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今回、紹介するのは『戦国武将の手紙を読む 浮かびあがる人間模様』です。
前回に引き続き小和田哲男著の本ですが、続けて読んでいるワケではなく、間に聖書関係の本を何冊か読んでいます。(難し過ぎて、とても紹介出来ませんが)
内容はタイトル通り、戦国武将の書いた(殆どが直筆)手紙からその時のその武将の立場、心情を読み取るものです。
まず、書状そのものの写真と、その読み下し文と現代語訳が合わせて載せてあり、その勉強をする人にもおあつらえ向きとなっています。
ひとり目が武田信玄の書状で、昭和44年に発見された問題のものです。
それまで、大河ドラマ「風林火山」の主人公・山本勘介は確かな書状に名前が見えないことから、「甲陽軍艦」を記した(と、言われる)小幡景憲などの創作ではないかと言われ始め、その説に立って書かれた「天と地と」のNHKのドラマでオープニングに映される信玄の花押を見た人が、この書状を持って名乗り出たのでした。
勘介いない説のドラマから発見されたこの文書で山本勘介の実在が証明されたのですから、歴史学というのもは予断を許しません。
「出雲王朝はなかった」などの論文が発表された後に荒神谷遺跡から銅剣だけでも358本に及ぶ(これは日本中で発見された銅剣の総数より多い)膨大な遺産が発見されて、見事に覆されたことを思い出します。
書状自体は信濃の国境付近の小名・市河藤若(本人の子孫が書状を現代まで保管していた!)に対する細かい指図となっております。尚且つ使者(山本勘介)が口で説明するというのが面白いです。
文章はとても丁寧なもので、国境に住むどちら(この場合は上杉と)に付くは分らない武将に対する気遣いがとてもよく伺えます。
そして、一番胸を打たれたのが「森長可自筆遺言状」と「魚津在城衆十二名連署書状」です。
後者から触れますと、魚津城の戦は「天地人」でも出て来た上杉の城に織田勢が攻め寄せた戦いで、一旦後詰として上杉景勝はそのすぐ近くの天神山城に入りますが、森長可らに春日山城の方を攻められる懸念が出来たために魚津城を見捨てるカタチで撤退。魚津城の十二名は籠城戦のすえに全員自害します。
ドラマでもあった通り、景勝や直江兼続は織田軍への投降を勧めました。
しかし、彼らは名を残すことを選びます。
その決意を認めたのが、この書状でした。
美しく死ぬことが武士道…と、言うのではなく、この「武士の誉れ」は一族の繁栄に繋がったのです。
そして、魚津城落城のまさにその時、京都本能寺で信長は討たれ、森長可の3人の弟が共に命を落としました。
「森長可遺言状」は有名なもので、小牧・長久手の戦で豊臣秀吉側の武将として戦った森長可が書いたものです。
遺言というと、腹を斬る前とか突撃前とか、確実に死ぬと思われる状況の前に書いたと思われますが、この書状を書いたときはそこまで逼迫した場面ではなかったようです。
しかし、長可はこの戦で戦死した為にこの遺言状は本当の遺言になってしまうのです。
この内容で目を惹くのが、娘おこうの嫁ぎ先について、「武士ではなく町人にして欲しい」と書いていることです。
この時の長可が27歳くらいでしたから、おこうはまだ少女だったハズで、娘の行く末を心配した心情が伝わります。
父も若くして戦死し、弟たちも死に(一番下の弟・千丸は幼少で信長に仕えていなかったので生き延び、彼が森家の家督を継ぐ)、そして自分も死に逝く運命に、何を思ったのか…。
先ほど「逼迫した場面でない」と、書きましたが、実は森長可はこの前に無謀な戦を仕掛けて面目を失っていました。
秀吉が合流してからの戦でも家康軍の待ち伏せを受け、大将の秀次を命からがら逃げさせて散ったのがこの戦であったのです。
この長可の細かい状況と合わせて読むと、本当に胸が熱くなります。
他に伊達政宗の小田原参陣の経緯に関わる2通の手紙など、関連性も合わせて読むと楽しいものもあります。
この本で私が一番面白いと感じたのは、「徳川家康起請文」です。
織田信長と武田信玄が同盟関係にある中、信長の同盟者である家康を見くびっているのか、信玄は家康の領内は侵食して来るので、困窮した家康が上杉謙信との同盟を模索し始めた時のものです。
信長の同盟者というか子分みたいな家康は、信長の同盟者である信玄に面と向かって対峙出来ないのです。
(完全に信玄の契約違反なのだけど…)
信長も見て見ぬフリ…。それどころか、嫡男・信忠と信玄の娘・松姫との婚礼を進めていたのです。
そこへ、家康は苦悩の末に信長と信玄の同盟を終らせ、謙信とよしみを通じることを決め、それが三方原の戦に繋がっていくのです。
その決意の起請文は板挟みになった家康の苦悩がよく表れていて、こんな家康にはとても魅力を感じます。
大河とかも、こういう一生懸命な家康はじめ、戦国武将の様子を取り上げればいいのにな〜…と、思うのですが。
さて、この信玄と信長の決裂が松姫の悲劇へと繋がって行きます。
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2010年12月26日
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