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2012年09月29日 12:00
日本に核武装は必要か(6)〜何を守るために核武装するのか〜「力」、「利益」、「価値」
国家は、「力」、「利益」、「価値」という3つの体系が複雑に絡み合って成り立つと、高坂正堯は言いました※1。「力」とは、国家の強さ、つまり国民の生命・財産、そして領土の維持/拡大を指し、「利益」とは繁栄を、「価値」は言語、規範、文化といったアイデンティティを含みます。 「力、利益、価値」=「安全保障の対象」は時代や社会によって変化します。時にそれは国境線だったり、水や石油だったり、または民族の誇りだったりします。ですから、どれが正解、というものでもありませんが、どれであっても失うことは避けたい国益です。 理想は3体系すべてを保障することですが、能力には限度があります。実際には、今なにを侵害されようとしていて、どれを重点的に守るべきか、と優先度を決め、可能なところから安全保障していくほかないのです。 守るべきものが決まれば、次は守るための手段を考えなければいけません。たとえば、「力」を守る手段として、防衛政策、同盟、危機管理、軍備管理があり、核抑止もここに位置付けられます。冷戦期、米ソが互いに最も阻止したかった敵の行動の一つは、核兵器の使用です。安全保障上の最大の問題を核抑止と定め、その目的を果たすために核戦力を増強しました。しかし、冷戦が終わり、核兵器の使用が極めて閾値の高いものとなるに従って、抑止力を失わないペースで核兵器は削減されつつあります。核兵器の持つ軍事的必要性が低下し、維持・管理のためのリソースを他の脅威へ振り分ける新たな必要性が高まっているからです。 国益観が変われば核武装もありえる 翻って日本の安全保障環境を見てみましょう。周辺国と領土問題を抱え、とりわけ中国の軍事力拡大は今後ますます我が国の安全を脅かすものと思われます。中国が「力」、「利益」、「価値」のどれを重視し、最大化を図っているのか、そしてそのために日本の何をいかなる手段で脅かそうとしているのか、ということを考えなくてはいけません。このパズルを解く上で、核兵器というピースがどのような位置づけとなるか、というのが「日本の核武装」の争点の一つです。 軍事力を拡大する中国に対して手をこまねいていれば、日本のなんらかの国益が侵害されるのは間違いありません。ただし、中国はそれを核兵器によって達成しようとしているか、と問われるとどうでしょう。日本の主要都市を戦略核で破壊し、インフラを無効化することで最大化できる中国の国益とは一体どのようなものなのでしょうか。日本の国土を荒廃させておいて人民解放軍を上陸させるのでしょうか?そのままでは占領地を利用できませんから、彼らが最初に着手するのは再建・復興ですね。ずいぶんとご苦労なことですが、日本の言語や文化を消滅させ、中国の「価値」を拡大することが優先度の高い国益となったならば、そういったシナリオも考えられなくありません。ただ、今のところ、効果と代価が釣り合いません。 将来、中国の国益観が変化したとして、日本に核攻撃をかけて達成できる中国の国益とは何でしょうか?そこを明らかにし、現実味のあるシナリオを描かない限り、「中国は日本を核攻撃するに違いない」と何度言ったところでオオカミ少年の妄想です。 もちろん、日本の国益観自身も劇的に変わる可能性はあります。核開発によって損なわれる他の国益をなげうってでも、「日本は核武装をするんだ!」と多くの国民が決意する場合、核武装そのものが至高の国益ということになります。もはや「力」、「利益」、「価値」を保障するための手段という階層ではなく、その3つと同等以上に保障されるべき対象ということになるでしょう。 守るべき「力、利益、価値」は移ろいゆくものですから、そのような時代が訪れないとも限りません 「手段」であるなら検証が必要 核武装推進派の動機は、(1)中国・北朝鮮の脅威の増大、(2)アメリカの核の傘への不信、が主なものです。この文脈で考えると、核武装派は核兵器を「力」、「利益」、「価値」を守るための手段としていることが分かります。