幡野広志のブログ

写真家、猟師。 2018年3月 noteに移行しました、https://note.mu/hatanohiroshi

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僕、ガンになりました。

父をガンで亡くしているので、自分もガンになるだろうとは思っていたけど34歳は早すぎる気がする。

背骨に腫瘍があり、腫瘍が骨を溶かすので激痛と神経を圧迫しているため下半身に軽い麻痺も起きている。
自殺も頭の片隅に考えるぐらいの激痛で夜も眠れず平常心を保てなかった。
緩和ケアの医療スタッフと強力な鎮痛剤を開発してくれた研究者のおかげで今は穏やかに暮らせている。

妻と結婚してどう控えめに言ってもかわいい息子に恵まれ、病状を知り涙してくれる友人がいる。
社会人とは思えないほど長期休暇を取って広く浅い趣味に没頭し、好きなことを仕事にした
幸せの価値観は多様性があり人それぞれだけど、僕は自分の人生が幸せだと自信を持って言える。

だから死と直面していても後悔はなく、全て受け入れているので落ち着いている方だと思う。
それでもガンと診断された日は残される家族のことを想い一晩泣いた。

もしも自分の妻や息子がガンになり苦しんでいたら正気を保てないと思う。
自分の苦しみは耐えることができても、自分の大切な人の苦しみというのは耐え難い。
そういう意味で気丈に耐えている妻と母には感心する。

一番の気がかりは当然ながら1歳半になったばかりの息子だ。
父親として教えるべきことが山ほどあるのに、息子に申し訳ないと思う。
学校では勉強や集団生活や理不尽さを学ぶことができるけど、人生で大切なことは僕が教えたかった。


数年前の話なんだけど、狩猟中に山で遭難したことがある。
経験不足と知識不足と体力不足で何もかも不足していたのが原因だ、山を舐めていた。
もともと無い体力をどんどん消耗し太陽も徐々に傾き、とにかく下山しなければと焦っていた。
このときはずっと妻のことだけを考え、心の中で謝っていた。

荷物を軽くしようと必要のないものを山に捨てた。
所持品の中で重量物のツートップが鉄砲とカメラ、どちらも金属の塊だ。
鉄砲を捨てて助かっても警察沙汰&ニュースになり、下手すれば逮捕。
迷いもせず僕はカメラを捨てた。
カメラなんて大量生産品どこでも買える、大切なのは写真であってカメラじゃない。

下山途中に鹿がいたので撃った、若いオスだった。肉を持ち帰る余裕なんて無かったのに獲った。
お腹をあけてレバーと心臓と背中のロースだけ剥ぎ取った。鹿の体内はお湯のように熱く感じた。
恐る恐る血を手ですくい飲んでみると驚くほど美味しかった。
折れかけた心が復活してその後無事下山できた。
迷いもなくカメラを捨てたことと、あのときの鹿の命は今でも忘れられない。

ガンと診断されて一番最初に処分しなければと思ったものが鉄砲だ。
あのとき命を繋いでくれた鉄砲がいまでは邪魔になっている。
死ぬのに鉄砲は必要ない、いま必要なのはカメラだ。

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ガンと宣告されてから毎日息子のことを撮影している。

僕が死んで何年かたって息子が写真を見たとき
「お父さんは僕のことを愛していたんだ。」と伝わる事を願って撮影している。
いまの僕の心境を息子に伝えたい。そのために撮影している。

いい写真ってなんだろうってずっと考えていたけど、
撮影者の伝えたい気持ちが正しく伝わる写真のことなんだと気付いた。

気付くのが遅いけど、まだシャッターが押せるので間に合わなかったわけではないと思ってる。

ガンになることが運命だったとしたら、写真家という人生もまた運命だったのかもしれない。
僕の気持ちを息子に伝える、そのために写真を撮る人生を選んだのかもしれない。
このときために写真を学び続けていたのかもしれない。

