京都を感じる日々★古今往来Part2・・京都非観光名所案内

京都を感じる日々★古今往来part1・・京都非観光名所案内のニューバージョンです。

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三鈷寺

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今回は、西京区大原野石作町、観光地として知られる善峯寺の北にある三鈷寺(さんこじ)を採り上げます。
前回の金蔵寺は、街中から遠い隠れ里のお寺といった雰囲気でしたが、今回の三鈷寺(さんこじ)は、観光地として知られる善峯寺のすぐ北にあるにもかかわらず、意外とその行き方がわからないという人が多い「隠れ寺」です。一応観光寺院ですが、訪れる人は少ないので、人の多い善峯寺に疲れた時は、すぐ近にあるこの眺望の良いお寺で寛いでも良いかもしれません・・二人だけの時間を過ごすのにも良い感じですね。(新しい広い客殿は、休憩所としても利用できます)


三鈷寺(さんこじ)を訪れる人は、そのほとんどが善峯寺のついでと思われるので、善峯寺から三鈷寺(さんこじ)に行く方法について少し書いてみます・・・主に三つの道があります。
一つは、善峯寺山下のバス停留所の手前約百メートル右手に「西山本山三鈷寺」の石標があり、側に「阿智坂明神社」という善峰の小さな鎮守社があるので、この目印のある坂から山道を登るという方法です。この「阿智坂」と呼ばれる坂道は、石が転がっている自然道に近いもので、距離は約四百メートル、十数分程度で寺に到着します。しかし、短い距離で一気に山上に駆け登る道なので、かなりの傾斜角度があります・・・山に登るという覚悟が必要です。その後、道は折れ曲がって石段へと続き、三鈷寺の東門(門は無いですが、こちらが正門ということです。)に至ります。(山道の参道付近の写真を掲載しておきます。)
車の場合は、善峯寺の山上にある駐車場の入り口のさらに上、対向車があれば離合できないような細道が三鈷寺に通じていて、タクシーではこの道を通って観光客を運ぶようです。

一番楽でお勧めなのは、善峯寺の北門を抜けることです。(この北門、善峯寺境内の幸福地蔵の辺りから、桜・あじさい園を挟んで遠望できます。善峯寺のパンフをお持ちの方は境内案内図をご覧下さい。)この門から二分程道路を歩けば、すぐ三鈷寺の西門(高麗門)に至ります。
(善峯寺の北門は無人の場合が多く、その場合一旦外に出ると、境内に戻ることは出来ない仕組みになっているので、善峯寺の境内を楽しんだ後で三鈷寺に寄った方が良いでしょう。また、帰りは先程書いたような急な山道を下るということになりますが、登りに比べると比較にならないほど楽です。)



さて、三鈷寺は、山号を西山(せいざん)、または華台山(けたいさん)という西山宗(せいざんしゅう)の総本山です。中世には西山往生院、往生院本山とも称されて栄え、天台宗、浄土宗西山派、さらに天台宗を経て、昭和二十六年(1951)に四宗(天台・真言・律・浄土)兼学の西山宗本山として独立しました。本尊は佛眼曼荼羅(ぶつげんまんだら)で、洛西三十三所観音霊の第五番、西山国師遺跡霊場第十二番札所でもあります。

三鈷寺は元々、善峯寺山内に建てられた草庵(御堂)に始まるために、その歴史は善峯寺と重なる部分が多いです。寺伝によると、平安時代中期の承保元年(1074 京都市の駒札では長久三年(1042)となっています)、善峯寺の開山として知られる比叡山横川の源算(げんさん)上人が、善峯寺山内の北尾と呼ばれる尾根に隠居所として草庵を建て、往生院(北尾往生院)と号したのが三鈷寺の創建と伝えられます。
尚、平安時代後期の善峯寺の境内は、南尾、中尾、北尾という三つ山の尾根に分かれ、現在の善峯寺の本堂(観音堂)付近に南尾法華院、現在の奥の院薬師堂のある中尾に蓮華寿院、北尾に往生院があったとされ、北尾往生院があったのは、現在の三鈷寺よりさらに山中でした。


その後、往生院(北尾往生院)は、善峯寺の二祖・観性法橋(かんせい・かんしょうほうきょう)を経て、三祖・慈鎮(じちん 慈円)和尚から、建保元年(1213)に法然上人門下の四祖・西山上人証空(しょうくう 善慧房・善慧国師)に譲られました。西山上人は、当時荒廃していた往生院を復興して、浄土宗西山派の不断如法念仏道場として発展させて独立し、背後の山の頂上髢嶽(かもしかだけ)の三峰の形が仏具の三鈷に似ているところから寺名を三鈷寺と改めて、後嵯峨天皇から宣旨を賜って勅願所に列せられました。また、安貞2年(1228)ニ月には、中納言中宮大夫・藤原実基から領地の山城鷄冠井荘内の地を、三鈷寺(善峯寺徃生院)の不断念仏供料に提供されています。
西山上人は、宝治元年(1247)十一月二十六日に白河遣迎院(京都市東山区)で七十一歳で入滅し、遺体は三鈷寺山内で火葬にされました。上人に深く帰依していた蓮生(れんしょう 宇都宮頼綱)は上人の墓所として三鈷寺山内に多宝塔を建て、観念三昧院華台廟と称しました。