手段の一つであるならば、是非論が様々な角度から検証されることになります。 例えば、核兵器という科学技術のかたまりをテーマにする以上、物理的・技術的に可能か不可能かを検証するのは当然です。技術的な問題を無視して出来る出来ると叫んだところで夢物語に花が咲くだけですからね。 法律、コスト、国際情勢、etc. etc...それらがクライテリア(評価基準)になります。上記の(1)と(2)を核兵器で解決する場合と他の選択肢(通常兵器や外交)を用いる場合とでどちらがより効果的であるかを、クライテリアを通して検証するのです。蓋然性や政治的・経済的受容度といった評価項目ごとに分類し、その結果として核武装が適切と判定されれば、なんら核武装に反対するつもりはありません。 もちろん、これらの検証作業は前提条件の設定次第で大きく結果が異なります(今回の連載でも、この部分が曖昧で、多分に主観的作文に終わってしまっていますね …orz)。先述のように日中両国、もしくはいずれか一方の国益観が劇的に変化したり、中国経済がある日突然崩壊したり、アメリカが突然モンロー主義に回帰したりすれば、日本の核武装の位置づけも現在とはまったく模様の違うパズルのワンピースとならざるを得ません。 日本の核武装を肯定しているアメリカの政治学者ジョン・J・ミアシャイマーも、「中国経済の急速な成長が止まり、日本が北東アジアで引き続き最も豊かな国であり続ければ」※2という条件を付した上での日本核武装論です。現在のところミアシャイマーが想定したような国際環境ではありませんね。 現時点で必要性を認めないが、将来の可能性は否定しない 上記(1)、(2)を始め、核武装の動機のほとんどが、日本が「脆弱である」との認識に基づいています。今はまだ有利な状況かもしれないが、時間とともに日本は不利になる、またはいざという時にアメリカは自らを犠牲にしてまで日本を助けちゃくれない、という不安感です。その認識は間違ったものではないと思います。有事を想定して法やシステムを事前に整備し、抑止力を維持・向上させる努力は平時から怠ってはいけないと思いますし、軍事力抜きに外交が成立しないのは当然です。 戦略的脆弱性を認識することは必要です。しかし、その弱さを相殺しようと一種のパニック状態に陥り、希望的観測に基づいて判断を下す危険性を、我々日本人はかつての戦争で学んだはずです。危機感の内容と原因、対処法は入念に検証されるべきではないでしょうか。 巷にある核武装論は、守るべきものがなんであるのか、どのようにして失われるのか、それをどうやって守ればより効果的なのか、という検証プロセスがあいまいなままにされているのがもったいないところです。正義や愛国・憂国を掲げて核武装を唱える気にはなれませんが、選択肢として完全に否定するつもりもありません。私は現在の情勢から考えて核武装の必要性を認めていないだけで、将来、世界が変われば守るべき「力、利益、価値」は変わり、守るために必要な手段も変わります。 日本の核武装について多角的に検証された学術論文や著書をご存知の方は、ご教示頂ければ幸甚です。是非読んで勉強したいと思っております。 (了) |
核防護 核武装
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コメント(3)
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民主党の小沢一郎元代表は19日夜、インターネットの番組に出演し、日本も核武装すべきだという意見があることについて、「日米安全保障条約があるんですから。(日本の核武装には)僕は賛成ではありません。論議はいいが、核兵器の保有は軍事的、政治的に意味がない」と否定した。(産経新聞) http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111120/stt11112001140000-n1.htm
