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現状、毎日のライヴ放送予定をチェック出来ないため、当面はネット音源のご紹介にフォーカスします。

書庫殿堂入りの名盤(ブラームス)

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今回はチェコ往年の名匠、カレル・アンチェル指揮するチェコ・フィルハーモニー管弦楽団による名演をご紹介させて頂きます。曲目はブラームスの交響曲第1番。スプラフォンレーベルより『アンチェル・ゴールド・エディション』として再発売されたものですので、元々のオリジナルカップリングは異なるかも知れませんが、私が所有するこのアルバムでは後半にベートーヴェンの同じく第1番のシンフォニーが収録されています。恐らく何度も再発売を繰り返している名盤であり、アンチェルという世紀の巨匠の芸術を知るのに相応しいディスクと申せましょう。ただし、先ほど調べました感じでは、このディスクも明確に廃盤にはなっていないものの、かなり入手は難しいことはお断りしておかねばなりません。これほどの名盤が入手困難とは、クラシック音楽界の見識を疑いますね(苦笑)
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私はアンチェルについてあまり多くの録音を聞いた経験がなく、正当な評価を下すにはあまりにも材料が少ないのですが、私の数少ない彼の所有アイテムを聞く限りはいずれも大変な名演ばかりでハズレが全くなく、近年再評価しなければならない指揮者の一人であると、認識を新たにしているところです。また廃盤になってしまう前に、是非とも色々と集めたいところですが…入手困難という情報をお伝えしたついでに、もう一つお伝えしたい情報があります。このアンチェルのブラームス、60年代、アナログ時代の大変素晴らしい録音です。分離感はそれほどでもありませんが、トゥッティにおける強打強奏の生々しいこと!この大変に優秀なブラームスの録音に対して併録のベートーヴェンはモノラルなんですが、チャネルの位置がどうも左寄りです。私のディスク個体の問題なのか、ゴールド・エディションのリマスターの問題なのか、はたまたオリジナルのマスターテープに起因するのか。いずれにしても、その点はご了承下さい。

さて、ここでカレル・アンチェルの簡単なプロフィールをご紹介しておきましょう。今初めて知ったのですが、アンチェルと私は誕生日が同じなんですね!(驚)1908年、南ボヘミアの生まれとあります。73年に没しており、実はこの没年は私の生年でもあり、この時点で私はアンチェルとの大いなる縁を感じますね(皆さんには関係ありませんが…)。カラヤンと同い年ということですから、もう少し長生きしていれば我々も実演に接する機会があったかも知れませんが。プラハ音楽院で作曲と指揮を学び、特に指揮は名匠ヴァーツラフ・ターリヒに師事したそうです。30年、作曲の師であるアロイス・ハーバのオペラ初演をヘルマン・シェルヘンが担当し、アンチェルはシェルヘンのアシスタントを務めていたことから、シェルヘンの指導も受けることになったそうです。33年にはプラハ交響楽団の音楽監督に就任(25歳の年!)。39年、チェコがナチスの支配下に入るとアンチェルはユダヤ系であったためにプラハ響を追われ、42年には家族全員が強制収容所送還となってしまいます。44年にはアウシュヴィッツにて家族が虐殺されてしまい、アンチェルただ一人が生還するという凄絶な前半生を送ります。戦後、楽壇への復帰を果たした彼はプラハ歌劇場(45〜48年)、チェコ放送響(47〜50年)の指揮者を経て、50年にはクーベリックの後任としてチェコ・フィルの首席指揮者に就任。同オーケストラの再建に多大なる功績を残しました。59年にはこのコンビで来日公演を行いましたが、その類い稀なる名演により音楽ファンを魅了。しかし、アメリカへのツアー中の68年に『プラハの春』事件が起こって彼は帰国を断念、チェコ・フィルを手放して亡命の道を選び、69年にはトロント響の首席指揮者に就任しますが、4年後には波乱に満ちた生涯の幕を閉じます…