好きな被写体を好きなように撮る日々に充実を感じていて、
死と直面することで本当に大切なものが見えてくる。

皮肉なものだけど死と直面することで生きていることを実感する。

いい写真ってなんだろうという答えが見つかったら、生きるってなんだろうって疑問が湧いてきた。
せめてこの疑問の答えを見つけてからしっかり死にたいところ。

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閉じる コメント(36)

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好きな写真家同士の実際の繋がりを見つけて嬉しくなって一番肝心なことを言いそびれました。

幡野さんの日々の写真がとても好きです。でも見るたび少し落ち込んでいました。毎日を真剣に生きている人にしか撮れない写真だと思うからです。
私は少し前からカメラを持ちはじめたのですが、豊かな写真を見れば見るほど、自分のしょうもない自意識まみれの写真に嫌気がさして最近は撮ることも、生活も、おざなりにしていました。(そもそもプロと比べるのがおかしいのですが)
でも今回幡野さんの写真と文章を改めて見直したら、もう器の違いに腐っていないで、自分は自分で毎日真剣に生活に臨んで、心が動くときを撮り続けていこうと思えました。そしていつか幡野さんのような、積み上げた生活や人を慈しむ写真が撮れる人になりたいです。やっと自分が納得できる撮る理由が見つけられました。

返信いただけたのが嬉しく調子にのりました。しつこくすみません。本当はもっと感謝を伝えたいのですがきりがないのでひっこみます。これからも幡野さんの写真を楽しみにしています! 削除

2017/12/29(金) 午後 11:30 [ そのこ ] 返信する

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幡野さんの文章と写真に惹かれて、以前から拝見していました。
私にも1歳半の息子がいますが、息子が生まれてから自分の死について…死というよりかは息子との別れについてかも知れませんが、漠然と考えるようになりました。その時に思うのは悲しみでしかなくて…
でも、息子と一緒にどう生きて行くのか、なにを伝えていくのかを考えなくてはいけませんね。大切なことに気づかせていただき、ありがとうございます。
幡野さんのが撮られる息子さんの写真は、父親でないと撮れない写真ですね。息子さんの眼差しからそう感じます。これからも、幡野さんの文章と写真を楽しみにしております。 削除

2017/12/29(金) 午後 11:54 [ kanacco ] 返信する

はじめまして。私も20代でがんになりましたが医療の進歩で何年も生きられています。辛いことも多いと思いますが日々日々医療は進歩していますので、少しでも励みになればと投稿しました。ステージ4でもがんばっている山下弘子さんや35歳以下の若年性がん患者会STANDUP!!など読むと元気をもらえるのでよかったらネットで検索してみてくださいね。

2017/12/30(土) 午前 4:18 [ coo**c08 ] 返信する

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> そのこさん

全然しつこくないですよ、暇人なので助かります。

当然ながら僕も最初から写真が撮れた訳ではなく、人と比べて自己嫌悪したこともあります。人から笑われたり揶揄されることも多いです。
でも僕は他人からの悪意も自分自身からの悪意にも耳を貸さないようにしています。

今のそのこさんのように、自分のしたいことをした方がいいと気づけて今に至っています。
小さなことの積み重ねです、少しづつ少しづつでいいのだと思います。
疲れたら無理に写真を撮る必要はなくて少し休んでください。

写真に大切なことは好きな映画や音楽や本を読むことだったり、
日々の出来事やニュースに心を痛めたり、喜んだりすることです。

一番ダメなのは写真の撮り方的な本を読むことです。
これだけはやめましょう。

もしわからないことがあったり、僕で答えられそうなことがあったら生きてるうちにメールください。

2017/12/31(日) 午前 8:11 [ 幡野広志 ] 返信する

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> kanaccoさん
うちの子どもと同じ年齢ですね。
自分の死を思い、子どもに何を残すかと考えたとき、一番最初に思いつくのはお金だと思います。
確かに生活のためにお金は大切です、もちろん僕もその辺は手を打っていますが、一万円というのは当たり前ですが一万円の価値しかありません。
僕が残した一万円札を売り出したら10万円の価値がつく訳ではないです。

