Cure Metal Nite Vol.1<ライブ裏話>
〜太鼓打ち編〜
8月23日&24日に行なわれた高梨康治プレゼンス「キュアメタルナイトVol.1」@表参道Ground。
自分用の記録の意味も含め、ここでは「太鼓打ち目線」「ミュージシャン目線」での裏話や苦労話をこっそり披露したいと思う。
★リハーサル前準備
まず、今回演奏する予定の楽曲の音源がデータで送られてくる。
そして順次、譜面が送られてくる。
私は今回の楽曲の内、「NARUTO疾風伝メインテーマ」と「PRIDEメインテーマ」以外のすべての曲に関わっていない。
ライブでステージ上に譜面台を立てることはよくあるが、ロック、メタルの場合「譜面台は立てずに暗譜」が私の美学である。
そして今回は譜面でも手を焼いた。
これはミュージシャンによって好みの問題かもしれないが、表記方法によって読みやすい譜面と読みづらい譜面がある。
今回の譜面は申し訳ないが後者。
リハーサルとはいえ、譜面を目で追って太鼓を打ちつつページをめくるのは極めて困難。
そのため、3枚にも4枚にも及ぶ長〜い譜面を渡されると、リハの効率が悪い。
今回の楽曲は短い劇伴BGMが多いので、リピートやダルセーニョ、1カッコ2カッコなどを使って上手く整理すれば、長くても2枚で収まる。
そこで、全23曲の譜面をすべて自分で見やすい様に書き直すことから始めた。
そして譜面が出来たら今度はこれら楽曲に対して太鼓をどうあてるか?
つまりアレンジ作業。
高梨にリクエストを尋ねるといつも「ヒロシの好きなようにやって」としか言わないのは判っている。
まあ、それだけ信頼されているということだろう。
日記の方でも触れたが、今回一番気を配った点は、原曲のイメージを絶対に壊さないこと。
このキュアメタル楽曲をこよなく愛するファンが一堂に集まるのだ。
太鼓が加わったことで、曲のイメージが変わりファンをガッカリさせてはいけない。
太鼓って安易に洋楽とコラボすると、曲が「ずんずんどっこい」「えんやーとっと」になって物凄くダサくなる。
慎重にフレーズを選ばないと、ロックですらなくなる。
かといってパーカッションの代わりのようなフレーズでは、太鼓の意味がない。
理想は太鼓が加わったことによって「足りなかったピースがしっくりハマった」ようなイメージ。
それには、尚ひたすら原曲を聴き込み、曲のイメージを理解し、ファンと同じく曲を愛さなくてはならない。
ROCKに於ける太鼓フレージングの第一人者を自負する私の、本領発揮というわけだ!!
★リハーサル
リハーサルは毎回、混乱を極めた。
まず、楽器隊の顔触れが「初の組み合わせ」であること。
メンバー各々(高梨&健至&私、高梨&庄太郎、庄太郎&PON、高梨&渡辺氏)は一緒に仕事したことがあるので「初顔合わせ」ではないのだが、この顔ぶれでの組み合わせは初めてだったのだ。
楽曲数が多いため、スケジュールが忙しいメンバーなどはリハまでにすべての曲を予習出来ていなかったり…
一部の音源や譜面が私含め一部のメンバーに届いていなかったり…
曲のタイトルが似通っている上に音源と譜面のタイトルが一部一致していないためにどれがどの曲なのか混乱したり…
尚且つ、リハ中は各セクションがそれぞれ勝手に音出すわ、そこかしこで会話が交錯するわで、いつまで経っても先へ進まない。
しばらくは黙って現状を眺めていたのだが、ここは高梨に檄を飛ばし、リーダーとしての「舵取り」をしっかり任せ、私は曲の内容について細かいチェックをする役目を担うことにした。
★ゲネプロから本番を迎えるまでのコンディション
本番直前の8月19日〜21日の3日間、スタジオをロックアウトして集中リハ&ゲネプロを行った。
先述のように「混乱を極めた」リハーサルだったため、練習の反復回数(太鼓を打っている実働時間)が予想をはるかに上回ることになった。
しかも曲はすべてメタル。
手数は多いし、テンポは速い。音もデカイ。
リハ3日目にはすべての指はパンパンに腫れあがり、指の骨は痛み、頸椎は固まり、腰椎はこわばり、身体中の関節が軋む。
(ジムでのトレーニングをかなり積んだため、筋肉痛だけはなし。)
本番前日の22日はオフを取り、身体中の痛む箇所を電気治療・鍼・マッサージのフルコースでメンテナンスしたが、正直もうあと1日オフが欲しいと思った。
本番当日は「本当にこのコンディションで演奏が出来るのだろうか?」というのが本音だった。
まあ、いつものことだが。
ただ、実は3日間の集中リハでも曲が全然まとまっていなかったため、本番当日のリハーサルも本番通りの流れで全曲通して確認を行なう必要があったのだ。
つまりは1日に2ステージ分やったということ。
(2日目も全曲通しリハだったので、通算4ステージ分やったのだ!!)
