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今、奥さんが扁桃腺で寝込んでいる。
ん?この言い方はおかしいか。「扁桃炎」で寝込んでいる。 口蓋垂(のどちんこ)の左右にある口蓋扁桃。 俗に言う扁桃腺であるが、ここは”Waldeyerの咽頭輪”と呼ばれる輪状のリンパ上皮性組織に属する。 組織学的には一種の集合リンパ小節で、細菌やウイルスからの防衛機能を担う。 つまり、生体に侵入しようとする外敵(異物)と戦う最前線なのである。 虫垂(いわゆる盲腸)が、これとよく似た組織と言われている。 盲腸と同じく、扁桃腺もよく炎症を起こす。 通常は抗生物質の投与で治癒するが、一度感染すると菌(主に溶血性連鎖球菌)が完全になくなることはなく、免疫力が低下した際などに再発する。 3年前、奥さんは扁桃腺が腫れて2週間も寝込んだが、今回は幸運なことにそれほど重症ではない。 アジスロマイシン(商品名:ジスロマック)の経口投与が効いたのか、明日くらいには復活できそうだ。 扁桃腺を診ていると、一つの出来事を思い出す。 あれは、忘れもしない冬の日・・・患者さんの扁桃腺を切った。 歯科医師の私が、である。 何故その患者さんが当院に来院したか、その理由はよく分からない。 30代の女性で、主訴は呼吸困難と嚥下困難。 38℃以上の発熱もある。 診ると、左の扁桃腺が大きく腫れあがり、喉をほぼ塞いでいるような・・・重度の扁桃周囲膿瘍だった。 一見して、窒息寸前だと思った。 これはまずい。命にかかわる。 「紹介状を書くから、すぐ○○病院に行って下さい。たぶん入院することになる。」 入院すれば全身管理のもと、最悪の場合でも気管内挿管して呼吸を確保できるので安心だ。 しかし、患者さんはそれを拒否。何とかここで治して欲しいと言う。 (無茶を言うなよ・・・。) だが、このまま家に帰せば、間違いなく窒息死する。 やるしかない。 大学病院時代に口蓋裂の形成術を経験しているので、この部位の解剖は頭に入っている。 要は、膿を抜いて気道を広げればよいのだ。 私は膿瘍穿刺に使う大きな注射器を取り出し、腫れている箇所を針で突いてみる。 出血はするが、ほとんど排膿はない。 やはり、膿瘍の位置が正確に分かっていないと穿刺吸引は無理か。 次に、口腔外科手術用の尖刃刀(No.11のメス)を使い、歯肉膿瘍を切開する要領で慎重に切ってみた。 縦に1センチほど切開したが、やはり膿は出てこない。 やむを得ず剥離子を入れて、粘膜を鈍的に剥離しようと少し力を入れた、その瞬間。 ・・・ドバッ! 悪臭を放つクリーム色の膿が、滝のように吹き出してきた。 物凄い勢いである。 患者さんがむせないように、慌ててバキュームで吸引しなければならなかった。 排膿後、腫れていた扁桃腺は嘘のように小さくなった。 呼吸も楽になり、差し当たってはこれで大丈夫だ。 「必ず耳鼻科を受診するように。」と紹介状を渡したが、彼女がきちんと受診したかどうかは不明である。 |
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呼吸困難と嚥下困難で歯科を受診するとは、すごい選択ですね。
呼吸困難の段階だから、すぐに助けて欲しかったんでしょうね。
このケースは歯科を選択したから助かった。。。
奥さん、お大事に。ジスロマックはよく効きます(私にも)。
早く治るといいですね。
2010/9/30(木) 午後 5:05 [ - ]
そうですよね。普通なら内科か耳鼻科を受診するでしょう。
ただ、以前に親知らずが腫れて口が開かなくなった事があるそうで、今度もそれが原因と思ったのかも知れません。
お気遣い頂き、ありがとうございます。奥さんは熱も下がって、だいぶ元気になりました(^^)
ジスロマックは感染巣をピンポイントに叩けるので、重宝しています。
2010/9/30(木) 午後 6:18 [ ひろゆき ]
そんな事があったんですかぁ…驚きです。。
歯科で診察を?それだけその方は耐えられる状態でなかったんでしょうね…
近くにひろゆきさんの歯科があって患者さんは感謝ですね
奥様、お大事になさって下さいませm(__)m
2010/9/30(木) 午後 6:43 [ 猫panchi ]
人助けだと思って処置しましたが、ぶっつけ本番で、正直冷や汗ものでした^^;
2010/9/30(木) 午後 8:15 [ ひろゆき ]
救急車を呼んでも良かったんですけど、本人の了解なしに無理やり搬送は出来ませんから^^;
今月から、インフルエンザの予防接種ができるみたいですね。
私は優先順位が低くて去年は受けられなかったので、今年は受けたいと思っています。
2010/10/1(金) 午後 0:48 [ ひろゆき ]
わあ〜 そんな事ってあるのですかあ・・・!! w(゚ー゚;)wワオッ!!
喉なら 耳鼻咽喉科に行きますが・・・
ひろゆき先生だから 出来たことでしょうね・・・どこの歯科でも
こうは いかなかったでしょう・・・
奥様 お大事に!
2010/10/1(金) 午後 6:03
咽頭付近は耳鼻咽喉科と口腔外科の境界領域にあたり、歯科医師が処置しても別に法律違反ではないとのことです。
もしまた機会があれば、今度はもっと落ち着いて処置できるかと^^;
奥さんはちょっと秋バテ(今日の記事参照)も入ってますね。
養命酒を買って帰ります。
2010/10/1(金) 午後 7:02 [ ひろゆき ]