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<まえおき>
先日、とある専門誌から中古楽器についてのアンケートを頂いた。
最近、中古店やインターネットなどで太鼓を購入するケースが増えて来ているそうだ。
それについてどう思うか、ということである。… 私の回答は、こうだ。
■インターネットでの購入…絶対にやめた方が良い。
◇理由…現物を見ない限り信用出来ない。(返品の制度とか色々あるにしてもトラブルの元) ■中古店での購入…基本的にやめた方が良い。
◇理由…太鼓の場合、一般ユーザーが保管方法、メンテナンス方法を知らなさすぎる。 →中古にはロクなものが無い。
断っておくが私は基本的に中古店(?…中古の専門店などが存在することも知らなかったが)やインターネットで楽器や関連グッズ(台、桴、ケースなど)を購入したことが無い。 なのでそれを踏まえての回答だ。 すると、この2番目の回答「一般ユーザーが保管方法、メンテナンス方法を知らなさすぎる」に関して、もっと掘り下げて質問したいとのことで、雑誌編集部からお電話を頂いたのだが、あいにくタイミングが悪く、後日メールで返答した。
今回はその概要と、さらに加筆して私の想いを述べたいと思う。 --------------------------------------------------------------------------------------------さて本題。
これまでずっと肌で感じてきた私の個人的意見。 世の中では、太鼓そのものが基本的に「楽器」であることを認識されていないとしか思えない。
まるで舞台で使われる「道具」のように扱われている現場を、これまで数多く目撃している。 もっと端的に言ってしまうと、「太鼓の扱い方・扱われ方」そのものの現状があまりに酷すぎる。
例えば。… いつ雨が降ってもおかしくない状況下での野外演奏(の強要)。
ケースから出した剥き身の状態での運搬。
野外や悪条件下での演奏までの長時間放置。
現場スタッフが奏者に断りもなく太鼓を勝手に(手荒な扱いで)移動・運搬する光景。
先端がささくれ、ひび割れたボロボロの桴で、平気で全力で叩いている奏者の光景。
…他にも、例を挙げたら枚挙に暇がない。
驚くことにこれらのことは特殊な例ではなく、プロ・アマ問わず太鼓の演奏現場でたびたび目撃する「お馴染みの光景」なのだ。
…でも考えてみて欲しい。 上記の例を「三味線」、「箏」、「尺八」などに置き換えてみたら…
考えただけでもゾッとする。
普通は、あり得ない。 国内外での演奏ツアーで、太鼓以外の邦楽器奏者ともご一緒する機会が多いが、みなさん同様にまず楽器の扱われ方に細心の注意を払われている。
我々奏者=ミュージシャンは、「楽器が無ければただの人」なのだから、楽器こそがアイデンティティーであり、「命」なのだ。 考えてみれば至極当然のことである。 ではどうして太鼓だけが「格下扱い」をされるのだろうか? 太鼓は打楽器なので、他の楽器と違って「打つ」ことに特化された楽器である。
特に日本の太鼓文化(いわゆる和太鼓)は、そのパフォーマンス性が重視されることが多いためか、「全力」「マックス」「フルパワー」で打たれるケースが主流だ。 その特殊ともいえる演奏形態のイメージから、どうしても他の楽器より「頑丈」なイメージがあるために、多少乱雑に扱われても「大丈夫だろう」と思われてしまうのかもしれない。…
しかし、もうそろそろ我々太鼓打ち側こそ、しっかりと自覚を持つべきではないだろうか。 プロ・アマ問わず、我々太鼓打ちは「奏者」「演奏家」などと名乗りたいのであれば、その命とも言える「楽器」を大切に扱わなくてどうするのだ?
今まで太鼓を無意識のうちに「楽器」としてではなく「道具」「消耗品」として扱っていたのではないか?
太鼓メーカーサイドにも、ひとこと言いたい。
太鼓そのものの製品クオリティーは相変わらず素晴らしいのに、販売した楽器に対する保管法や扱われ方、メンテナンスに対して、あまりに無頓着ではないか。
例えば、太鼓の胴は木製。しかも希少な素材も多い。
打面は牛や馬の本革。
この極めてデリケートな素材を使用した高価な楽器に、専用ケースやメンテナンス用品が必須であることは明白。
扱いや手入れが悪いと、高級伝統工芸品でもある太鼓はたちまちただの「古道具」と化してしまう。
しかし、それらメンテナンス用品などの取り揃えが充実している太鼓メーカーは、存在するだろうか?
例えば「太鼓胴専用のクリーナー」や「太鼓革専用保護クリーム」など、私の知る限りでは存在しない。 しかし、これらはあって然るべきではないだろうか?(早く作って下さい!) で、メーカー推奨の保管方法はというと、相も変わらず「風通しの良いところで陰干し」と。…
もう今時、何を寝ぼけたことを言ってるのだろうか?
そんな恵まれた保管場所が、都内にどれだけあるのだ?
毎日楽器と共に車移動する我々プロ奏者は、一体いつ「風通しの良いところで陰干し」すれば良いのだ?