日本の核武装「議論だけでも行うべき」が96% 「日本は核武装すべきか」については「賛成」が85%。「公の場で議論だけでも行うべきか」については96%が「そう思う」と答えました。また、「有事の際にアメリカは日本を守るか」との問いには、78%が「そう思わない」と回答しました。(産経新聞)より抜粋 http://sankei.jp.msn.com/life/news/110113/trd11011301340010-n1.htm
米共和党の「ジョン・マケイン」上院議員 「日本が北の核に脅されている以上、日本の核開発に反対すべきではない」 「中国が危機解決に迅速に取り組まなければ、日本は核武装するしか選択肢がなくなる。日本には自国民の安全を守る義務がある」 米共和党の下院軍事委員「マーク・カーク」議員 「日本は立派な民主主義国家であり、その日本が核抑止力を得るのは、アメリカの国益にとって明確なプラスだ。核を持った日本は、本当に頼りになる同盟国として、アジアの安定化のためアメリカと一緒に仕事をしてくれるだろう。日本人は世界中で信頼されている。日本が核を持ってくれたら、頼もしい同盟国ができたと喜ぶ米国人は多いはずだ」 「アメリカの軍事力は明らかに過大評価されている。アメリカは中国やロシアと戦争できない。だから僕は核を持った日本に、頼もしい同盟国になってほしいのだ」
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核を持てば世界が変わる
これぞ正論
産経新聞の野口裕之九州総局長が、日本は世界で唯一原爆を落とされた国であるにもかかわらず、核を使う国など永久に現れないと信じているのは無邪気過ぎて怖いと批判している。
まことに正論である。 日本の核アレルギーは却って二度目の被爆を生みかねない。
オバマ大統領のプラハ演説を単純に信じ込んで核三原則の堅持を表明したルーピー鳩山を「暗愚の宰相」とこき下ろし、アメリカは日本の核武装を容認する姿勢を示すように変化して来ていると言う。 それが事実ならもっけの幸いである。 実際に核武装するかしないかは別として、核を保有する用意があると世界に宣言するだけで、世界の日本に対する目は変わる。 それにはまず憲法を破棄または改正すること。 今のままでは日本は世界(中・ソ・韓・北朝鮮)に舐められっぱなしである。 産経新聞(2011/10/30)
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こんな記事もあります
みんながどういう記事を書いているか見てみよう!
![]() 2011/10/11(火) 午後 9:50
... 『核兵器のない世界』の構想を示したことは、世界の人々を勇気づけました。日本が(核兵器を ... 「米国はもはや、日本や韓国を軍事面で面倒見る必要はない。日韓の核武装を認めるべきだ」 ■「日本は真の異端」 カーペンター論は日本に自立を促す警告に ... ![]() 2009/8/17(月) 午後 9:26
... 理由をご存知だろうか? もし日本が核武装を考えたならば、その材料となる放射性元素を、世界中の国の中で一体どこかが日本へ原子爆弾の材料を日本に輸出するだろうか。世界中の国々の中で、日本のご都合良く日本に対して寛大な国がどれだけあるだろうか。 ... ![]() 2009/6/27(土) 午前 11:43
... それは日本が「普通の国」になって核武装することであります。 日本核武装は4/28をもって独立記念日とする第一歩であります。 オバマ核廃絶は日本核武装を押さえ込むトリックであります。 目覚めよ日本、日本核武装実現こそ世界平和の絶対条件であります。 ![]() 2006/11/7(火) 午後 9:44
... これらの売国奴たちは、核が廃絶されれば、世界平和が達成されると叫びます。もう、こんな馬鹿な、売国奴をあいてにしていられません。 何をおいても、早急に核武装に踏み切ることが、日本という国と民族を生き残らす、最善の方策です。 ... ![]() 2006/10/31(火) 午前 4:29
... 海外の議論には「唯一の被爆国たる日本は核武装することはありえない/日本は核武装をしてはならない」などの情緒的な認識や主張が介在する余地は皆無ということだ。 「唯一の被爆国だから日本は(世界中の)核兵器に反対する」という、日本ではまま見 ... |
