傘下のコニファーが倒産、再デビューを果たしたハルモニア・ムンディからのリリースも、チャイコフスキーの4〜6番の交響曲で停滞するという有様。映像は少しずつリリースされていますが…メジャーレーベルに移籍すれば、真っ先に飛びついて買うんですけどねぇ(苦笑)このマーラーの4番は5番に続いてBMG時代にリリースされたもので、ラストとなった貴重な若き日の録音です。

先に名演であると申し上げましたが、速いテンポの楽章が存在しないこの表面的には退屈にも思える4番から、非常に多彩な魅力を引き出しています。ガッティは以前から『爆演系の指揮者』と見られることが少なくありませんでしたが、私は非常に繊細なロマンティストであると、彼を睨んでいます。このマーラーの4番がその最たる例であり、テンポを微妙に動かして普段聞こえてこないような旋律にもスポットを当て、我々の耳に刺激を与えることは必至。バーンスタインやテンシュテットとは異なり、作品そのものの心理的な部分に深く踏み込むことはせずに、とにかく聴覚的な部分で興味深い表現を引き出す。ガッティという指揮者の稀有な天才性が如実に伺える格好のソースです。

第一楽章。この4番という交響曲の性格を決定づける、冒頭の鈴の音とそれをバックに奏されるフルートのパッセージ。ガッティは意外にも特に小細工を仕掛けることなく、正攻法でこの部分を提示します。2小節目のアウフタクトから入ってくるヴァイオリンによる第一主題は、このアウフタクトの部分を嫌味ない程度にリタルダンドさせ、清潔感と気品を適度に保って提示されます。このヴァイオリンを主体として、ロイヤル・フィルの弦楽器が驚くほどに素晴らしい!この主題が繰り返し提示される部分のリタルダンドも美しく、私はこの冒頭の部分で早くもこの演奏の魅力に取り付かれてしまいました。トゥッティで盛り上がった小休止を経て(直前のクラリネットのサインが表情、音色ともに絶妙!)、低弦によって抑制されながらもたっぷり歌われる第二主題の美しさ(1分52秒)。オーボエの音色にもウットリとしてしまいます。本当にロイヤル・フィルって評価低いんでしょうかね?少なくとも、私が良く聞くディスクはロイヤル・フィルであることが多いのですが…3分12秒から同じくオーボエとファゴットのデュエットに現れる第三主題と呼んでも良いチャーミングなメロディも、少しテンポを落として艶やかな音色で奏でられます。その後のクラリネット、ファゴット、ホルン、イングリッシュホルン等の室内アンサンブル的な静かな掛け合いを経て、4分2秒からまた再び冒頭の鈴の動機から第一主題が回帰しますが、この部分の聞き所は徐々にテンポを落とし、室内楽的な響きに持っていくガッティの解釈でしょうね。5分55秒からはまた鈴の音が戻り、今度は短調でソロヴァイオリンが奏する、あたかもスケルツォのような音型が現れますが、非常に軽やかな音色で好感触。この部分からは管楽器と弦楽器双方の掛け合いに大変多くの聞き所があり、不気味な雰囲気の中、息をつく隙もなく過ぎていきますが、6分50秒から現れる第四主題とも呼ぶべきフルートのアンサンブルによるテーマ。これがかなり決然とした、1拍目に強めのアクセントを置き、力強い音色で奏されるのもガッティの面目躍如たるものでしょう。また、その後のコントラバスや弱音器をつけたトランペットの響きが、実に不気味な味を良く出してくれています。あと、8分20秒前後、鉄琴とフルートをバックに吹かれるホルンのメロディ、そして弦楽器のコルレーニョ。この曲って、こんなに不気味でしたかね?(汗)徐々に楽器が増えてきてクレシェンドし、9分43秒くらいに至ってトゥッティで第一主題の変形が奏される部分は、打って変わってとてもシンフォニック。直後、10分13秒からのトランペットによる、5番のシンフォニーの葬送のテーマは非常に粒立ちの良い音色で素晴らしいのですが、更に感心したのはバックの鈴の音色のアクセントと、テューバの不気味な伴奏音型。10分45秒からは何事もなかったかのようにスッと第一主題が回帰しますが、冒頭とは違ってややテンポを落としているのが印象的。11分23秒からのトゥッティでは、ボコボコ叩かれるティンパニに驚きますが、第二主題が回帰する直前のティンパニの強打には更に驚き!これは『驚愕シンフォニー』か?(笑)15分半辺りからの、ヴァイオリンのフラジョレットの美しさ。そしてコーダ直前のホルンソロの見せ場も充分に、『驚きの』コーダに突入します。私はこんなにネットリ、ネチネチと導入され、アッチェレランドで一気に畳み掛けるエンディングをあまり聞いたことがない(笑)素晴らしい。