実際に使用されている現場の現状を、まるでリサーチしていないのがこれでよくわかる。
例えばケース内に入れておく「湿気調整材」など、三味線用のものはとっくの昔に存在するというのに。
ケース一つとっても、現場での使い勝手や使用状況などによってソフトケースやハードケース、フライトケースなど各種取り揃えて欲しいものだ。
さらに、購入する身としては、実際にあれこれ現物を手にしながら検討したいもの。
しかし、店舗に現物が無いのだ。
基本、カタログ写真を見ながらのオーダーメイド。… (ドラムを扱う楽器店などは、常に各種取り揃えているので非常にイメージしやすい)
で、後日出来てきたものに満足するかというと、多少の食い違いがあったり…
でも作り直すには時間が無いし、メーカーさんも気の毒なので諦めてそれを使う(これ、けっこう多いパターン)。
また、ファイバーケースなどはそのまま注文すると、基本的に内側にクッション材すら付いていない。
デリケートな楽器であるのに、これもまったく信じられない。
この固くて薄いペラペラ素材のケースに入れられた太鼓が、運搬中の車内でゴトゴトと揺れ動けばケース内の太鼓はどうなるか?
たちまち、打面や縁が痛んでしまうことは誰でも想像出来る。
こんなケースなら、コスト的にも毛布で包んだだけの方がはるかにましだ。
これでは、前述したネット販売と一緒ではないか?
また、仕事内容によっては大人数での演奏を求められることもあるので、その人数分の太鼓をレンタルすることも少なくないが、ここでも信じられない光景を目にする。 現場に届くレンタル太鼓は、ケースにも入れられずに、剥き身でトラックの荷台に直(じか)置きされている。 太鼓の命である皮面を、土足の地面に直接ベタ置きなのだ!
また運搬業者も、まるで梱包された荷物でも運ぶかのように皮面をズルズルと引き摺り(見ているこちらは鳥肌&冷や汗状態…)、打面の縁とかガンガンぶつけながら「ここでいいですか?」と無造作に運び込む。
現場のスタッフは、いつもこの状況を見ているわけだ。
なるほど、我々の大切な楽器が手荒に扱われる原因が、実はこういうところにもあったと。… この「剥き身状態のレンタル太鼓」というのは、現場での扱いが非常に厄介だ。
汚したり傷つけたりするわけにもいかないが、このままでは確実に傷と汚れが付いてしまう。
先日などは仕方なく、現場で段ボールとガムテープで「急ごしらえケース」を自作するハメとなった。…
ちなみに私の場合、楽器はケースに入っていない限り、現場スタッフには指一本触れさせない。 ケースから太鼓を出すことも厳禁だ。 (まあ、他ジャンルのミュージシャンから言わせれば「当たり前」のことなのだが…)
太鼓の胴も皮も、素材は年々希少価値となり、値段も高騰していると聞く。
「太鼓を大切に扱い、扱われること」を、そろそろ真剣に考えるべきではないだろうか? 中古楽器について話をまとめる。 中古楽器を購入することは悪いことではない。
むしろ、気軽に太鼓が個人レベルで購入出来る(それでも高いが…)世の中になってきたことは、単純に喜ぶべきことだ。 しかし、まずは「太鼓=楽器」であるという認識と自覚。
太鼓そのものに対する「感謝の気持ち」と、それを作った職人さんの伝統技術への「畏敬の念」。 これら「音楽家としてあたりまえの基本概念」を、我々太鼓打ちも、改めて自覚するべきだ。
そういう気持ちや心がけが太鼓業界にとどまらず世間にしっかりと根付けば、中古楽器もある程度安心して購入出来る日が来るのではないか。
かつて私は「太鼓は『スポーツ』『音楽』『パフォーマンス』の3つの要素が同時に楽しめる世界に誇れる総合エンタテインメントである」と提唱してきた。 次々に出現する昨今の新興太鼓グループの隆盛を鑑みれば、それも既に「前時代」的な使い古されたキャッチコピーである。
太鼓は、まず音楽であること。 そして、あくまでもその「付加価値」として様々な要素(フィジカル的肉体芸術表現、ダンス表現、パフォーマンス表現など)を含む「可能性」があるということ。 ここを間違えると、いつまでたっても太鼓が楽器としてでなく、パフォーマンスのための「道具」とされてしまうのだ。
2012.4.24記 ☆追記
中国製の太鼓について一言。
国内製の中古の方が、はるかにマシ。
あれは「太鼓の形をしたハリボテ」だよ。
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運搬の時や、撤収時に乱暴な扱いをよく目にします。
自分の関わる団体だけでも「楽器」のいたわり方を
広めていけたらと、思っています。
2012/4/24(火) 午後 2:26 [ WASABI ]
私の場合、基本的に自分の体で?#92;現するダンサーなので専門的なことはわかりませんが、幼少期に和太鼓をちょびっと習っていた経験と、アラブ音楽で使用する他ブラやドフを考えれば、その日の天候や室内の湿度でも音が変わってしまうデリケートな太鼓。
ましてや、演奏家の方が使用するものは高価であるのはさることながら、音楽を奏でる主役ですからね☆
たまにご一緒するタブラ奏者の方も自分以外の人には触らせてませんでした。
デリケートですからね( _
2012/4/24(火) 午後 6:56 [ 愛海 ]
>WASABIさん
そうですね。
とにかくまずは、私達が行動で示していくしかないですね。
でも太鼓団体が混在するイベントなどは、それぞれ楽器に対する扱い方が異なるので、油断は出来ませんね…。
2012/4/25(水) 午前 0:33
>愛海さん
そうなんです。
同じ日本の打楽器でも、鼓や大皷などは慎重に扱われてますけどね。…
もしかしたら単に「個人で使用されるもの」と「団体で使用されるもの」の認識の差かも知れません。
2012/4/25(水) 午前 0:45