幡野広志のブログ

写真家、猟師。 2018年3月 noteに移行しました、https://note.mu/hatanohiroshi

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13歳の誕生日。

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タケヒロくんは先天性の心臓病だ、最新の学会発表によると平均18歳までしか生きられない。

2月16日、彼は13歳になった。

心臓病の子どもは背があまり伸びないそうだ。
同年齢の平均身長より高い彼の体に血液を循環させるため、彼の心臓に負荷がかかる。
彼の寿命は学会発表を下回ることになるかもしれない。

「会いたい人が会いにきて欲しい。」

お母さんがプレゼントに何が欲しいか聞くと、13歳らしくない彼の答えが返ってきた。

精神年齢というのは環境で決まる。
余命3年の僕はまだ彼の見ている境地には達していない。
ポッと出の余命3年の人間と、生まれながらに死を意識してきた人間の違いだ。
彼は僕よりもずっと大人だ、自分の価値観を広めてくれる人間に実年齢は関係ない。

自分の話で恐縮だけど僕は3月1日が誕生日、もうすぐ35歳になる。
妻からプレゼントに何が欲しいか聞かれて、リュックと即答した1週間前の自分をタイムトラベルして殴り殺したい。

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そんな僕が彼にドラフト指名されて、彼に会いに神戸まで行ってきた。
彼は僕と余命対決がしたいそうだ。
勝者も敗者もいない対決だけど、13歳らしい発想に希望プレゼント対決でボロ負けした僕はホッとした。

ドラフト指名された映像作家のイシヅカ、ホームレスの小谷、末期ガンの幡野。
この3人の手綱を握るのが看護師の佐々木。

ホームレスと末期ガンというヤバい2人と映像作家と看護師というまともな2人の組み合わせで陰影あっていいかと思ったけど、「僕もヤバくなりたい。」と言って足を骨折させようとしている映像作家のイシヅカも立派にヤバい人だった。

看護師の佐々木は子どもの頃、自衛隊の駐在武官であった父の関係でイラクのバグダットに住んでいた経験がある。

当時イラク側で40万人の死者を出したイラン・イラク戦争の真っただ中だった。

バグダットで道端にころがる沢山の死体を目の当たりにした記憶を4年前、急に思い出した。
4年前、佐々木は離婚をした。
離婚から前向きに生きようと決心したことで、脳が意図的に忘れさせていた戦場の記憶を思い起こした。
前向きに生きる上で写真に撮っておきたいことが佐々木にはできた。

写真初心者の佐々木はカメラ講師を探し入門した。
その講師に数回の授業でカメラが3台購入できるぐらいの授業料を払わされて、ほとんど何も学んでいなかった。

いろいろ同情して500円で写真の撮り方と現像処理のコツを教えてあげた。
末期ガンが同情するくらい佐々木も立派にヤバい人だった。

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タクシーでタケヒロの家に向かう。
車内で盛り上がって、めっちゃ笑顔、ずっと笑顔。
運転手さんずっとこの表情、ゴメン。

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タケヒロくんと対面、というか対決。
イケてる側頭部はエグザイル的な刈り込みではなく、バルブ機能がついたチューブが頭部に埋まっている。

彼は生後6ヶ月の頃すでに2回の心臓手術を経験していた。
術後に看護師がベビーカーの操作を誤って、後頭部から床に落下させられてしまった。
心臓手術とは別に頭部手術をこれまでに6回経験した。

県を相手にした親子の医療訴訟は12年かかり、結審をした。
裁判という性質上、県は結審するまで金銭的な保証も謝罪もしなかった。

非を認めずに謝罪も保証もしない県と、それに疲弊する母親が子どもの目にどう映ったのだろうか。

脳にダメージを与えてしまったのが医療従事者でもあるけど、命の恩人で心の支えになっているのも医療従事者であるとも彼は言う。

彼の精神年齢の高さや寛容性はこの事故から培われたのかもしれない。

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タケヒロの家には東京から来たヤバい4人とは別の4人の男性がいた。

