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岩石

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高松塚古墳の赤色顔料

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高松塚古墳の床石に赤色顔料

昨日のテレビで、現在石室解体中の高松塚古墳のニュースが流れました。本日6月22日の朝日新聞朝刊の33面にも写真入

りの記事が掲載されています。それによると南壁が置かれていた床面に3点の古代の赤色顔料が見つかったとのことです。

築造の時に壁画を描くための赤色顔料をこぼしたとのこことです。かつての分析で、この赤色顔料は硫化水銀(水銀朱)とベ

ンガラ(酸化第2鉄)の2種類であることがわかっています。また方位を示す朱雀が見つかっていないことから、それに使わ

れた可能性もあるとのことです。

今回のように今後の調査によって、さまざまな事実がわかってくるものと思います。

どこの石材か

今回の報道で、私の関心はもっぱらどこの石材を使っているのか、ということでした。二上山のものであるのは、すでにわか

っているのですが、問題は二上山のどの石切場の石材か、ということです。それでいくつかのニュースの画面で出る映像を必

死で見ていました。

考古学では、よく二上山白色凝灰岩という表現をしますが、それ自体間違いではないのですが、非常に大雑把なくくり方で

す。

図は奥田尚先生の「鉱産資源の採取と加工」1996年に掲げられた図に加筆したものです。

図を見てわかりますように、一口に二上山白色凝灰岩といっても、北側から見て田尻峠北にある穴虫、田尻峠西側にあるドン

ズルボー西方、それから南下って牡丹洞、その東にある牡丹洞東方(加筆部分)、そこから南東に下って鹿谷寺跡北方、その

東にある岩屋峠西方など6ヶ所が確認されています。これらの石切場よりは小規模ですが穴虫の石切場から東にある高山の石

切場(図にありません)を加えると7ヶ所が確認され、それぞれの石材には際だった特徴があり、区分が可能です。

火砕流が堆積してできた凝灰岩のような岩石では、含まれている岩石片や鉱物が平均的に一律に分布しているのではないの

で、石材の前面を細かく観察しないとわかりません。ましてやテレビなどの映像では、決めがたいものです。

これまで見てきた印象から言いますと、牡丹洞東方の石材の可能性が高いのではないか、ということです。

写真は牡丹洞東方の石材です。基質が白色〜淡黄土色、黒色の亜円礫を大量に含んでいます。この黒色の岩石をこれまでは、

松脂岩としていましたが、近年の研究では流紋岩質溶結凝灰岩とされています。そして灰色の流紋岩亜円〜円礫を含み、白色

の軽石を多量に含んでいます。

この岩石は、下部ドンズルボー層中に含まれる流紋岩質火山礫凝灰岩〜流紋岩質凝灰角礫岩です。

高松塚古墳の石槨石材の詳細な報告がなされるものと思いますが、今回の顔料の件やその他のこと追って報告されるのを楽し

みにしたいと思います。

阿蘇ピンク石

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阿蘇山の火砕流噴火

地質学の研究から阿蘇火砕流の噴火は約30万年前〜7万年前までそれぞれ間の時期をおいて、4回あっ

たことが明らかになっています。これらを古い順にAso-1,Aso-2,Aso-3,Aso-4火砕流と呼んでいます。

火砕流というのは、火山噴火の時にマグマとともに火口付近にあった岩石などを含んで一挙に流れ出すも

のです。阿蘇山の最後のAso-4と呼ばれる火砕流は、中九州のみに留まらず一部は瀬戸内海を渡って、山

口県の宇部にまで到達しているものがあり、その規模の大きさと量は驚くべきものです。

これらの火砕流が堆積したとき、層が厚い場合、堆積してすぐに冷却することはなく、高温を保っている

部分は、火砕流に含まれる鉱物などが溶け出します。これを溶結と呼んでいます。