尚、蓮生は、俗名を宇都宮頼綱(うつのみやよりつな)といい、鎌倉幕府の有力御家人でしたが、元久ニ年(1205)に北条氏に謀反の嫌疑を受けて出家し、実信房蓮生と号しました。蓮生は歌人としても優れ、京都の小倉山麓の二尊院の側に山荘を構えて、藤原定家と親交を深めます。そして、蓮生が定家に、山荘の障子に貼るための色紙の執筆を依頼したことをきっかけに、「小倉百人一首」が生まれることになりました。この蓮生も、華台廟に西山上人と共に祀られています。


その後、三鈷寺は、中世を通じて念仏道場として西山上人証空の法流を伝え、多くの寺領荘園を有して栄えました。当時は嵐山の二尊院に至る広大な寺域を持っていたということですが、応仁の乱(1467)の兵火によって山内は荒廃して多宝塔以下の堂宇を失いました。また、天文二十一年(1552)十〜十一月には、細川晴元と三好長慶の抗争により西岡近辺が放火され、三鈷寺や善峯寺などが焼失しています。
その後、江戸時代には常念仏再興の綸旨を授かって新たに寺領を得て復興されましたが、かつて栄えたよう時代のような旧観には復さなかったようです。そして、昭和二十六年(1951)、第五十二代・台龍上人が現在の寺観を整備して、天台宗を改めて西山宗として独立し、平成十四年(2002)春に平成の大修理が完了して現在に至ります。



三鈷寺の境内ですが、現在は、建物としては華台廟、本堂を中心に、庫裏や客殿等があるのみですが、多くの由緒有る寺宝を所有しています。
華台廟と本堂は軒続きで並び、建物の奥に張り出した華台廟には彩色された西山上人像が祀られています。また、本堂には諸仏が安置されています。二祖・観性法橋(かんせい・かんしょうほうきょう)筆とされる本尊の佛眼曼荼羅(ぶつげんまんだら)は、かつての三鈷寺の壮大な本堂に祀られたものですが、現在の本堂には納まりきれない大きさのため、京都国立博物館に寄託されていて、代わりに智証大師円珍作と伝わる全身が金色の珍しい不動明王像「金身不動明王」が本堂の中央に祀られています。

また、本堂右手には慈覚大師円仁作といわれる「抱止阿弥陀如来(だきとめあみだにょらい)」が祀られています。この像は、右手を胸に置き、左手を下方に下げた姿をしていて、先程書いた実信房蓮生が夢の中でこの阿弥陀如来の姿を見て、その姿を追って衣にすがり付いたところで夢から覚めたという伝説が伝えられます。その他、西山上人筆と伝わる「当麻曼荼羅」、同じく西山上人作という「十一面観音菩薩像」、「西山上人思惟像」、「西山上人思惟之御影」、西山上人筆「鎮勧用心」、「宇都宮頼綱画像」、三条称名院筆「宇都宮系図」等の寺宝を所蔵しています。


さて、三鈷寺の一番の人気は・・といってもこのお寺を知らない観光客は多いですが・・本堂前や客殿からの眺めです。
その眺望は、関西屈指といわれ、比叡山から東山三十六峰、京都市内、宇治、城陽、木津方面まで一望出来、江戸時代の「都名所図絵」では「二大仏七城俯瞰の地」と記されています。
(「二大仏七城俯瞰の地」ですが、「二大仏」とは、京都方広寺と奈良東大寺の大仏のことで、「七城」とは、二条城、伏見城、淀城、高槻城、大坂城等の京都内外の城を意味します。もちろん実際は大阪や奈良まで眺望出来る筈は無いのですが、それ程眺望が良いと例えられたようです。)
違いはあまり判らないと思いますが、本堂前(無料)と客殿(有料席)からの眺望写真を掲載しておきました。(最初の二枚が本堂前、残り三枚が客殿から、少し見える角度が違います)
特に東山に上る名月の眺めは関西随一とされ、中秋の名月を鑑賞する「観月の夕べ」も行われているようです・・・夜に懐中電灯を片手に急坂を登るというのはかなりハードですが。

また、境内では、桜やツツジ、紫陽花、桔梗、萩、紅葉等四季を通じて花を楽しめ、特に境内東にある大きなイチョウの木がお寺のシンボルとなっています。(今回はこのシンボルのイチョウの葉は落ちてしまった後でしたが、客殿裏にある別の大きなイチョウも含めて撮影しておきます)


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