というような経緯もあってか、アンチェルが作る音楽には一種の悲壮感のようなものを感じさせる瞬間が無きにしもあらずですが、基本的には非常に洗練されスッキリした音楽を作る指揮者であると、私は理解しています。そのような中でも細部の響かせ方等には大変丁寧な姿勢が見られ、ハーモニーにも細大の注意が払われていたことが窺えます。どこかで『ヴァン・ベイヌムを彷彿とさせる』と書いてあるのを見かけたことがありますが、実に言い得て妙!なるほど、確かに似ている部分があるなと思いました。


第1楽章

それでは、細部を見てみることにしましょう。第1楽章は『ウン・ポコ・ソステヌート』の序奏と『アレグロ』の主部を持つ雄渾な音楽。その剛毅で雄渾な面を引き出し、アンチェルは現代にも通じる大変引き締まった、洗練された響きを序奏から聞かせてくれます。正に中庸と言えるテンポでティンパニが打ち込まれていきますが、決して突出することなく全体に程よく溶け込んでいるのが印象的です。弦楽器等は室内オーケストラを聞いているかのように、余計なものが削ぎ落とされた印象を与えます。恐らく相当なトレーニングの賜物でしょう。しかし、1分47秒から2分5秒にかけての強奏部での生々しい迫力は格別で、内面からの音楽が滲み出る様が素晴らしい。ロマンティズムは少し後退していますが、2分7秒からのオーボエソロが独特の鄙びた雰囲気と呼吸感で聞かせますね。2分47秒からの主部、冒頭の和音こそやや控えめな印象を与えますが、各パートは良く鳴っており、ジワジワと湧き出る情熱が見事!ジックリと腰を据えてゆったりしたテンポにも関わらず充分な推進力を感じさせるのは、キリッと引き締まったリズムの扱いとインテンポによるものと考えられます。表面的にはスコアそのものに語らせる音楽と言えるので、特別な仕掛けがあるわけではありませんが、知らぬ間に引き付けられ不思議と耳が釘付けなる演奏と言えましょう。5分26秒の金管のサインは独特な鋭さを持ち、その後のヴィオラとヴァイオリンの掛け合いからトゥッティへと高揚していく部分、かなり武骨な表情を感じさせるアンチェルの一面と言えましょう。(提示部の反復なしのため)6分8秒からの展開部では、7分28秒辺りからの木管楽器とヴァイオリンの掛け合いにおいては、さほど大きな強弱の変化がついていないので、ここはアンチェルのクライマックスではなさそう。8分20秒辺りからコントラバスのフレーズをサインに、長いクレッシェンドとともにトゥッティの爆発部分に雪崩れ込みますが(8分52秒)、この雪崩れ込む直前の金管の強奏はかなり凄絶です。11分17秒からのヴィオラをサインに終盤に突入しますが、やはりトゥッティの部分がクライマックスと言えましょう。凄絶な金管の咆哮とティンパニの強打が炸裂します。

第2楽章

第2楽章『アンダンテ・ソステヌート』が、もしかしたらこの演奏最大の聞き所と言えるかも知れません。アンチェルの設定したテンポは中庸よりやや遅め、ジックリと腰を落として旋律が朗々と歌い紡がれていきます。『男の哀愁』を『背中で語る』典型的な演奏と言えるかも知れません。最大の特徴は、やはりチェコ・フィルの弦楽セクションの素晴らしさでしょう。最初のテーマは非常に渋い印象を与えると同時に、オレンジ色の落日のような美音が丁寧に紡がれてジワーッと染み渡っていくような趣で、とても感動的な音楽が作り出されています。ヴィヴラートがたっぷりとかけられ、強弱の振幅も大きく、アンチェルのイメージからすると意外なほどにロマンティックな演奏に驚かされます。1分15秒からのオーボエソロによる美しいメロディもそのような色調に相応しく、どことなく漂う哀愁が印象的。2分40秒からの中間部では、特にクラリネットの音色に注目したいですね。中間部後半におけるロマンティックなヴァイオリンも、相変わらず溜息が出るような甘い美しさで聞かせます。5分9秒辺りからは再び前半部分が戻ってきて今度はヴァイオリンソロが活躍しますが、割と明るめの音色が印象的。6分22秒辺りでヴァイオリンソロに絡むホルンのふくよかな美しさ!