ガラスを高温で熱した時、真っ赤な液状になり、ガラスどうしがくっつきあうのと同じような現象です。

実際には、軽石やスコリアが溶けて球体になり、さらに層の重みが加わるために、扁平の円盤状になりま

す。このような状態のものを溶結凝灰岩と呼んでいます。

阿蘇ピンク石と呼ばれる岩石は、Aso-4火砕流堆積物の中にあるもので、弱い溶結部分とその下層にある

強い溶結部分の脱ガラス化している部分です。

脱ガラス化とは、火砕流堆積物に含まれる天然ガラスが冷却中に結晶質になり、溶結凝灰岩ではこの作用

を受けると、基質(鉱物や岩石以外の全体部分)が明灰色〜白色〜ピンク色などに変化することがわかっ

ています。

阿蘇ピンク石は、通常の阿蘇溶結凝灰岩が灰色〜黒色をしているのに対して、かなり限定された特殊な条

件で生まれた石であることがわかっています。

同じような条件があるところでは、阿蘇ピンク石があるのですが、石棺に使われる阿蘇ピンク石は熊本県

の宇土半島の付け根にある馬門(まかど)という地域で採石されたものです。馬門には現在でも赤石神社

とよばれる小さな丘があり、この丘の壁面には今でも真っ赤な露頭を見ることができます。これは石棺な

どを削りだした痕だと考えられています。

写真は数年前に馬門を訪れた際に、かつて採石をしていたところでいただいたものです。

赤石神社に登る階段は、岩盤を削って作ったものですから、階段ごとにいろいろな色があるのがわかりま

す。朱色のような真っ赤なもの、黄色みがかったもの、灰色っぽいものなどです。

阿蘇山ピンク石石棺


これまでに見つかっている阿蘇ピンク石石棺は次のようなものです。


1.岡山県築山古墳     (舟形 竪穴式石槨)
2.奈良県野神古墳     (舟形 竪穴式石槨)
3.奈良県金谷ミロク谷   (舟形 古墳不明)
4.奈良県兜塚古墳     (舟形 竪穴式石槨)  
5.奈良県鑵子塚古墳    (不明      )×
6.大阪府峰ヶ塚古墳    (不明 竪穴式石槨?)×
7.大阪府長持山古墳の2号棺(舟形 直葬)
8.奈良県慶雲寺石棺     (舟形 古墳不明)
9.奈良県東乗鞍古墳     (家形 横穴式石室)
10.滋賀県甲山古墳      (家形 横穴式石室)
11.滋賀県円山古墳     (家型 横穴式石室)
12.今城塚古墳       (不明 横穴式石室?)
13.奈良県植山古墳     (家形 横穴式石室)×

14.天王寺 熊野権現礼拝石  石棺ではない

×印は現在見ることが出来ません。3のミロク谷と石棺ではありませんが14の礼拝石は鮮やかな朱色か

らピンク色で、阿蘇ピンク石とはどんなものかを目に焼き付けるにはよいものです。 

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今城塚の二上山石材

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今城塚古墳の3種目の石材

 今城塚古墳からは、これまでの発掘調査で阿蘇ピンク石、播磨系石材と二上山系石材が

見つかっています。写真は、その3種目の二上山系石材です。

 この石材も、やはり吉野さんが今城塚で採集したものです。私も今城塚で二上山系の石材

は、採集したことはあります。

二上山系石材の詳細

 写真のように、基質は白色ないしは淡黄色で、黒色や灰色もしくは淡褐色のつぶつぶが入って

います。灰色のものは、石基が灰色で石英、黒雲母の斑晶がある亜角礫の流紋岩で、粒径は8mm

大。黒色のものは、これまで松脂岩と呼ばれていましたが、近年の研究では流紋岩質溶結凝灰岩

と訂正されているもので、粒径は、2mm〜6mm大の亜円礫です。他には少量の石英や軽石を含ん

でいます。

 大きな角礫とザクロ石・黒雲母安山岩を含んでいると、中部ドンズルボー層中のものになりま

すが、それがないので、この石材は下部ドンズルボー層中の流紋岩質火山礫凝灰岩で、太子温泉

の北側にある牡丹洞東方の石と考えられます。

石棺石材か?

