海洋戦略研究

軍事戦略、管理思想、情報、金融経済、国際情勢、ロジスティックス、IT技術等を考察、良質な軍事、管理、情報知識の提供を目標!

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 ジェリコー提督の戦闘隊形に移るべきか否かという逡巡は、少なくとも真一文字に敵に突進するネルソンのやり方ではなかった。確実でない情報と勝算で、味方の戦力の損耗することを少しでも避けようとする、兵士といよりは軍事官僚的な発想といえるかもしれない。英海軍の機能、例えば戦場での情報伝達など、組織はネルソン時代そのままであったが、現場指揮官に求められるバイタリティーにおいて、ネルソン時代は遠くへ去っていた。油断から先端科学技術の利用に遅れをとるとともに、組織の機能低下と決断の果敢さの喪失というように、すべてが衰退を示唆する組合せとなり、時代に対して大きな不適応に陥りつつあることを示していた。ダーダネルス海峡に突入した英戦艦、ガリポリ、ソンムでの白兵突撃の悲劇は、英国の歴史にかってなかった戦略的無能と一体になった人命の軽視というリーダーの愚かさを示していた。まさに大英帝国の心神喪失を象徴する光景であった。
 英国の海上封鎖は、保有する英艦隊と地理的優位性を最大限活用する巧妙な砲佐を採り、ドーバー海峡とスコットランドとノルウェーとの間を機雷で封鎖し、監視を強め、ドイツ艦船を大西洋に出られないようにした。英艦隊は、本国内の基地に待機し、封鎖線を突破しようとするドイツ艦船に対しては、出撃して個別に撃破した。英国の対独経済封鎖は、相互いざ温金木による国際貿易の重要性、経済と軍事の密接拡大化、そして古典的封鎖を時代遅れとする通商の遮断であった。今日における経済制裁と共通の問題、“鐇裁国の貿易を行う支払い能力:資本取引をどうするのか。被制裁国の代替供給先、代替品研究開発をした場合どうするのか。制裁国の監視手段:海軍力をどう使うのかということを有していた。
 英独両国の封鎖作戦が行われたが、効果の大きかったのは、英国によるものであった。これによって独国民6千8百万人は、壮絶な飢餓に追い込まれ、餓死者を出すようになった。こうした事情からドイツは無制限潜水艦戦争を宣言した。これが、心情的に連合国に好意を払っていた米国を敵に回す結果になった。そして休戦後も封鎖が続けられた結果、少年時代をこの食糧難に遭遇した世代の脳の成長は政情でなく、後のナチズムの温床になったとの研究もあるという。
 脳の成長は別にしても、ドイツが連合国側を恨んで復讐を誓ったのは、食い物の恨みであった。

註:中西輝政『大英帝国衰亡史』PHP研究所、1997年
  宮川真喜雄『経済制裁 日本はそれに耐えられのか』中央公論社、1992年
  鯖田豊之『金(ゴールド)が語る20世紀 金本位制が揺らいでも』中央公論新社、1999年

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