エネルギー政策 展望なき「脱原発」と決別を(9月7日付・読売社説) ◆再稼働で電力不足の解消急げ◆
電力をはじめとしたエネルギーの安定供給は、豊かな国民生活の維持に不可欠である。
ところが、福島第一原子力発電所の事故に伴い定期検査で停止した原発の運転再開にメドが立たず、電力不足が長期化している。
野田首相は、電力を「経済の血液」と位置づけ、安全が確認された原発を再稼働する方針を示している。唐突に「脱原発依存」を掲げた菅前首相とは一線を画す、現実的な対応は評価できる。
首相は将来も原発を活用し続けるかどうか、考えを明らかにしていない。この際、前首相の安易な「脱原発」に決別すべきだ。
◆節電だけでは足りない◆
東京電力と東北電力の管内で実施してきた15%の電力制限は、今週中にすべて解除される。
企業や家庭の節電努力で夏の電力危機をひとまず乗り切ったが、先行きは綱渡りだ。
全国54基の原発で動いているのは11基だ。再稼働できないと運転中の原発は年末には6基に減る。来春にはゼロになり、震災前の全発電量の3割が失われる。
そうなれば、電力不足の割合は来年夏に全国平均で9%、原発依存の高い関西電力管内では19%にも達する。今年より厳しい電力制限の実施が不可避だろう。
原発がなくなっても、節電さえすれば生活や産業に大きな影響はない、と考えるのは間違いだ。
不足分を火力発電で補うために必要な燃料費は3兆円を超え、料金に転嫁すると家庭で約2割、産業では4割近く値上がりするとの試算もある。震災と超円高に苦しむ産業界には大打撃となろう。
菅政権が再稼働の条件に導入したストレステスト(耐性検査)を着実に実施し、原発の運転再開を実現することが欠かせない。
電力各社が行ったテスト結果を評価する原子力安全・保安院と、それを確認する原子力安全委員会の責任は重い。
運転再開への最大の難関は、地元自治体の理解を得ることだ。原発の安全について国が責任を持ち、首相自ら説得にあたるなど、誠意ある対応が求められる。
野田首相は就任記者会見で、原発新設を「現実的に困難」とし、寿命がきた原子炉は廃炉にすると述べた。これについて鉢呂経済産業相は、報道各社のインタビューで、将来は基本的に「原発ゼロ」になるとの見通しを示した。
◆「新設断念」は早過ぎる◆
代替電源を確保する展望があるわけではないのに、原発新設の可能性を全否定するかのような見解を示すのは早すぎる。
首相は脱原発を示唆する一方、新興国などに原発の輸出を続け、原子力技術を蓄積する必要性を強調している。だが、原発の建設をやめた国から、原発を輸入する国があるとは思えない。
政府は現行の「エネルギー基本計画」を見直し、将来の原発依存度を引き下げる方向だ。首相は、原発が減る分の電力を、太陽光など自然エネルギーと節電でまかなう考えを示している。
国内自給できる自然エネルギーの拡大は望ましいが、水力を除けば全発電量の1%に過ぎない。現状では発電コストも高い。過大に期待するのは禁物である。
原子力と火力を含むエネルギーのベストな組み合わせについて、現状を踏まえた論議が重要だ。
日本が脱原発に向かうとすれば、原子力技術の衰退は避けられない。蓄積した高い技術と原発事故の教訓を、より安全な原子炉の開発などに活用していくことこそ、日本の責務と言えよう。
◆原子力技術の衰退防げ◆
高性能で安全な原発を今後も新設していく、という選択肢を排除すべきではない。
中国やインドなど新興国は原発の大幅な増設を計画している。日本が原発を輸出し、安全操業の技術も供与することは、原発事故のリスク低減に役立つはずだ。
日本は原子力の平和利用を通じて核拡散防止条約(NPT)体制の強化に努め、核兵器の材料になり得るプルトニウムの利用が認められている。こうした現状が、外交的には、潜在的な核抑止力として機能していることも事実だ。
首相は感情的な「脱原発」ムードに流されず、原子力をめぐる世界情勢を冷静に分析して、エネルギー政策を推進すべきだ。
(2011年9月7日01時19分 読売新聞)
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