第3楽章

第3楽章は『ウン・ポーコ・アレグレット・エ・グラツィオーソ』。冒頭のクラリネットがふくよかで、またどことなく『チンドン屋』のようにおどけた雰囲気を漂わせていて、いきなり聞かせてくれます。この楽章でも全般に弦楽器群のシットリした魅力が全開で、比較的速めのテンポでサラッと演奏されているように見えて、不思議な感動を残す名演と言えるでしょう。1分35秒からの中間部においては金管楽器の音色も柔らかく、決して重たくならずに前に進んでいく推進力が素晴らしい。3分52秒からはコーダになりますが、その直前のクラリネットの何とも独特な魅力溢れる響き、コーダではグッとテンポを落として歌い込み、ラストで奏でられる2つのピッツィカートはハープのような印象を与える独特の弾かせ方で、まるで野辺に咲く一輪の花のようにチャーミングでありました。

第4楽章

さて、第4楽章の『アダージョ〜ピウ・アンダンテ〜アレグロ・ノン・トロッポ、マ・コン・ブリオ』では、第1楽章と並んでアンチェルの最も彼らしい一面が如実に表れた名演が展開されていきます。そして、改めてこうして聞いてみると、不思議なことにこの楽章のベートーヴェンの第九のフィナーレとの類似性を改めて意識させられた次第です。すなわち、序奏の『アダージョ』の部分において第1楽章の序奏部分が回想され、徐々に主部に向かって霧が晴れていくような展開という点においてです。まず、『アダージョ』の部分ではティンパニ等が突出することなく弦楽器主導で全体が程よく溶け合い、通常はピッツィカートの部分でも緊迫感を強調した演奏が多い中、アンチェルはよりバランス重視の響きを志向していることが窺われます。そして、単にマイルドなだけではなく、一転してその後の弦楽器のうねりから1分59秒のトゥッティに至る辺りの動きや、序奏部分のクライマックスとも言える2分18秒の頂点の和音の迫力等も実に見事なもの。直後の『ピウ・アンダンテ』に入り、ホルンによる例の有名な朗々たるフレーズは、正しくチェコ・フィルの魅力全開で、続くフルートともに大変柔らかく暖かい音色で全体を大きく包み込んでいきます。ここは最大の聞き所と言えるでしょう。4分43秒からはいよいよ主部に入りますが、その直前のパウゼが大きく取られていて、有名な主題を導くヴァイオリンの感動を最大限に引き出していますね。木管に引き継がれた後の弦楽器のピッツィカートが、また弾けるような瑞々しさを湛えているのも印象的。その後もラストに至るまで見事な推進力で一気に聞かせてくれますが、例えばオーボエとフルート、弦楽器が掛け合って急に静まり、7分56秒から徐々にクレシェンドしてトゥッティにより喜びが爆発する部分は、珍しくティンパニと金管を思い切り弾かせてただならぬ迫力が漂います。あるいは、8分37秒に主部冒頭が回帰する部分では直前のアウフタクトを少し大袈裟に取り、最初よりもテーマを強めに弾かせることでより感興を高めていて感動を誘います。その後も尋常ではない迫力でオーケストラを鳴らし切り、大きなアッチェレランドとクレシェンドをかけて壮麗極まりないコーダ(15分18秒から)に持っていく手腕は見事の一語。素晴らしい名演ですね。


