歌舞伎の型を記録した本は昔からいろいろあるが、一番新しいのが、渡辺保『歌舞伎 型の魅力』(角川書店、平成16年8月)だろう。そして、この本の一番いいところは、上方の型というものがあると、はっきり断言しているところだ。 普通、上方には決まった型は無いと言われる。だが著者は、そうではないと言う。上方では、一つの型の上に、役者たちが次々と新工夫を入れていくので、結果、型が無いように見えるだけだ。これには、全く同感だ。そして、上方の型を知ることは、東京の型を知ること以上に重要だと思う。何故なら、東京の型は、今でも多くの役者が継承していて、いわばスタンダードとしてまま見ることができるけれど、上方の型は、役者の新工夫で、どんどん変化していくからだ。そして、役者の新工夫と言ったところで、元の型を知らなければ、それが新工夫だとわからないし、その演出上の意味も、軽薄な印象批評の域でしか論じることができないからだ。 例えば、1月の歌舞伎座で上演された藤十郎の「先代萩」は、東京の型しか知らない人からすれば、なかなか珍しい演出だっただろうが、あの演出の基本が、上方の雀右衛門型で、その上に藤十郎の新工夫があるということを知ると、舞台を見る楽しさは倍増するだろう。 この本は、そういった一般にはあまり知られていない上方の型を、巧くまとめてくれているとところがうれしい。もちろん、江戸の型もしっかり記録していて、その上で江戸と上方の脚本解釈の違い、もっと言えば、舞台の主題自体ががらりと変わることまで分析していてくれる(例えば仮名手本忠臣蔵の四段目、五段目など)。私にとっても、非常に役に立つ本である。 |
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なかなか面白そうな本ですね。渡辺保さんの著書ですか。彼の言うことは辛口なことが多いですが、的確だし的を得ているし、信頼できますね。
2006/4/5(水) 午前 1:33