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「太鼓術」から少し離れるかも知れないが、今回は「NARUTO疾風伝」などTVや映画などの劇伴音楽で聴かれる、あの「掛け声」の作業手順を紹介しよう。
多くの人が、あれは「声の素材」をサンプリングして箇所箇所に貼り付けてるだけだと思ってるらしい。
曲によってはバリ島の「ケチャ」のように16分音符刻みでL⇔Rで楽器のように掛け合っているため、そう思うのかもしれない。 ところが実は、いつも非常にアナログな方法で録音しているのだ。
まず、予め「掛け声隊」を何人にするか設定する。
その曲調や、イメージ、録音に要する時間(=制作予算)などを考慮し、最低6人〜12人くらいで編成する。 次に、掛け声の譜割りアレンジ。
つまり、曲のどの部分の何拍目に、何という歌詞(台詞)で「叫ぶ」かの譜面を書いていく。 この作業がかなり重要で、このタイミングを変な所に入れてしまうと物凄く田舎臭い、だっさい曲に仕上がってしまうのだ。 大抵の曲はユニゾンで3人〜6人で重ねることが多いが、ワザを使った特殊な例としては、冒頭で書いたようにL⇔Rで「掛け声」が細かく交互に掛け合うケースもある(最近、このパターンが増えている)。
さらにL⇔センター⇔Rの3パートで掛け合うなどもあり。
この「掛け合いアレンジ」で難しいのは、各パートの台詞決め。
「左」「中央」「右」の3つの掛け声隊チームが入り混じった時にどう聴こえるか?
これをトータルで考えないと、あとでおかしなことになってくる。 例えば何も考えずに左チームに「ダ!」、右に「セイ!」と言わせると、思いっ切り力を込めて「ダッセー!!」と言ってるように聞こえてしまうのだ。
あと「セイ!」と「ドッコイ!」でタイミングがカブると「セコイ」って聞こえてしまったり。 さらには、語尾の母音があまりカブらない様にしたり、敢えて同系統に揃えたりなど、掛け合って入り混じった時に絶妙に組み合わさるように、細心の注意を払ってアレンジ譜を書いていくのだ。
そしていよいよ録音。
「掛け声隊のみなさん」にレコーディング・ブースに入ってもらい、ヘッドホンをして録音開始だ。 もちろん、この「掛け声隊のみなさん」とは、全員私一人である。
一人分ずつ録音を重ねいき、「人数感」を出していくのだ。
(その日ごとに「6人ヒロシ」だったり「10人ヒロシ」だったり「掛け声隊」の呼び名が替わるのは現場での裏話。) 曲のアタマからヘッドホンで聴き、譜面を見ながら、計算された随所のタイミングで「ソイヤ!」「ハ!」「オリャ!」などの歌詞通りの掛け声を、ひたすら録音し、重ねていくのだ。
この時に注意が必要なのは、何も考えずに同じトーンで重ねていくだけだと、「人数感」が出ないこと。
例え10回重ねても、同じように声を発してしまうと重ねて聴いた時に、一人の声がディレイしてボヤけて聴こえるだけなのだ。 なので、譜面を書き上げた後で各パート一人ずつ「キャラクター配分」をしていくのだ。
例えば「6人ヒロシ」の場合。
☆Aチームのメンバー:
1)「気合あり、リズミカル、高い声」な人 2)「爽やか系、発音良し、中音域」な人 3)「柄悪い、ルーズで巻き舌、ダミ声」な人 Bチームのメンバー:
4)「十代の小僧、適当、甲高い声」な人 5)「気合い&元気、本職、中程度の声」な人 6)「控えめで暗い、やる気なし、低い声」な人 これらのキャラクターを一回一回演じながら、録音していくのだ。
(信じられないようだが、実際に譜面の各パートに「気合、巻き舌、高音」など書き込んである。) 人数が多い時は、このキャラ設定を各パートで「高い」「中くらい」「低い」を入れ替えたりするのだ。 そしてもう一つ注意。
いかに私の声帯が長年鍛えられた強靭さを持っていようとも、一人で6人〜12人分を重ねるとなると、声のコンディションを最後までキープすることは難しい。 カラオケで歌うのと違って、常に「叫び声」に近い声を出しているためだ。 なので、各チームの「高音の人」から順に録っていく。
最後は計算通り、良い具合に「ドスの利いた声」に仕上がっているというわけだ。 (そういえば先日、長時間太鼓のレコーディングをし終えた後、時計が深夜2時を回った頃に「掛け声」の録音を始めたことがあった。最後の6人目のテイクを録り終え、「お疲れさまでした〜」と言ったその声は、椿鬼奴のようであった。) このような作業手順で、あの「掛け声」が完成するわけだ。
これだけの想いを込めて作っているのだから、単に「掛け声」などと呼びたくないのが正直なところだ。
何かオリジナルのいいネーミングを考えるとしよう。 あ、どなたか、いいネーミングを付けて下さい!
「和ケチャ」とか「和ラップ」とか「和ボイパ」とかじゃなくてね。…(^_^;)
茂戸藤浩司
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