総括

やはり、一般的な世評通りにアンチェルという名匠は類い稀なるオーケストラ・ビルダーでありますけれども、かなり表現のパレットが多彩でロマンチストな一面も顔を覗かせており、フィナーレに見るような『熱い』一面もまた堪らない魅力の一つ。クーベリックやノイマン、ターリヒだけでなく、是非お聞き頂きたい素晴らしいチェコのマエストロです。
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年末に購入したディスクを今頃になって聞き出すとは不届き千万ですが(笑)、今回は朝比奈隆指揮東京都交響楽団の1996年ライヴ、ブラームスの交響曲第1番の演奏を聞いてみました。朝比奈さんのベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーの交響曲全集については、数限りないアイテムがリリースされていて、当然ながら私も全て聞いたわけではありません。ただし、その大半の演奏が破格の名演と呼べるものであり、私もそのうちのいくつかは曲のベスト盤と言っても良いくらいに愛聴しています。

今回リリースされた一枚は既にレコ芸の月評でも特選盤に推されており、その名演ぶりが評価されていますけれども(私が書くまでもないんですが)、結論から言いましょう。このような破格の超名演を聞かないなんて、一生後悔するでしょう!と。こんなのリリースするなんて、フォンテックも『反則』ですわ(笑)っていうか、もう少し年度の真ん中とかにリリースされていれば、リーダーズチョイスのベスト3に入ることは確実。私も、過去の巨匠達の歴史的な名盤と比べても、これほど『巨大な音の塊』を聞いたことがありません。『第四楽章後半に神が降臨した』という表現で絶賛されていた方がいましたけど、私もそのご意見には全面的に賛同致します。都響のまた素晴らしいこと!弦楽器は千変万化、木管は朝比奈さんの無骨さを絵に描いたかのように振る舞い、金管とティンパニは荒々しく咆哮する。また、ライヴならではの聴衆と会場、音楽が三位一体となり高次元で化学反応を起こし、まさに大・大・大熱演が展開されているのです。音楽の巨大さはフルヴェンやクナ、チェリにも迫り、音楽に対する真摯な姿勢と奉仕の精神は、他に類を見ない高みに到達していると言えましょう。そういう意味で言うなら、これはもはや『第十交響曲』と呼ばれるような、ベートーヴェンの延長としてのブラームスの音楽の範疇を越えており、後期ブルックナー作品群を思わせる音楽と言っても良いかも知れません。