第一楽章でこれだけ好き放題やられてしまうと、後がもたなくなりそうですが心配ご無用。第二楽章はゆったりとしたテンポのスケルツォですが、ここでは死神を模したとされるヴァイオリンソロと、管楽器、特にクラリネットとホルンの、汚いまでに強奏されるフォルテの音色に注目して頂きたいですね。ガッティは通常の演奏よりも更に遅めのテンポを設定し、首席奏者に自由に振る舞わせているのが分かります。全体はガッチリとコントロールしてますけど(笑)7分前後からのヴァイオリンとヴィオラのソロによる合奏が意外な聞き所。7分35秒からは一気にガラッと曲の雰囲気が変わりますが、この場面転換の素晴らしさはさすがにオペラに定評あるガッティならではでしょう。ヴァイオリンの艶やかなポルタメントが、嫌らしさの一歩手前で踏み止まって、実に素晴らしい!このときのロイヤル・フィルのコンマスって、誰なんですかね?

さて、この全体的に緩やかな速度に支配されている4番の交響曲において、一際ロマンティックな美しさを湛えている第三楽章。ガッティは前2楽章を更に凌駕する圧倒的な名演を成し遂げました。第5交響曲のアダージェット主題を思わせる冒頭のテーマから、音楽そのものがロマンティックの極みでありますが、ガッティの何と共感に満ちた歌であることか。大河のように根底に流れる純度の高い弦楽合奏。ガッティのゆったりとしたテンポ設定が最大限に活き、オペラティックかつドラマティックに、深い共感をもって歌い継がれていきます。4分26秒からのオーボエソロも弦楽器に負けていない。5分42から43秒にかけてのポルタメントは期待通りの感情移入であり、この楽章が5番のアダージェット、3番のフィナーレと並んでマーラー屈指のメロディアスな音楽であることが改めて実感されるでしょう。8分16秒からはチャーミングな曲想に変わりますが、フルートやオーボエ、ヴィブラートをたっぷりとかけた弦楽器が実に曲想にマッチした可愛らしさで再現されています。このような部分でもガッティの非凡な才能が窺われますね。10分58秒辺りから、一気に胸に迫るようなまさに5番の世界を思わせる、悲しいイメージの部分をより一層歌い込ませることによって、この部分にクライマックスを置くことに成功。また、終結近くのトゥッティによる一撃(15分30秒辺り)や、第3交響曲のフィナーレを思わせる高らかな凱歌の部分は圧倒的な迫力(18分7秒から)。ラストまで息の長いディミヌエンドを保ちつつ、この演奏最大の見せ場とも言える楽章の幕を静かに下ろします。ガッティ一世一代とも言える大変な名演ですね。

