新ベンチャー革命

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新ベンチャー革命2011612日 No.384
 
タイトル:東電経営者:シナリオ発想に乏しい日本人経営者の典型だった
 
1.東電福島原発事故の原点は2002年にあり
 
 2011611日の朝日新聞によれば、東電福島原発事故機4基は、GE設計モデル(マークⅠ)をそのまま日本に持ち込んだものであるとのこと。本件、案の定そうだったのかという印象を国民はもったでしょう。当該事故機4基はいずれもGEオリジナル設計で、建設後40年前後経た老朽機です。米国では、原発ライセンス期間は30年ですから、当該事故機も、2000年前後に、GEの検査を受けています。しかしながら、東電はGE検査報告書を改ざんして、強引に老朽機の運転継続を行ったのですが、2002年、GE関係者による告発にて、このGE検査報告書の改ざんが発覚、当時の東電の南社長が、勝俣社長(現東電会長)に交代しただけでお茶を濁して今日に至っています。なお、2000年以前、福島原発検査で訪日した筆者の知り合いの米国人GE検査員(筆者の元所属先SRIからサンノゼにあったGE事業所に転職した人物)と東京で会った記憶があります。
 
 その意味で今回の事故の原点は、2002年の事故機検査報告書の改ざん発覚後の東電経営者のスキャンダル処理方法にあると言えます。
 
 このとき、社長交代でお茶を濁すのではなく、真摯に、根本的対策を講じていたら、今日の事故はなかったのです、返す返すもほんとうに悔やまれます。
 
 本件を経験し、因果応報という言葉がこれほど、胸に刺さることはこれまでありませんでした。
 
2.GEオリジナル設計の老朽機マークⅠは、地震も津波も考慮されていなかった
 
 上記、朝日新聞のニュースから、40年経った当該事故機には、まったく、地震も津波も想定されていなかったことが判明しました。
 
 そのことを、70年代、マークⅠの建設後に原発関係者は気付いたはずです。だから、福島第二原発は、日本仕様のマークⅡに改良されていたわけです。
 
 今回の3.11大震災では、福島原発の建設メーカーの東芝・日立による改良が加えられていた、福一(福島第一原発)5号機、6号機は破局事故に至っていませんし、福二(福島第二原発)4基も同様にセーフでした。
 
 福一、福二の合計10基は、3.11大震災にて、ほぼ同一の地震と津波を受けたにもかかわらず、10基中、GEオリジナルの老朽機4基のみが破局事故に至ったのです。
 
 5月末に訪日したIAEA調査団は、破局に至った事故機4基と、破局に至らなかった地震・津波遭遇機6基の違いがどこにあるのかを調査したはずです。
 
3.安全設計不備の老朽機がなぜ、40年も放置されてきたのか
 
 2011611日の産経新聞によれば、IAEAの元事務次長のブルーノ・ペロード氏が「今回の事故は、東電が20年間、事故防止策を放置してきたことによる人災だ」とコメントしていますが、この見方は、海外の原発関係者の一致した本音だと思います。
 
 東電は地域独占の公益企業であり、事故前までは利益を保証される万年黒字優良企業でした。したがって、福島老朽機の事故防止策の資金がなかったため、事故防止策を20年も放置したとは言わせません。
 
 技術経営(MOT)の見地からみると、東電は技術設備投資を老朽機の改良に回さず、新規設備投資に回してきたとみなせます。
 
 70年代以降、新規設備投資計画が次々生まれて、過去20年以上、老朽機改良がずっと後回しにされてきたということです。
 
 東電経営者は、新規設備投資が一巡したら、老朽機対策をやろうとしていたかもしれませんが、現実には、この20年間以上、首都圏の電力需要の伸びにより、新規設備投資が一巡することはなかったのです。
 
 その結果、当該事故機は40年間も、GEオリジナル設計のまま放置されてきたわけで、40年間、重大災害を受けなかった方が奇跡だったのでしょう。
 
4.東電経営者の決定的な誤解とは
 
 東電は電力供給を行う公益サービス企業であり、製造業と違って、技術事項は伝統的にメーカーまかせです。そして、歴代の社長は文系の人物です。
 
 そのためか、歴代の東電経営者は、原発を他の火力発電と同類とみなしてきたと思われます。
 
 原発の外観は、他の火力発電所と変わりません、ボイラーの代わりに原子炉があるのみです。技術の本質に疎い文系経営者が、原発を一般火力発電所の延長で理解するのは無理もありません。
 
