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お蔭様で40000アクセスを突破致しました。至らないことばかりで申し訳ありませんが、これからも末永く宜しくお願い申し上げます。さて、今回は記念に大曲を取り上げようと思いまして、好評を得ているヤノフスキ先生とスイス・ロマンド管弦楽団によるブルックナーの交響曲シリーズから、最新の第8番をご紹介致します。
ブルックナーの交響曲第8番は、皆さんもご存知の通り彼が残した9つの交響曲の中で最大規模を誇ります。楽器編成しかり、演奏時間は演奏によっては90分を超えます。それだけに、ビギナーの方にはとっつきにくい印象を与えるのも事実ですが、私は9番と共にブルックナーの最高傑作であると考えます。そればかりか、最強奏の圧倒的な音響空間が作り出す荘厳かつ壮大な世界は9番を凌ぐ場面が多々あり、特に第3楽章の美しい音楽から比類なき高揚感に満たされるフィナーレにかけての感銘は他に代え難いもの。ブルックナーの特殊な世界の『頂点』を築くという意味で、名だたるブルックナー指揮者が渾身の名演を繰り広げており、昔から名盤に事欠きません。クナッパーツブッシュやシューリヒトにはじまりチェリビダッケ、ヴァント、朝比奈先生、マタチッチ、カラヤン、ジュリーニ、ヨッフム、ハイティンク、スクロヴァチェフスキ、ブロムシュテット、ヤング、ティーレマン、インバル等が極めて高い評価を得てきました。やはりアメリカのオーケストラによる演奏が殆ど見当たらないこと、ヨーロッパでも殆どドイツのオーケストラに限定されるのは非常に興味深いところです。特にシカゴとかフィラデルフィアなんかは、その輝かしい金管セクションの魅力からもっと名盤があっても良さそうなものですが(シカゴはショルティとの録音あり)…やはりブルックナーは8番や9番ともなると『指揮者を選ぶ』ということでしょう。 ヤノフスキ盤は上のどのタイプとも異なるようです。オーケストラがドイツ以外であるということが最大の特徴。スイス・ロマンド管は確か今まで殆どブルックナーの録音がなかったのではないかと思います。そういう意味ではホントに大丈夫なのか?という向きもありましょうが、心配はご無用!ペンタトーンレーベル特有の極めて優秀な録音と相俟って、素晴らしい名演が達成されています。特に先日も書きましたが、ティーレマンの演奏には大きく期待していただけにハズレの感が強く、その『不完全燃焼』を癒すに充分な中身を備えています。録音が良ければ全て良いというわけではありませんが、音響空間が的確に捉えられているということはブルックナーでは非常に重要な要素の一つであり、ティーレマン盤等はモロにその被害を被っている印象を受けました。オーケストラの音色が明るい色調を持ち、近年再び往時の輝きを取り戻したとさえ言える魅惑の『ロマンド・サウンド』が、細部に至るまでその魅力を発揮しています。1枚のディスクに収まる通常よりやや速めのテンポ設定と言えますが、インテンポを基調として数字以上に速めのテンポ感が印象的。しかし、ここぞというところで色々と仕掛けられており、聞くほどに新しい発見と味わいが感じられる名演と言えましょう。 さて、この曲は第3楽章にアダージョが配置され、7番で逆順に演奏されるケースもありますが、明確に緩徐楽章がこの順番に配置された曲はこの曲と9番のみで、しかも第3楽章と第4楽章はともに演奏時間が20分を越え、後半に比重が置かれたアンバランスな構造になっているのが特徴。更にこの第3楽章、及び第2楽章ではハープが非常に重要な役割を担っていることも特筆すべき点です。また、第1楽章が強奏で終わらない唯一の交響曲でもあります。ブルックナーに不可分の版の問題がこの作品にもあり、近年では初稿で演奏される機会も増えましたが、依然として改訂版、すなわちハース版、ノヴァーク版第2稿、特に後者で演奏されることが多いでしょうか。この演奏でも一般的なノヴァーク版第2稿が使用されています。 