お金以外で自分にしか残せないものはなんだろうって考えると「自分の人生で得た、伝えたいこと。」に行き着きます。

僕は時間がないので一生懸命、少ない知恵を絞って考えていますがkanaccoさんはまだ時間があると思うので暇な時にでも考えてみてください。
結果それが子育てにも生きます。

2017/12/31(日) 午前 8:19 [ 幡野広志 ] 返信する

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> coo**c08さん

ありがとうございます。

iPhoneが発売されて10年、社会生活が進化したのと同様に医療はとてつもなく進歩しています。
希望を捨てずに頑張りますが、同時に最悪のケースも想定して動かねばなりません。
若年性がん患者会のこと調べてみます。ネットでなんでも調べられたり、同じ境遇の人と繋がりを持てたりするのも社会が進歩したおかげですね。

2017/12/31(日) 午前 8:23 [ 幡野広志 ] 返信する

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幡野広志さん
砂金正子です
番組を聞いていただきまして有難うございす。
幡野様にもお話をお伺いしたいと希望しています。
静岡の伊豆のラジオ局ですので、お近くまで録音機をお持ちいたしますので、ご都合の良い時をご連絡いただけると幸いです。
くれぐれもご無理のないように、ご自身の気持ちを最優先にお運びください。
マサコのオレンジタイムズ ラジオパーソナリティ 砂金正子
kamishibai135@icloud.com

2018/2/2(金) 午後 7:25 [ isa*o03* ] 返信する

> isa*o03*さん
大変申し訳ないのですが、現在スケジュールに余裕がなくご期待に添えそうもありません。
ご容赦ください。

2018/2/3(土) 午後 11:15 [ 幡野広志 ] 返信する

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砂金正子です
承知いたしました。どうぞお大事にしてください。ブログを楽しみにしています。 削除

2018/2/7(水) 午後 6:27 [ 砂金正子 ] 返信する

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「人生で大切なことは僕が教えたかった。」
に大きく心が動きました。

保育士をしています。
小さなお子さんを預かってますが、今、離婚しようとして居る親御さんがみえて、、幡野さんのこのお話を読んで欲しいと思いました。

このお言葉は忘れません
きっと事あるごとに思い出し噛み締め考え続けていきます。
ありがとうございます。 削除

2018/2/14(水) 午後 8:09 [ 菜穂子 ] 返信する

> 菜穂子さん

日本人の40%は離婚するそうです。
残りの60%が円満かというとそんなことはなく、子どものことを考えて離婚を止まっている家庭が機能不全状態も多いと予想されます。

夫婦仲の悪い環境で子どもが育つよりも、離婚して夫婦は解消しても親子の関係性を保つ方がいい場合もあります。

僕も離婚を考えたことはあります。
年に一度は考えます。

家族って不思議ですよね。

保育士さんだったんですね、尊敬します。
子育てをして保育士の凄さと素晴らしさを実感します。

2018/2/17(土) 午後 1:10 [ 幡野広志 ] 返信する

> 子どもの音色さん

大変な治療をされましたが、現在良好とのことでホッとしました。

医療ってすごいですよね、ひと昔前なら死んでしまうケースも助けることができる。
素晴らしいと思います。


多くの方から成功体験を教えてもらっています。
おそらくみんな希望をもってほしいと思ってのことでしょうが、実はこれちょっとだけ危険なんです。

病気というのはその人によって症例がまちまちなので、希望を与えようと良いことを言い、それが自分のケースに合わなかった場合、絶望に変わります。

そんなケースも取材して幾度と目にしました。

医師が希望を持たせないのはそういった理由だと思います。

でも、幸せなお話が聞けて良かったです。

2018/2/17(土) 午後 1:16 [ 幡野広志 ] 返信する

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はじめまして。最近になってRTで拝見する機会がふえツイートを読ませていただいております。
私も昨年祖母をがんでなくして、そのときに後悔していることがありました。
断食によるがん細胞の兵糧攻めです。toyokeizai.net/articles/-/144042
日本でも行っているところはありますが、ロシア、アメリカ、ドイツが断食療法で実践しています。

