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アル・ゴア米国元副大統領がノーベル平和賞をIPCCと共に受賞しました。共に環境問題への貢献に対するものです。昨年のグラミン銀行創設者ユヌス氏のマイクロクレジット普及への貢献による受賞を除いてここ数年環境問題へ貢献の大きかった人が受賞する傾向にあるようです。それだけ環境問題のあらゆる分野への影響や認識が急速に高まってきたことに比例したものだと思います
「もったいない」のワンガリ・マータイさんが2004年に受賞するまでノーベル平和賞は紛争解決への貢献や人権回復への貢献に対して贈られていました。しかし2005年のエルバラダイさん、そして今回のゴアさんの受賞と、近年環境、エネルギー、資源問題が脚光を浴びている様に思います。環境問題への貢献が人権回復や紛争解決と同じように重要だと言う認識が定着してきたからでしょう。
産業革命以来、経済的価値の向上が疑いもなく是とされ、それに伴う環境への負荷の増大という問題に対しては政治、行政、企業、社会何れもがその存在すら認識せずに見過ごしてきた訳です。環境問題に本当に脚光が当たるようになっておそらく未だ15年くらいしか経っていないように思います。それ以前にも有名なローマクラブのレポート(成長の限界)やレイチェル・カーソンの「沈黙の春」等による問題の指摘はありましたが、ここまでこの問題が一般化してきたのはつい最近のことです。しかしここに至ってもまだ、例えば環境会計制度などの強制力のある制度的な解決は見られていないし、事の深刻さからしてその取り組みはまだまだ不十分と言わざるを得ません。
その意味で、今回のIPCC,ゴアさんの受賞には大変意義があると思います。確かにゴアさんのアプローチには多分にエンターテインメント的な要素が大きいとか、「不都合な真実」には誤った記述が見られるとか(読んでみると確かに素人目にも間違いだとわかる記述がいくつかあります)、世界には紛争や人権などの面でもっと大きな問題がある等の批判はありますが、それでも私は今度のノーベル賞の審査委員会の見識を支持したいと思います。
環境問題は従来の発展至上主義に対する抑制要因になり、少なくとも従来のこうした考え方に対して根本的な発想の転換を求めるいわゆるパラダイムの変換を余儀なくする要因ですが、人類の生存を至上のものと考えるなら、もはや現状はこのパラダイム変換の否定を許さないほどの深刻さを持つに至っています。少なくとも今行動することによってそれが万一徒労であったことが将来わかってそれを後悔するよりも、今行動を取らずに取り返しのつかない事態に陥ってからそれを後悔する方がずっと後悔の度合いは強いように思います。
だから、ゴアさんがパフォーマンス過剰だと言われてもこれほどまでに環境問題の重要さを多くの人々に認識させるのに努力し、それに成功したことは充分に平和賞受賞に値すると思うのです。環境悪化が進展して人類の生存が本当に脅かされる様になったら、地域紛争に現を抜かしていることなどできなくなるかもしれないのですから。(その期に及んでも人類はなお、いがみ合いの愚を冒しているかもしれませんが)
人類の生存にとってそれほどの大きな問題である環境問題に対する貢献は従来のノーベル平和賞の範疇には収まりきらないように思います。環境問題は優れて科学の問題であり、同時に経済の問題でも生理学そしてもちろん人類平和の問題でもあるのです。そうであるなら私は独立したノーベル環境賞を創設するべきだと思います。
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