第1楽章『アレグロ・モデラート』の第1楽章冒頭で聞こえないくらいの弱音で奏でられる弦のトレモロから優秀録音が威力を発揮、低弦から徐々に姿を見せる第一主題、それに呼応する管楽器の経過句の緊密感が見事な一体感を示し、50秒過ぎでその全貌を現すまでのクレッシェンドも量感に不足はありません。非常に丁寧、繊細に描かれていくため濁りのない響きの透明感も素晴らしく、見事な室内楽的アプローチと言えるでしょう。トゥッティにおける金管の強奏がスケールの大きさを感じさせながら煩くないのは先生の真骨頂。1分52秒からヴァイオリンに現れる第二主題がフルートに受け継がれ、再びトゥッティに持っていく辺りも非常に美しい響きです。3分23秒からのオーボエとフルートの経過句から第三主題にかけてはアッサリしていますが、4分36秒からの壮麗なトゥッティの量感は抜群でこれによって第一第二主題とのコントラストが明確になります。その直後から6分過ぎくらいにかけて、ヴァイオリンのトレモロの上を明滅するオーボエのシグナル、それに呼応するホルンの柔らかい旋律が絡む場面等も繊細で美しく、見過ごせないハイライト。展開部での注目点はやはり終盤(8分3秒から)の強奏による第一のクライマックスでしょう。9分55秒辺りから、突如フルートに第一主題のリズム音型が現れて再現部に入りますが、第三主題が再現された後の12分14秒以降に注目したいと思います。ヤノフスキ先生はここでもテンポを落とさずにクッキリと明確なピッツィカートで導入し、クライマックスへ向けての大きなクレッシェンドを描き出します。ロマンド管魅惑のブラスセクションが見事な爆発を見せ、左からホルン、中央からティンパニ、右からトランペットが交錯して『怒りの日』さながらの音響空間を構築しており、それを見事に捉えた録音と共に秀逸!終結の弱音の印象を更に深めることに一役買っています。第2楽章第2楽章はブルックナー特有の、一度聞いたら忘れられないくらい特徴的なリズムが刻まれる『スケルツォ、アレグロ・モデラート』ですが、前楽章同様にブラスセクションが見事なパフォーマンスを披露しています。スケルツォのテンポは平均的と言えますが、ブラスの量感と質感が素晴らしく、それでいてキレのあるリズムで全体が見事に制御されているためか、全編に渡って推進力のある充実した響きを聞かせてくれます。特に天高く突き抜けるような輝かしくて伸びやかな高音はホルン、トランペット、トロンボーンいずれも見事の一語に尽きますね。5分2秒からのトリオで一転して深い呼吸で歌われる様も劣らず見事であり、ここでの弦楽セクション、木管セクションはもちろんのこと、6分44秒からのハープとホルンの対話がまた名演で、このオーケストラ特有の明るい音色と相俟って、束の間の至福を与えてくれます。第3楽章第3楽章は最も美しいブルックナー作品の一つである『アダージョ』。『荘重にゆっくりと、しかし引きずらないように』という指示がありますが、この演奏では『引きずらないように(=のめり込み過ぎないように、という意味もある?)』という指示を重視してか、幾分速めのテンポが採られています。冒頭の弱音で奏される特徴的なリズム音型と、第一主題Aを奏するヴァイオリン、それを支える低弦の伴奏に至るアンサンブルにおいて、素晴らしい集中力と瑞々しさが保たれているのが印象的です。トゥッティの高揚箇所を経て、また2分過ぎで弱音からジワジワと沸き上がり、第一主題Bにハープが絡んでくる部分の美しさは、他の名盤同様この演奏の白眉の一つであります。これに比べると4分34秒からチェロによって提示される第二主題Aはかなり明確に粘って、強弱の幅広く歌う表情を見せるのが印象的。このチェロとヴァイオリンが掛け合う箇所等はゾクッとするほどの美しさ。6分10秒辺りでテューバに出てくる第二主題Bは、それを伴奏する他の金管とのアンサンブルが荘厳な雰囲気を作り出し、7分34秒からの静かな木管アンサンブルも聞かせ所の一つですね。8分23秒からは弦楽器に主導権が移って冒頭主題が回帰しますが、シットリした歌わせ方が美しいですね。