第一楽章冒頭の序奏から、まさに巨人の歩みを見せ、ヴァイオリンは大きな波のようにうねり、それを支えるティンパニの打撃が確かなリズムを刻む。今、こんな音が出せる指揮者がこの世にいるでしょうか?1分53秒から、いったんピアニッシモに弱まって徐々にクレッシェンドしてフォルティッシモに到達する部分(2分14秒)にかけての極めて充実した響きも、これ以上のものはなしえないと思わせるに充分なもの。一転して2分38秒からのオーボエソロ→フルート→低弦と受け渡される経過句がロマンティックの極み。そこから『来るぞ』と思わせて、3分26秒のティンパニの一撃→第一主題が、重々しい重量級のリズムとともに期待以上の迫力。そこからはかなり遅いテンポで確実に歩を進めていきます。5分37秒のヴァイオリンのロマンティックな旋律も実に良く歌うこと!6分43秒からの金管をサインに、ヴィオラとヴァイオリンの掛け合いからトゥッティで高揚する部分のズシーンと来る手応え等、まさに『これぞ朝比奈のブラームス』と言えるでしょう。提示部を反復しているのでリピートの部分は割愛し展開部に行きますと(11分28秒から)、以前ヤノフスキ盤で取り上げた『Vnと管楽器が掛け合って階段を上るような部分』は、この演奏では12分40秒辺りですが、これは金管の音量に強弱をつけるどころか、オーケストラ全体が強弱しているので非常に迫力があります。『階段を上るような』という感じではないですね。ヤノフスキよりもこちらの表現を好まれる方も多いでしょう。そして、13分59秒からのコントラバスから出てくる、地の底から湧き上がってくるようなフレーズ、長いクレッシェンドを伴って、ここはまさに火山が噴火する(14分45秒)直前のエネルギーの蓄積を思わせるもの。絶叫するVnと咆哮する金管が凄絶です。17分49秒からのVaをサインとしてクレッシェンドする部分はやはりこの楽章のクライマックスでしょうね。ラストは木管の優しい響きとVnの柔らかい音色、それを支える力強いティンパニが出色。
続いて第二楽章。ここはアンダンテという速度よりも、予想通りやや遅め。朝比奈さんがここまでロマンティックだったかと、思わず目を見張る表現が続きます。冒頭の弦楽合奏が非常に分厚く重厚な響きで、終始良く歌います。ただし、オーボエソロ(1分20秒)はヤノフスキ盤の方が上でしょうね、さすがはピッツバーグ響。ただし、ヤノフスキ盤で『淡泊過ぎる』と感じた箇所、すなわちこの演奏では2分46秒から5分くらいにかけてですが、武骨な表情ではありますけど、強弱の幅が広くボリュームが厚いため、とても充実した響きが聞けて大満足。このときのコンマスは矢部さんかどうか私は分からないんですが、このソロは幾分ヴィヴラートが荒いような感じでここはヤノフスキ盤に軍配を挙げたいですが、この楽章ではたっぷりしたテンポで豊かに歌い、充実した響きを聞かせるのはさすがですね。
第三楽章の冒頭、クラリネットや木管のアンサンブルはやはりピッツバーグ響に比べると少し弱いような気がしますけど、第二楽章同様充実した響きはやはり朝比奈さんならでは。同じ遅めのテンポであってもカラヤンやチェリとは全く違います。強弱にはあまり細かくこだわらず、各パートを目一杯鳴らしてそれを積み重ねることによって得られる『音の塊』の迫力に圧倒されるでしょう。この演奏を聞くと、ブラ1の第三楽章は決して間奏曲のような扱いで片付けてはいけないですね。
そして、この演奏を締め括るに相応しい、圧倒的な輝かしさと重厚な迫力、熱気と朝比奈さんという一人の生き様、そして音楽に誠実に取り組むことによって得られる『本物の音楽』、その全てがこの第四楽章に凝縮されています。これは本当に素晴らしい、圧倒的な名演ですね。些細な技術上の問題等全く関係ない、それどころか、その決して完璧ではない疵がかえってこの演奏に『一期一会』の異様な熱気を生み出し、我々を遥か彼方の世界へと誘うのでしょう。私は不覚にもこの楽章で涙を流してしまいそうになりました。大阪フィルとの最後の第九でも同じ感情を抱きましたが…冒頭序奏のティンパニの強打、弦楽器が生み出す全体の響き、柔らかいというよりもかなり鋭さを感じさせるピッツィカート、ここで朝比奈さんには『鬼神』が乗り移ったかのような迫力。深々と厳かに、しかし幾分の荒々しさをもって語りかけるアルペンホルン、その直前のティンパニの轟音…4分58秒からの第一主題はまさに『歓喜を歌い上げる』と呼ぶに相応しい、感動的な部分です。6分2秒からのトゥッティの迫力も素晴らしい。8分55秒からの第一主題の繰り返しは更に一層の高揚感を煽られるでしょう。あと、コーダまでの間で取り上げておきたいのは、10分30秒前後からと11分14秒からの荒々しいフーガの部分。12分12秒からのギアチェンジの部分(ティンパニの凄まじい轟音と、ヴァイオリンの優雅さの対比)。そして、言葉では言い尽くせない偉大なるコーダ。会場が轟音に包まれまるでブルックナーの8番の終結部のような圧倒的な高揚感。朝比奈隆という芸術家、というよりも、日本に西洋音楽の神髄を伝えることに自らの心血を注ぎ続けた歴史に残るマエストロの、確かな足跡がここに印されています。この場に居合わせた人達に対する嫉妬で一杯です(苦笑)

この奇跡の名演は、朝比奈さんの『弦楽器をベースにした分厚い響き』によって獲得されました。その芸術が一朝一夕に成し遂げられたのではないのと同様、一つ一つ丁寧に、しかしながら、確実に積み上げられた結果。私は朝比奈さんの芸風は『パイをいかに幾重もの層に積み重ね、それぞれが極上のハーモニーを醸すかを四六時中考え続けた職人』のような人物と考えますが、このブラ1はまさにそのアプローチによる世界最高の名演。現在、私が知る限り、こう聞かせられる指揮者はいません。このような音楽が二度と聞けなくなってしまわないことを切に願います。誰か出てきてくれ…