3人は関西で活動するバンド、JELLY BEANSさん。

全員がいじめや人間関係に悩み、小学生から不登校を経験していて、小学5年生で自殺未遂を起こしたメンバーもいる。

不登校時に出会ってるから、バンド結成すでに20年。
学校や福祉施設で自分たちの経験を活かして講演やライブをして、学校だけが世界でないことを知らせている。
生きることの苦しさを経験した彼らの歌は強くて優しい。
どれだけ、彼らの歌と経験に救われた子どもがいるだろうか。
不登校時に彼ら自身が出会いたかった大人になっているのだと思う。

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漫画「バガボンド」に出てくる佐々木小次郎のような雰囲気の男性は写真家の斎藤陽道さん。
彼は佐々木小次郎と同様、耳が聞こえない。
20歳までは補聴器を使って生活をしていたけど、現在は補聴器をつけていない。

補聴器を付けることで相手の声を聞くこともできるけど、同時に悪意ある言葉も耳にすることがある。
補聴器を外して筆談にすると、わざわざ筆談で悪意ある言葉を書く人はいないため、心が楽になったそうだ。
悪意にふれない環境にいたからこそ、耳が聞こえないぶん視覚で生きてきたからこそ、齋藤さんは美しい言葉を書き、優しい写真を撮る。

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はたから見れば社会的弱者でもあるけど、やりたいことをやって楽しく生きている大人達が集まった13歳の誕生日パーティー。
飲み会に1人いたら楽しいけど、パーティー参加者全員だとちょっとくどい大人たち。

タケヒロくんがこの大人たちを集めた理由はなんだろう?

それは彼自身が社会的弱者でありながら、やりたいことをやって楽しく生きようとしているからだと思う。

僕たちはタケヒロくんの人生のお手本になれただろうか?
タケヒロくんだけでなく、この記事を読んでいるちょっとだけ人生に悩んでる人のお役に立ててば嬉しい。

心臓病になっても、ホームレスになっても、離婚しても、不登校で自殺未遂しても、耳が聞こえなくても、末期ガンになっても、人生はそう悪いもんじゃない。

映像作家のイシヅカはここに加わりたくて足を骨折したがってた。

死にたくなるほど苦しい時もあった、でもいまは笑うほど楽しい。
また苦しい時がくると思う、でもまた楽しい時がくる、人生はそういうものだ。

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人の根底にあるのは優しさだと最近つくづく思う。
僕は知らない人からたくさんのメッセージをいただく、本当にありがとう。
優しさがいきすぎた、ありがた迷惑だったりすることもあるけど、根底にあるのは優しさだ。

人は悪意ある言葉を口にすることもあれば、ネットで悪意ある言葉を打ち込むこともある。
それが筆談になると悪意の言葉は綴らないように、僕のもとに届くメッセージに悪意ある言葉は一つも見当たらない。

人は弱い人間に対して悪意ある言葉なんか書きたくないのではないのだろうか?
悪意ある言葉を書いている人は、それは苦しい環境にいることへのSOSなのではないだろうか。

今回、東京から向かう僕たちの旅費をクラウドファンディングで募った。
目標金額が8万円に対して、数時間で上限の30万円に達して打ち切りとなった。

こちらが支払った人を把握できないシステムで、物質的なリターンもない募金に近いものにも関わらず、多くの人がお金を出資してくれた。
充分すぎるほど集まってしまったので丁重にお断りしたけど、打ち切り後もメッセージで振込先を聞いてきてくれた方が何人もいた。

旅費としては充分すぎるので、余ったお金はタケヒロくんがこれから会いたい人に会えるための資金としてプールすることにした。

本当にありがとうございます、みんなの気持ちを代表してお礼を申し上げます。
きっと皆さん天国にいけます。

13歳の誕生日に多くの見知らぬ大人からの優しさが、何よりの誕生日プレゼントになったと思います。
この経験が彼と誕生日パーティーに参加したヤバい大人たちにとって大きな成長になると思います。
僕とタケヒロくんは成長しても、あと少しで死んじゃうけど。

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タケヒロくんのお母さんの善意で僕だけグリーン車を使わせていただきました、疲労度が全然違うから寿命が延びたと思う。
神戸に宿泊したホームレス小谷と看護師佐々木と僕の3人は自腹に少し上乗せしてちょっとだけホテルをグレードアップさせてもらいました。