 その結果、東電経営者は原発を火力発電所の一種として認識してきたはずです。それならば、当該事故機が40年も前の米国仕様のGEオリジナル設計であっても、何ら疑問も不安も持たなかったはずです。
 
 東電経営者は原発が災害で壊れたら、他の火力設備同様に、修理すればよいと単純に考えていたことになります。
 
 このような東電経営者は、海外の経営プロからみれば、想像を絶するお粗末な経営者に見えます。なぜなら、現在の東電経営者は、事故後の今日のおのれの置かれたシナリオを想像できなかったとみなせるからです。
 
 海外のトップ・エリートから見れば、東電経営者は、ほっておけば、おのれが大損するとわかっていることになぜ、平気で無頓着で居られるのかが、到底、理解できないのです。
 
5.東電経営者も、シナリオ発想の乏しい日本型経営者だった
 
 筆者は、日米の技術経営(MOT)に関する長年の調査経験から、日米経営者の最大の違いは『シナリオ発想力』の優劣にあると結論付けています。
 
 日本人経営者の多くは、米国人経営者と違って、シナリオ発想の習慣が乏しいのです。その差は、とりわけ、企業経営におけるリスクマネジメントの差となって現れます。
 
 リスクマネジメントの鉄則、それは“最悪のシナリオ”(=ワーストシナリオ)を常に想定して企業経営することです。
 
 米国の一流企業では、シナリオ発想力の弱い人物が経営者に抜擢されることはまずありません。そのようなミスキャスト人事をやれば、組織が崩壊するからです。
 
 一方、日本では、一流企業のみならず、官庁においても、学歴重視主義であり、シナリオ発想力が重視されることはありません。
 
 たとえば、東大卒のエリートだからシナリオ発想力があるという保証はどこにもありません。東大の選抜システムには、シナリオ発想力は考慮されていません。
 
 一方、米国の場合、政官財のトップ・エリートはシナリオ発想力のある人材が優先的に選ばれており、彼らは自分の後継者を抜擢する際、必ず、その能力を無意識にチェックしますから、半ば、自動的に、各界トップはたいていシナリオ発想力に優れるわけです。
 
 一方、日本では、政官財のトップ・エリートでシナリオ発想力に優れる人物は稀ですから、その後継者にシナリオ発想力の優れる人材が抜擢されることも稀なのです。
 
6.シナリオ発想力の弱い人間が企業経営してはいけない
 
 今回の東電の原発事故でわかったこと、それは、シナリオ発想力の弱い人間を経営者に抜擢すると、いかなる企業とて、東電の二の舞になるということです。
 
 日本の政官財では、多くの日本人はおのれの属する組織のトップに抜擢されることは大変な名誉であり、自分の実力も顧みず、喜んで、トップになりたがります。その典型例が、権力亡者の菅首相でしょう。
 
 一方、競争社会である米国では、組織のトップになることは大変な重圧であり、必ずしも、誰もがトップになりたがることはありません。
 
 彼らは常にワーストシナリオを想定して行動する習慣がついていますから、自分がトップに抜擢されたときのおのれのリスクを分析し、場合によっては、トップ指名を固辞します、そして、彼らは必ず、代替案を提示します、自分より、この人物が適任であると・・・。
 
 一方、日本の場合、社長は天国であり、今回も、東電清水前社長は、3.11大震災時、夫人同伴で奈良観光していたようです。日本企業のサラリーマン社長によく観られる能天気社長の極致です。平時には、このような能天気の極楽トンボ社長でも会社経営は回りますが、いったん、有事になったらどうなるか、まさにワーストシナリオが現実化します、それは、今回の東電の事例で明らかです。
 
 日本の政官財は、組織のトップを選抜する際、候補人材の学歴や過去の業績や組織忠誠度のみならず、シナリオ発想力を考慮すべきです、さもないと、いかなる組織もいつか東電の二の舞に陥るでしょう。
 
ベンチャー革命投稿の過去ログ
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/melma.htm

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