さらに、その本番直前のリハで、ミスによって曲が途中で止まるというまさかの事態!!ここへ来てまだ仕上がって無い(-"-)!!
したがって常に他のメンバーのミスの心配をしながらの演奏だったため、本番中も自分の演奏に集中出来ない、そのもどかしさたるや筆舌に尽くし難く…。
プロならちゃんと覚えてくれよな〜…(あ、ごめん。でも本音)。
★チューニング
今回のチューニングは、高梨曲をスタジオレコーディングする時のいつもの基本チューニング。
左の締太鼓高い方からE、C、桶胴がG、E、スネア桶太鼓はA(丸一はチューニング不可能)。
ここでひとつ問題が発生。
今回は極めて限られた狭いスペース内に太鼓セットを無理やり押し並べ、その周辺にアンプやスピーカーが取り囲んでいる。
しかもコンタクトマイク(SHURE BETA 98D)を太鼓の皮に直接取り付けたので、舞台上を一度セッティングしたら、太鼓のチューニング直しが一切きかない。
太鼓を台から取り外すスペースさえないのだ。
しかも、今回は太鼓&ドラムのバトルで、あの「1812」をやって欲しいと高梨からの熱烈なリクエストがあった。
これをやるには、さらに4本柱の櫓太鼓「白虎〜White Tiger〜」が必要になる。
(写真右端に聳え立つ太鼓が「白虎〜White Tiger〜」。)
合計、7点セット。
スタッフからは「かなり狭い」「置けないと思う」「厳しい」などの意見が飛び交ったが、置くしかないのだ!
これを置かないと太鼓vsドラムバトルがざっくりカットになってしまうのだ!
あの練習が無駄になってしまうのだ!!
通常私は、リハーサルや公演ごとに毎回太鼓を締め上げてチューニングし、使用後には皮を緩める。
連続公演の時はそのままにすることもあるが、その場合も翌日は増し締めするなど微調整が必要。
しかし今回は一度締めたら公演終了まで締めっぱなし。
結果、観客の熱気と雨天のために2日目は桶太鼓の皮が蒸れてしまったが、今回はそれも良しとして受け入れ、急遽フレーズをアドリブで変えて対応した。
(適度に倍音がミュートされてツーバス連打との相性はかえって良くなったかも?)
太鼓打ち諸氏なら判ると思うが、皮が湿気でイレギュラーにダブついた太鼓の音を十分に鳴らすのは、相当シンドい。
熟練の「技」と「力」と「術」のすべてが必要となるのだ。
★セッティング
セッティングも、これがまた困難を極めた。
ゲネプロでのセッティングでは、このように白虎〜White Tiger〜台の中にモニタースピーカーを収めたが、本番の現場ではステージ脇の階段を埋めてフラットにしてもらったため多少スペースが確保できたので、白虎〜White Tiger〜のセッティング位置が微妙に変わった。
そこでイヤモニのミキサーを白虎〜White Tiger〜の中に収め、ウエッジスピーカーは背後のわずかなスペースに設置した。
もう狭すぎてテトリス状態(苦笑)。
今回のライブで唯一残念だったことは、自慢の太鼓セット「青龍〜Blue Dragon〜」が2台のマーシャルの奥に隠れてその全貌がほとんど見えなかったこと。
これでもし白虎〜White Tiger〜が無かったら、私の見た目は「アンプの奥で棒2本振ってパフォーマンスしているマッチョな変なおじさん」になってたことだろう。
ちなみに、ちゃんと見えればこう↓
※参考画像(このセットは朱雀〜Red Phoenix〜&白虎〜White Tiger〜)
★音響(モニター)周り
上の写真でもわかるように、今回はウエッジスピーカーとイヤモニをダブルスタンバイしてもらった。
滅多にないが、激しいアクションで太鼓を打っていると曲中にイヤモニがすっぽ抜けることがある。
今回は同期も回しているので、クリックが聞こえなくなったらアウト!