徐々にエネルギーを蓄えながら盛り上がり、11分前後に迎えるクライマックスのシーンでは、金管を中心とした骨太の響きが荘厳な感動を伝えてくれるでしょう。この楽章最大の聞き所である終盤のクライマックスは、20分29秒にシンバルの轟音と共に迎えられますが、多くの演奏のようにはディミヌエンドの『溜め』を作らず、極力インテンポをキープして雪崩れ込むのが逆に印象的であり、先生の強い信念すら感じさせて感動的。挙げればキリがありませんが、ここから先終結に至るまでは、ヴァイオリンとハープの絡みが回帰する部分を筆頭に、非常に優秀なアンサンブルに支えられて息を呑む箇所の連続です。第4楽章いよいよフィナーレですが、ここでもロマンド管が素晴らしい集中力と曲への共感を見せ、ヤノフスキ先生の解釈を見事に体現しており、全体のバランスから見ても理想的な演奏を展開しています。冒頭の弦楽器の伴奏音型が見せる確かな足取り、そこに確信を持って登場する金管の第一主題が、要所で打ち込まれるティンパニの強打と共に、今までの先生のイメージとは異なった、非常に重厚な響きを伴うものであることに驚かれる方も多いのではないかと思います。曲目も多分に影響していますが、オケもアンセルメやシュタイン、デュトワ等の演奏で聞かれる色彩感豊かできらびやかなイメージを一新、大きく変貌を遂げた足跡を窺い知ることが出来ましょう。1分56秒からの第二主題は一転、丁寧に心を込めて歌い抜かれ、それを力強く支える低弦の男性的な響きも魅力的です。3分7秒から金管に奏されるコラール風のメロディがまた非常にまろやかで、ヴァイオリンのピッツィカートと共にふくよかで瑞々しい音色がとても印象的ですね。丁寧で繊細なアンサンブルが光ります。4分37秒からの短調の第三主題は『音を繋がずに』という指定に細心の注意が払われ、1つ1つの音の動きの面白さに耳を奪われます。5分36秒からヴァイオリンに現れるコラール風旋律がまた見事で、珍しくかなり豊かな表情がつけられているのが印象に残りました。そして、6分32秒からの迫力に満ちた『死の行進』に突入。これはこの楽章で非常に重要な箇所の一つですが、金管楽器を中心に大きく前後左右に広がる音響空間を作り出し、重厚で荘厳な響きが曲想に相応しい素晴らしいクライマックスを形成。展開部から再現部(14分8秒以降)にかけてはかなり長いので少し冗長な印象を与えがちですが、やはり良い演奏で聞くと細かい聞き所が満載で、ヤノフスキ盤もあっという間に過ぎてしまいます。そして、やはりこの曲最大のクライマックスは20分40秒以降、ヴァイオリンの上昇音型に始まるコーダにあるのは明白ですが、徒にテンポを変化させずに充実した響きによって壮大な空間が生み出される様は圧巻で、ラストの金管が立体的に交錯して織り成す圧倒的に輝かしい『勝利のテーマ』によって、この個性的な名演を締め括ります。総括これでこのシリーズも5・6・8・9番のラインナップとなりましたが、4・7番といった有名曲、あるいは1〜3番の初期作品からどのような魅力を引き出してくれるのか、目が離せません。特にこの8番は、この曲が苦手だという方に是非とも聞いて頂きたい名演です。もう少しでロマンド管のシェフが先生からヤルヴィ御大に代わってしまうのが、何とも残念!詳細タイミングブルックナー:交響曲第8番ハ短調(ノヴァーク版第2稿)
第1楽章:14分52秒 第2楽章:14分44秒 第3楽章:26分5秒 第4楽章:23分41秒 合計:約79分 オススメ度解釈:★★★★★
オーケストラの技量:★★★★☆ アンサンブル:★★★★☆ ライヴ度:★★★★☆ 総合:★★★★★ 録音データ
マレク・ヤノフスキ指揮スイス・ロマンド管弦楽団2010年4月、6月〜7月ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール
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