【詳細タイミング】
ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68
第一楽章:20分20秒
第二楽章:9分26秒
第三楽章:5分22秒
第四楽章:17分51秒
合計:約53分
【オススメ度】
解釈:★★★★★
オーケストラの技量:★★★☆☆
アンサンブル:★★★☆☆
ライヴ度:★★★★★
総合:★★★★★

朝比奈隆指揮東京都交響楽団
1996年4月6日東京、サントリーホール(ライヴ)

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※なかなか記事が更新出来ず、申し訳ありません。一つの演奏を細部まで聞き込もうとするとどうしても2〜3日かかってしまうんですよね。おまけに、私の『音楽の時間』は通勤の間なので(苦笑)

さて、今回は唐突で申し訳ありませんが、最近リリースされた最新盤についてレビューを試みたいと思います。対象は、ワディム・レーピンのVn、リッカルド・シャイー指揮LGOのブラームスVコンです。え?私がメジャーのディスクを取り上げると思ってませんでしたか?確かにアンチメジャーなところはありますが、いいものはいい。素直に良いと言いますよ(笑)

レーピンと言えば、名教師ザハール・ブロン門下で、17歳のときにエリーザベト王妃国際コンクールで優勝して一躍脚光を浴びることになりましたが、1971年生まれということですから、私の二つ上で今年38歳。既に大ベテランの域に差し掛かってますね。演奏家としては最高の時期にいると思います。同世代にはギル・シャハム(1971年生まれ)、マキシム・ヴェンゲーロフ(1974年生まれ)、少し上の世代にはフランク・ペーター・ツィンマーマン(1965年生まれ)、クリスティアン・テツラフ(1966年生まれ)がいます。こうやって見ると、この辺りの世代は驚異的な大豊作の世代ですね。いずれも大好きなVn奏者です。確か2007年だったと記憶してますけど、レーピンはムーティ&VPOをバックにベトコンを録音して話題になりました。私もあの演奏は、近年の録音では他に類を見ないほどに、とても高く評価しています。

その演奏家としての頂点に差し掛かったレーピンのブラームス、機が熟したとの判断で満を持してのリリースですが、ここではシャイーのサポートを得てベートーヴェン同様、極めて魅力的な音楽を作り上げました。カップリングの二重協奏曲を含めて予想通りというか、期待を遥かに上回る名演が繰り広げられています(レコード芸術では『準特選』に甘んじましたが、あれは『へぇ〜、そうなんだ』程度に留めておいて下さい。この録音を推薦にしないなんて、ホントにどうかしてる!というか、あの文面から『準推薦』になる意味が分からない…)。過去の歴史的な録音を凌駕してしまった、と評価される方もいらっしゃるでしょう(ヌヴー&イッセルシュテット盤は別格としても…)。前々から評価の高かった美音はそのままに、表現の引き出しが極めて多彩になり、テクニックはほぼ完璧。退屈な、無意味な部分は皆無で一気に聞かせます。また、バックのシャイーとLGOが素晴らしい伴奏。『Vn交響曲』と呼んでも過言ではないくらい、充実したシンフォニックな響きを引き出しており、LGOも能力の全てを出し切っています。正直申し上げますと、当初、シャイーがLGOのシェフに就任すると聞いたとき不安を感じました。コンヴィチュニー→ノイマン→マズア→ブロムシュテットと野武士的な指揮者陣によって受け継がれてきた質実剛健さが、シャイーのあのオペラティックなカンタービレによって薄められてしまうのではないか?ついにLGOまでがインターナショナルな波に飲み込まれてしまうのか?と。その懸念は、シャイーのLGO音楽監督就任記念コンサートの模様を収録した、メンデルスゾーンの『讃歌』のディスクによって払拭されましたが、その両者の特質が、というかシャイーがLGOの特徴と伝統を理解して活かしているのだと分かります。加えて、ドイツ・グラモフォンにしては非常に優秀な録音。豊かな残響と左右の拡がり、各パートの分離の明快なことこの上なし(国内盤未聴。輸入盤のみの感想)。ただ一つだけ、SACDだったらと悔やまれる点だけですね、不満らしい不満は。