その保険のためというわけだ。
ウエッジスピーカーからクリックは(お客さんにモロ聞こえするため)流せないが、ドラムのPONもイヤモニでクリックを聴いているので、どちらかがクリック頼りにガイドになっていれば大丈夫。
ウエッジスピーカーからは同期とドラムの音を大き目に出し、イヤモニでは同期とギターとクリックを中心に返してもらいバランスを取った。
★本番でのパフォーマンス
私の「茂戸藤流太鼓術」には、必要以上に腕を大きく振り挙げなくても、脱力した状態で極めて短いストロークで大きな音を出す奏法がある。
「省エネ奏法」「エコ打法」とでも言おうか。
空手でいう寸勁(すんけい)、ブルース・リーの「ワンインチパンチ」と似たニュアンスかもしれない。
長時間打ち続けるレコーディングの時などは、常にこの打術を用いて演奏している。
他の楽器とのデュオやインプロヴィゼーション系バンドなどに於いても、相手の音に対してクイックなレスポンスが可能なのでこの奏法を用いる事が多い。
しかし、ロックバンド、メタルバンドに於いての「茂戸藤流ROCK太鼓打法」は、腕を大きく振り挙げ、腕と桴先が空中に描く「軌道」に重きを置く。
かなりオーバーアクション。
つまり、少々燃費が悪い。
しかし!
「ロックは見た目が大事だ」
と、私の心の師匠コージー・パウエルも仰っている。
打つサマを美しくカッコよく魅せてナンボであるのだ!
HOT ROD KIXXS’でのプレイはまさにこの打法だが、いつもは長くて40分。
最長でも1時間程度。
今回のキュアメタルナイトのプログラム全曲メタル。
バラードやアコースティックなどの休みもなし。
トータル2時間越え×2Days(リハ含め4ステージ)!!
今思うと、リハの時はこれ(ROCK太鼓打法)でやらなければ良かったのだが、やはりメタルサウンドを聴くとついつい血が湧いて…。
★おまけ:アドレナリンのスイッチ
これは医学的・科学的根拠が全くない話なので、特に本気にしないで読み流して頂きたい。
私は長い太鼓打ち生活の中で、本番前にアドレナリンをコントロールする方法を身に付けた。
脳内にアドレナリンが出ると、「気が狂ったようにエキサイトしていると同時に、極めて冷静でコンマ数秒単位の瞬時の判断が出来る」という「無敵状態」になることが出来る。
初日は本番までのバタバタでこれを忘れたため、相当無駄な体力を消費した。
前半はミスショットや個人的アクシデントもあった。
2日目の公演はステージに上がってからこれを思い出して実行し、とても冷静で穏やかな気分でいながらクレイジーになることが出来た。
もちろん、身体の痛みも全然感じない。
一流スポーツ選手などもそれぞれ独自のスイッチの入れ方があるそうだが、私の場合は両手で桴を2本揃えて持ち、胸の前に立てて桴先を眉間に当て、ある言葉をぶつぶつと唱える(何を言ってるかは内緒)。
これは大江戸助六太鼓時代に身に付けた方法。
あの時代、いくつもの修羅場をくぐってきたからなぁ…。
以上、キュアメタルナイト裏話<太鼓打ち編>でした。
太鼓打ち諸氏の参考になれば幸いです。(ならないか…)
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
「忝い。」
茂戸藤浩司