中将の君のひとりごと

歴史とサッカーが好きな私のオススメを紹介します。最近はもっぱら旅人か、映画評論家気取りですが…

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『神話と日本人の心』

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またまた臨床心理学者・河合隼雄氏の本です。
タイトルの『神話と日本人の心』の通り、「古事記」「日本書紀」に語られる日本神話から日本人独自の深層心理を探すという本です。
 
日本神話の大きな特徴のひとつが、太陽神が女性であると言うことです。
…と、言っても太陽神が男性であるというのはギリシア神話のイメージが強いだけで、女性のところもありますし、性別が確かでないものも多いですし、太陽が神ですらないところもあります。
日本の場合、豊穣神が太陽神に結びついたのが天照大神であると考えられます。
 
その重要な神が女性であることがただそれだけで気に入らない人が多いらしく、天照大神は男神だった、などと言う人が結構居ますがそれは違います。
そうこじつけるのであれば、男性の太陽神も存在したと考えるべきで、例えば葦舟に乗せて流されたヒルコや、名前からニニギノミコトなどがそうなのでしょう。
それが「記紀」が編纂されるに当たってか、その前かに採用されたのがオオヒルメであったと見るべきです。
 
しかし、この天照大神、主神であるかと言うと…ちょっと微妙なんですよね。
それがまさに日本神話の特徴と言えます。
 
まあ、それは一旦置いといて(笑)、この天照大神、一筋縄ではいかない存在ですよね。
前に何か(…)で、この女神とギリシア神話のデーメーテルとの類似性をさんざん書きましたが、天照の出生から言うと知恵の女神アテナとの共通性が伺えるわけです。
 
妻を喪ったイザナギ神は妻を取り戻す為に黄泉の国に行きます。
そこで禁忌を破って、今まで曖昧だったあの世とこの世の境を創ったのでした。
黄泉での穢れを取る為にイザナギは川で禊をし、その時に生まれたのが三貴神と呼ばれる天照・月読・スサノオの重要な神でした。
 
穢れと言うカタチであれ母・イザナミは関わってはいますが、天照は父親から生まれた女神であるのです。
そして、彼女はこの後も「父の娘」として女神でありながら「父権」の拡大に尽力します。
 
女神アテナもゼウスという主神の頭から生まれ、ゼウスの代理として活躍します。
イザナギが主神かと言うと、それは違いますが、ゼウスの権力の拡大は母神との軋轢を生み母権社会を一掃していったことから、目的はほぼ一緒だったと言うことが出来るでしょう。
 
この「父の娘」問題が、実は現代社会での大きな軋轢のひとつなのです。
女性の社会参加が進んで、欧米では早くから男性社会で活躍する女性が生まれました。
彼女たちは、一見して女性として成功しているように見えますが、やがて気付き始めたのです。
自分は「男の価値の中で成功している」のであって、自分の中の女性を抹殺してきたのではないか―と。
深層心理として、これは実に大きな問題なのですが、神話とは関係ないので解決策は次回に譲ります。
 
その天照に対して、母権に近い立場にいるのが男神であるスサノオです。
母であるイザナミに会いたいと言っては泣き、黄泉へ行くとなれば姉に別れを告げに行きます。
 
その真ん中に居るのが月読です。
殆ど神話を持たないこの神が日本神話においてどのような役割を持っているのか謎めいていますが、まさにこの中庸の存在こそが日本神話の真髄ではないかとこの本では解いています。
高天原で罪を犯したスサノオでさえ、殺すようなことをしないこの世界では、「善」か「悪」かではなく、物事のバランスを重んじていると言っていいでしょう。
この日本人の知恵が二元論の限界に行き着いた現代社会に何かをもたらすという提言がなされています。
 
しかし、この本の面白いのは神話の比較の方だと思います。
なんでこんなに似ているのか、不思議でたまりません。専門外ながらとておよくまとまっていて、比較神話学の取っ掛かりとしてもいい本です。

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