第三楽章の圧倒的な名演を耳にした後では、正直申し上げて『もうこれ以上の音楽は要らん』と思ったのが事実なんですが(苦笑)、この楽章はまたルート・ツィーザクの可憐でチャーミングな名唱が聞けます。私は彼女の熱狂的ファンではありませんが、今では引く手数多の彼女が、10年前に既にこれだけの名演を成し遂げていたとは…ガッティも、第一楽章冒頭の鈴が不気味に回帰する部分等、目まぐるしく変化する曲の特徴を見事なまでに捉えており素晴らしい棒です。ツィーザクに話を戻すと、今回改めて聞き直して感じたんですが、6分35秒からのまさしくこの世のものとは思えぬ天国を再現した部分を聞いてみて下さい。彼女の歌声がこんなにもマーラーの4番にマッチしていたとは。レベルの低い例えで恐縮ですが、私はこの部分の彼女の歌声を聞いてサラ・ブライトマンの透明な歌声を思い出しました。

これほどの名演奏を、10年前のガッティとツィーザクが成し遂げていたということに驚き、そしてロイヤル・フィルについての世評がいかにいい加減なものであるのかが分かるという、大変な名盤です。そう、ロイヤル・フィルの技量、アンサンブルの素晴らしさなくして、この名演は有り得ません。誰だ?ロイヤル・フィルを酷評してる輩は(苦笑)これを聞いてからにして欲しいですね。

【詳細タイミング】
マーラー:交響曲第4番ト長調
第一楽章:17分28秒
第二楽章:11分4秒
第三楽章:21分23秒
第四楽章:9分47秒
合計:約60分
【オススメ度】
解釈:★★★★★
オーケストラの技量:★★★★★
アンサンブル:★★★★☆
ライヴ度:★★★☆☆
総合:★★★★★

ルート・ツィーザク(ソプラノ)
ダニエレ・ガッティ指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
1999年1月20〜21日、31日、3月31日ロンドン、ヘンリーウッドホール

「殿堂入りの名盤(マーラー)」書庫の記事一覧

  • 私はサヴァリッシュさんと逆で、この4番は大人になってから苦手になりました(汗)
    鈴の音シャンシャンが始まるとダメです。若い頃は好きでよく聴いていたのに(因みにアバド/ウィーンフィルです)不思議なものです。

    ガッティはマーラーの5番は持ってますが4番はないです。ロイヤルフィルとのプロコのロミジュリ(抜粋盤)がお気に入りです♪

    Hiroko♯

    2009/6/4(木) 午後 8:51

  • Hirokoさん>
    あらまぁ、残念でしたねf^_^;
    アバド&ウィーン・フィルの演奏も素晴らしい名演ですのに。もし宜しければ、ガッティのものをお聞きになられてみてはどうでしょうか?(笑)
    あ、冒頭の鈴の音がダメなんでしたねf^_^;
    マーラー5番、ロメオとジュリエットも大変良い演奏ですね。もちろん持ってますぜ(笑)また記事にしますよ(苦笑)

    それにしても、マーラー4番、ガッティのネタだと『お客さん』が集まりませんね(笑)

    [ サヴァリッシュ ]

    2009/6/4(木) 午後 10:03

  • 顔アイコン

    こんにちは。最近、9番や大地の歌は、やっと聴くようになりましたが、4番は何枚か購入しているものの、いつも第1楽章くらいで終っていました。今回レビューを拝見しながら最初から最後までをじっくり聴いたのは多分初めてですが、こんなに素晴らしい曲だったのかと、今まで避けてきた自分が恥ずかしく感じました。第3、第4楽章も非常に気に入りました。今回は、最近購入していたフォンク&セントルイス響で聴きましたが、確か5番は持っているガッティの演奏を是非聴いてみたいと思います。ありがとうございました。

    [ HIDE ]

    2009/6/6(土) 午後 3:18

  • HIDEさん>
    やはり4番はお嫌いでしたかf^_^;実はマーラー好きでも4番が苦手だっていう人、結構いると思うんですよね(苦笑)
    私なんかの拙文で申し訳ありませんでしたが、4番の良さにお気づきになられたとのことで、少しでもお手伝いが出来て、非常に良かったですf^_^;
    ガッティの5番も素晴らしい演奏ですね。4番ももしどこかでお見かけになられたら是非f^_^;

    [ サヴァリッシュ ]

    2009/6/6(土) 午後 6:29

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