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本書はホメーロスの名を冠して伝えられる全33篇から成る22柱の神々への讃歌集です。
その中にはデーメーテール、アポローン、ヘルメース、アフロディテーに捧げられた「四大讃歌」を含み、ギリシア神話のテクストとして貴重なものとなっています。
ホメーロスといえば、『イーリアス』と『オデュッセイア』の二大叙事詩の作家として伝えられている人物(「源氏物語」の紫式部のようなもの。作品が原型残っていないことも同じ)で、大体紀元前800年頃の人と言われています。
この二大叙事詩がいかにスゴイかというと、エジプトで発見された古代のパピルスの文書の半分はこの二つの叙事詩を写したものだったのです。
始めは『デーメーテール讃歌』で、のちにペルセフォネーとなる娘神(コレーとも言う)がハーデースによってさらわれた逸話を語ったものです。
娘を失った母神は悲しみ、地上に隠れます。
穀物神であるデーメーテールの失踪で、地上は実りを忘れます。
デーメーテールは地上で飲まず食わずで過ごしますが、ある女が女神を笑わせる為に下半身を露出するというエピソードがあります。
女神はそれを見て笑い、食事をすることに同意したのでした。
これは「天岩戸神話」でアメノウズメが身体を顕わにして踊って、天照大神に戸を開けさせたことに相当します。
なぜ、女の身体なのかというと、女性の身体こそが豊穣のシンボルだったからです。
(天照大神に地母神の原型があるのは他の神話からも明らかですが、長くなるのでまた今度)
さて、話は逸れましたが、最終的に娘神の帰還が叶い地上に実りがもたらされ、四季が出来るというこの話、一番有名なギリシア神話の部類に入ります。
訳注や解題まで読むとかなりのボリュームですが、神を讃えた詩篇だけ読んでもかなり面白いです。
どのように伝えていったのか、どのように語りかけたのか。
古代ギリシアではこのように美しい詩も、彫刻も絵画も、神々に対する最高の捧げものとされました。
これらの美しいものに触れたとき、我々と同じように神々も喜ぶと彼らは思ったのです。
これこそが愛の話よりも嫉妬の話よりも何よりも一番神を身近に感じた証だと私は思います。
長く読みふけると、詩が作れそうな一冊です。
ホメーロス自身の作と言われるものはありませんが、偉大な作家の名に相応しい詩篇の数々です。
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