 牡丹洞東方の石材は、石棺石材としてよく使われています。それで今城塚でも、この石材を含め

て、3種の石棺があったと考えられていますし、そのようにも報道されています。

 ところが継体の配下であった巨勢男人の墓と考えられる市尾墓山古墳やそれに続く市尾宮塚古墳

など一連の巨勢氏の初期の石棺は、牡丹洞東方の刳抜式家形石棺です。

 また同じく継体の配下と考えられる京都の物集女車塚古墳では、冠などが出ているにもかかわらず、

石棺は組合式石棺で、正面になる長側板とまん中の蓋石は兵庫県加西市の高室の石で、残りすべては

二上山のドンズルボー西方の石です。

 このように考えると、継体が配下の家来と同じ石種の石棺をもつ可能性はまったくないとは言えま

せんが、私にはその可能性はかなり低いように思えます。

 では、この二上山の石材は何かということになりますが、少し前外堤部で埴輪列が検出されました。

その現地説明会で、現物の埴輪列を見ることができました。

 その埴輪列の中に長径50cmぐらいで、高さ30cmぐらいの楕円形の二上山の石材が埴輪と埴輪の

間にあるのを見ました。他から転落してきたものではなく、埴輪列の一部として並んでいるように見

えました。またその石の上面は、綺麗な平坦面に加工され、側面には右斜め上から左斜め下にチョウナ

の削り痕がはっきりと残っていました。右利きの石工が削ったものであることが分るものです。

 この石の用途はわかりませんが、この石の上に形象埴輪か木製品もしくは他のものを載せた台のように

思いました。

 これらのことを考え合わせると、単純に石棺石材であるとは言い難いと思います。この点は、発掘調査

によって、明らかにされなければならないことですが、石棺かそうでないかは、継体の政権を考えるの

に重要な問題となってきます。

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今城塚古墳の阿蘇ピンク石

 今城塚古墳からは、阿蘇ピンク石でできた石棺破片が採集され、これまでの

発掘調査でも何点かのピンク石が検出されています。このことから継体天皇の

お墓と考えられる今城塚古墳に阿蘇ピンク石製の石棺が納められていたことは、

ほぼ間違いないようです。

 この事実に基づいて、昨年夏には石棺を切り出した熊本県宇土半島の馬門か

ら大阪湾まで、石棺を運ぶ壮大な航海実験が行われました。またこの石棺は、

今城塚古墳まで運ばれ、一大イベントが行われました。

 私も研究会のスタッフである吉野さんは、今城塚古墳でこれまで2点の阿蘇

ピンク石を採集されています。吉野さんは、今城塚に行くたびに3種のうちの

どれかを見つけてきます。それでそのたびに連絡をいただき、確認させていただ

いています。吉野さんには、どうも岩石の神が降りているようです。

 写真は、その2点のうちの大きい方で、握り拳大の大きさです。文字通り基質

はピンク色をしており、1mm大の柱状自形の角閃石を班晶とし、石基が灰色の

角閃石安山岩の亜角礫(粒径5mm)を含み、写真で黒色に見える自形の角閃石

を多量に含んでいます。他に石英や天然ガラスをごくわずかに含んでいます。

 まぎれもなく、馬門の石です。

なぜ今城塚に阿蘇ピンク石の石棺があるのか、という問題はまだ解明されていません。

今後の課題ですが、それを解くヒントは、奈良県の植山古墳にあるのではないか、と

考えています。一般に推古と竹田皇子の墓ではないかと考えられているものですが、

西石室には石棺はありませんでしたが、阿蘇ピンク石の破片はあったようです。

植山古墳の詳細な状況が明らかになれば、時代は違いますが、今城塚の問題もわかる

のではないか、と秘かに考えています。

今城塚古墳の石棺片?

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今城塚古墳の3種類の石棺

 継体天皇のお墓と考えられる高槻市の今城塚古墳からは、これまで3種類の石棺

石材と推定される石材が出ています。一つは熊本県宇土半島馬門の阿蘇ピンク石、

二つ目は兵庫県高砂市の「竜山石」、三つ目は二上山の白色凝灰岩です。

 このブログでも以前に書きましたが、現地説明会の時に展示されていた「竜山石」

とされる石材は、どう見てもこれまで見てきたいわゆる「竜山石」ではありません。

その疑問点を書いておきました。

 同様の趣旨のことを会報「考古文化」にも書いておきました。私ども研究会のスタッフ

の吉野さんがたまたま今城塚で上の3種の石材を採集されましたので、手にとって見る

ことができました。

竜山石という呼称についての整理

 考古学では、石棺石材や石槨石材で、播磨系石材で姫路酸性岩に属する流紋岩質火山礫

凝灰岩質溶結凝灰岩〜流紋岩質凝灰角礫岩質溶結凝灰岩を竜山石と呼んだり、表記してい

ます。一見呼びやすいこの竜山石という呼称には、二重・三重に誤認を引き起こす要因が

潜んでいることに気がついていない考古学研究者が意外と多いことです。

 これらの播磨系石材の採石地は、高砂市の竜山を含む地域、加古川市池尻の地域、加西市

長(おさ)の地域、加西市古法華の地域、加西市高室の地域と大別しても、5地域に分ける

ことができます。また岩相からも、このように分けられます。

 そして次に、竜山を含む高砂地域では、これまで見られる主に石棺石材の分析からは、竜山

とは、山筋が異なる伊保山の石である可能性が高く、これまでのところ明確に竜山の石で作られ

たと考えられる石棺等はありません。

 ですから播磨系石材を表記する時には、大別においても細別においても、竜山石という表記は

間違い、もしくは問題が大きいということです。できれば、採石地を表記するか、それができな

いときは、「」つきで表記するのがよいと思います。

問題の今城塚古墳の石棺片?

 さて、問題の今城塚古墳の播磨系石材ですが、写真1矢印部分には明らかに加工痕があります。

直交する平面に仕上げ、角は丸く加工されています。基質は極めて淡い淡黄色で、細粒の岩石片

と鉱物が含まれています。従来「竜山石」と言われてきた伊保山の石でありません。長持形石棺

をはじめ、家形石棺のほぼ大半が伊保山の石ですが、この石材はそうではありません。

播磨の石材であることは間違いないのですが、どこの採石地のものかはわかりません。

 実体顕微鏡による細かい観察と分析によって、明らかになると思います。その報告は会報「考古

文化」に掲載する予定です。

 分析如何では、今城塚の性格がより鮮明になる鍵になるかもしれません。

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