神戸ロケでいつも見かけて、いつか泊まってみたいホテルだったのでいい冥土の土産ができました。

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綺麗な写真ですね。 また投稿楽しみにしてます。

2018/2/26(月) 午後 7:42 [ zoh*1s ] 返信する

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砂金正子です
タケヒロ君のお誕生日の報告ありがとうございました。
みなさんの楽しそうなお顔と運転手さんお渋そうな顔の写真が印象的でした。
昨年の12月のブログから拝見していて、狩猟にい出かけたり、スクーターに乗ったり、新幹線で神戸までお出かけになられたりと、がんと診断されても、普通の人と同じようにいられることを希望されている方にとって、とても心強いブログだと感じました。
ブログ楽しみにしています。

2018/2/26(月) 午後 7:55 [ mas***** ] 返信する

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誕生日をお祝いする。ということは素晴らしいことだったんだと気づきました。
父や母や弟、妻や長女や次女の、そして何より自分の誕生日をお祝いしたい気持ちになりました。
ありがとうございます。 削除

2018/2/26(月) 午後 10:26 [ 西脇 ] 返信する

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まっすぐな言葉で、タケヒロくんのお誕生日パーティの模様をシェアして下さって、ありがとうございます。クラウドファンディングでお手伝いしたかったですが、うまく行きませんでした、残念。
「人の根底にあるのは優しさだと思う」と幡野さんが言い切っておられることに、胸が熱くなり、勇気を頂いたような気持ちになります。 削除

2018/2/26(月) 午後 10:51 [ まほこ ] 返信する

パーティ参加者の皆さんの表情が、とにかく生き生きとしていて、素晴らしいですね^_^
タケヒロ君にとって、素晴らしい誕生日だったでしょうね。
ありがとうございます。

2018/2/26(月) 午後 11:30 だいくみや 返信する

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お誕生日おめでとうございます。
糸井重里さんのブログからリンクしてきました。今回の記事に心を揺さぶられました。タケヒロ君とお母さまとドラフト指名された八名の方々の路上横一直線の
写真はよかったです。勇気と優しさと覚悟があふれているようです。 削除

2018/3/1(木) 午前 11:20 [ かみひこうき ] 返信する

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お誕生日おめでとうございます。
糸井重里さんのブログからリンクしてきました。今回の記事に心を揺さぶられました。タケヒロ君とお母さまとドラフト指名された八名の方々の路上横一直線の
写真はよかったです。勇気と優しさと覚悟があふれているようです。 削除

2018/3/1(木) 午前 11:20 [ かみひこうき ] 返信する

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> zoh*1sさん
ありがとうございます。
書くのが遅いのですが、楽しみにしていてください。

2018/3/1(木) 午前 11:52 [ 幡野広志 ] 返信する

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> mas*****さん
ありがとうございます。
なるべく日常生活を保とうとはしていますが、体力の低下が否めなく今まで通りというわけには行きません。
それでもゆっくり日常を過ごそうかと思っています。

2018/3/1(木) 午前 11:53 [ 幡野広志 ] 返信する

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> 西脇さん
誕生日を迎えたことで成長や生きていることを祝うって素敵なことですねよ。

2018/3/1(木) 午前 11:55 [ 幡野広志 ] 返信する

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> まほこさん

支援のお気持ありがとうございます、とても幸せです。
人は優しいですよ、本来優しくても環境や生活によって鈍ってしまうのだと感じます。
人に優しくなることで、自分も優しさを享受できる。そう思います。

2018/3/1(木) 午前 11:58 [ 幡野広志 ] 返信する

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> だいくみやさん

ありがとうございます。
楽しかったです、生きるって素晴らしいです。
死にたくなるときもあるけど、生きていて良かったと感じます。

2018/3/1(木) 午前 11:59 [ 幡野広志 ] 返信する

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> かみひこうきさん
ありがとうございます。
「霧島部活やめるってよ。」に出てくる映画部の子のようなポジションです。
もしまだ観ていなかったらぜひ。

流行や周囲の人間関係に流されず、自分の生きたいことをやる。
そんなメンバーが集まったような気がします。

2018/3/1(木) 午後 0:04 [ 幡野広志 ] 返信する

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