早速ですがそのブラームスのVコンについて、細部を見ていきましょう。第一楽章は弦楽器による静謐なテーマの提示から始まりますが、シャイーのテンポは速過ぎず遅過ぎず、中庸を得た適切なテンポ、かつ弱過ぎない適度な音量による自然な導入だと思いますね。我々の耳にスッと入ってくる感じ。20秒からのVnの伴奏に乗ったオーボエのソロも美しい。良く歌っています。そして、34秒からのフォルティッシモによる総奏も、恰幅の良い堂々たるスケールの大きさ。私は常々、LGOの魅力は弦楽器の艶やかな音色と管楽器のふくよかな音色にあると思ってまして、シュターツカペレ・ドレスデンに極めて近い音色、その魅力が最大限に引き出されていると思います。1分14秒からのゆったりしたフレーズの辺りからグッとテンポを緩め、充分に歌い込まれます。再びトゥッティで奏される部分(2分24秒から)は少しテンポを速め、キリッと引き締まったフォルムが印象的。さて、レーピンはというと第一テーマを導入するところ(2分46秒)でようやく登場してきますが、非常に骨太の男性的なアプローチによる音色で、もしかしたらレーピンの芸風として驚かれる方もいらっしゃるかも知れませんが、しかしながら『黙して語らない』男性の優しさのようなものが感じられ、これが実に曲想に合っていてとってもいいんですよね。細かい上昇音型はとても熱を帯びて高揚するところなど、今の彼だからこそ吹き込み得た息吹が感じられるのも、嬉しい限りです。3分40秒からのオーケストラによる冒頭主題が何とも言えずとても美しいんですが、それに乗って奏でられるレーピンのアルペッジョ、また、逆に4分24秒からのオーケストラのアルペッジョに乗ったレーピンによる冒頭テーマの、何と美しいことでしょう。そして、5分28秒からの重音の余裕ある響き。ここだけではなくて、このブラームスのコンチェルトにおいてはVnソロによる重音が全編に渡って散りばめられていますが。そのいずれもが美しいです…6分45秒からは、低弦のピッツィカートに乗って、あの魅惑的な揺れるような第二テーマが心を込めてロマンティックに歌われます。この部分は第一楽章におけるハイライトと言えましょう(14分38秒に転調して戻ってくる部分も同様)。カデンツァが現れる17分29秒までは、オーケストラによるシンフォニックな部分や、レーピンの技巧等聞き所が満載で一瞬たりとも気が抜けません。また、この演奏の一つの目玉として、カデンツァについて触れておかなければならないのですが、レーピンは珍しいハイフェッツ作のカデンツァを使用しており、もしこの曲に少し聞き慣れた方がいらっしゃったら、『おや?』と思われるかも知れませんね。もちろん、このカデンツァも素晴らしく魅力的で、レーピンの技巧を余すところなく伝えてくれるでしょう。特に回転の速い細かいトリルであったり、豊潤な粒の綺麗なピッツィカートであったり、繊細な弱音や厚みのある重音等、聞いて頂きたい箇所がいくつもあります。カデンツァが終わって、そこからコーダまでは今までの締め括り的な位置付けで、どちらかというとシャイーとLGOに主導権があるというか、レーピンがオーケストラの一部のように振る舞っているというか、非常に『座りの良い』集結を迎えます。
第二楽章は、皆さんも良くご存知の通り、冒頭の長いオーボエのソロが楽章の出来を左右する、『オーボエ協奏曲』とも言えるような特異な音楽。ブラームスが書いた音楽の中でも屈指のメロディーと言えますね。この演奏のオーボエ独奏は何と美しいことか!ボキャブラリーが少ないので賛辞を並べ立てることが出来ないのですが、LGOのこのオーボエの首席奏者は『濡れたような』という表現が適切かどうか分かりませんけど、非常にウェットな音色でロマンティックに楽器を歌わせており、涙が出るほどに綺麗です。当然ながら私はブラームスのVコンの全ての演奏を耳にしたことはありませんが、今までこれほどの名演があったかどうか?とにかく、この部分を聞くだけでもこの演奏の存在価値があります。もちろん、オーボエだけでなくバックで唱和するホルンやクラリネット等、極めて音楽的に表情豊かであると言えましょう。LGOがここまで歌を身につけたとするならば、間違いなく『鬼に金棒』です。ウィーンフィルと比べても全く遜色はありません。シャイー、恐るべし!2分19秒になってようやくレーピンが登場し、カンタービレを引き継いで歌い上げますが、あのオーボエの前には…申し訳ないけど、ここはオーボエ奏者に軍配を上げましょう(笑)蛇足ですが、私は今まで音楽の『美しさ』に涙した経験は一度だけ。デュトワ&N響のオルガンシンフォニーの第一部後半(横浜みなとみらいでの実演)においてのみです。
さて、この演奏も遂にフィナーレを迎えてしまいました。ベートーヴェン同様、いきなりVnのソロで始まりますけれども(ベートーヴェンは前楽章からのアタッカだが…)、この楽章でまず拍手を送りたいのがバックのシャイーとLGO。極めて雄弁に表情豊かに、かつシンフォニックに歌い上げており、また細かな部分での裏旋律の浮かび上がらせ方が絶妙!冒頭のレーピンのテーマを支える部分からそれは顕著に表れていますね。そして次に、最大級の賛辞を送りたいのがレーピンの技巧とパッションの高さ。私はこの楽章を聞いて思わずライヴ録音であると勘違いしてしまったくらい、とてもエキサイティングな演奏です。本当にアッという間に時間が過ぎ去ってしまいますね。一例を挙げるならば、3分27秒からの細かい音符をスラーで繋げて弾いたり、またその後の叩き付けるような荒々しい和音であったり。また、5分12秒から6分25秒にかけて、オーケストラをバックに引き連れてはいますが、カデンツァと言っても良いほどに難しいテクニックが要求される箇所。そして、その直後からのコーダ。この部分のレーピンの音に是非とも耳を傾けてみて下さい。きっと病み付きになりますよ。まぁ、実演で聞いていたら間違いなく、終演直後にスタンディング必至でしょう。