医療の進歩はすばらしく、けど完璧なものはないことは本当に実感していることですが、医学に無知の自分にはどうしても判断ができずまた試したこともないので言葉にするのは大変むずかしかったのですが、いまでもいわなかったことを後悔しています。
ツイートを一方的に拝見して、どのようながんなのかもわからないのでとてもまよっていたのですが、選択肢のひとつとしてあることをお伝えしたく勝手ながらコメントに乱筆失礼いたしました。 削除

2018/3/11(日) 午後 8:19 [ nano ] 返信する

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> nanoさん

よーーーく読んでください。
https://blogs.yahoo.co.jp/hiroshi_hatano1983/18788211.html

2018/3/12(月) 午後 7:28 [ 幡野広志 ] 返信する

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自分も2年前の33歳でガンになりました。
不妊治療中で子供はいなかったのですが妻の存在がガン治療の支えになりました。
今は抗がん剤の効果で腫瘍が落ち着いている状態です。
自分もガンがわかった時は涙が止まりませんでした。
今は日々医療が進歩しているので何か治療方が見つかることを心からお祈りしております。 削除

2018/3/16(金) 午前 6:58 [ NACK ] 返信する

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「人は死ぬんだ」と思いました。
勿論 落ち込みましましたが、
「ひとは、必ず100パーセント死ぬ」 その事に、気がついてからは 気になる事を片っ端からやってみました。楽しいです。
あれから、十年 。
あの日の事を 思い出させて頂きました。ありがとう💖 削除

2018/3/18(日) 午前 10:25 [ みかん ] 返信する

あなたに撃たれた動物達もとても痛かったでしょうね。あなたに親や子供を殺された動物達もいたでしょう。とてもいい趣味をお持ちでしたね。

2018/3/25(日) 午前 6:01 [ えりな ] 返信する

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きっと、幡野さんは、写真家という人生は運命だったのだと思います。神様が与えてくれた仕事、天職なのではないでしょうか。「皮肉なものだけど死と直面することで生きていることを実感する」とありましたが、私は5年ほど前に妻をガンでなくしました。私も、妻をなくしてから生きる意味をよく考えます。ガンにかかることは辛いことですが、その事で、周りの人が生きる意味をよく考えることができると思います。生きることの大切さを伝えることができると思います。

2018/3/25(日) 午後 6:34 [ ysk***** ] 返信する

初めまして。私は医学部に在籍している者です。

幡野さんの元のご職業柄「自業自得だ」などというコメントをされる方もいて、その言葉の残酷さに私まで心臓を掴まれたような気持ちがして思わずコメントをしております。
決して自業自得などということはありません。私だって明日ガンが発覚するかもしれませんし、コメントをした方々だって半分はいずれは何かしらのガンになると考えておくべき世の中なのです。ましてや幡野さんのガンと肉を食べることとの因果関係には、全く持って科学的根拠がありません。(あったからといって自業自得だと言うことはやはり出来ませんが)
幡野さんは心を強く持っていらっしゃるので大丈夫だとは思いますが、どうぞこんな言葉(とインチキ医学)は綺麗に忘れて、励ましの言葉と大切な方々との時間だけを大切になさってください。
月並みな言葉ではありますが、心より応援申し上げます。

2018/3/28(水) 午前 0:31 [ ゆらん ] 返信する

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「生きるってなんだろう」

私にとって「生きること」とは「家族、特に娘のために尽くすこと」です。

娘には、彼女らしい人生を、試行錯誤しつつも、生きて欲しい。理不尽な出来事に飲み込まれたり犠牲になったりせず、長寿を全うして可能な限りの幸せの瞬間を味わって欲しい。

私は、可能な限り、それを実現させるために生きています。 削除

2018/4/13(金) 午前 9:10 [ まゆ ] 返信する

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