二重協奏曲については簡単に。レーピン、シャイー&LGOの魅力はそのままに、トルルス・モルクの渋い、しかし燻し銀のように確かな光を放つチェロが、この二重協奏曲における一つのスタンダードと言える名演を成し遂げています。この曲って意外と名演が少ないですが、私にとってはカピュソン兄弟&チョン・ミョンフン盤(VIRGIN)と並び、今後長らくの愛聴盤となりそうです。

レーピン、シャイー、モルク、LGOブラーヴォ!

【詳細タイミング】
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲二長調作品77
第一楽章:22分51秒
第二楽章:9分10秒
第三楽章:7分56秒
合計:約40分
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調作品102
第一楽章:16分43秒
第二楽章:7分40秒
第三楽章:8分29秒
合計:約33分
【オススメ度】
ヴァイオリン協奏曲
解釈:★★★★★
ソリストの技量:★★★★★
オーケストラの技量:★★★★★
アンサンブル:★★★★★
ライヴ度:★★★★★
総合:★★★★★
二重協奏曲
解釈:★★★★★
ソリストの技量:★★★★★
オーケストラの技量:★★★★★
アンサンブル:★★★★★
ライヴ度:★★★★☆
総合:★★★★★

ヴァディム・レーピン(ヴァイオリン)
トルルス・モルク(チェロ)
ヘンリク・ワールグレン(ヴァイオリン協奏曲のソロ・オーボエ)
リッカルド・シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
2008年8月ライプツィヒ、ゲヴァントハウス大ホール

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