◆ 歌 舞 伎 素 人 講 釈 ◆〜私の観劇ノート〜

映画「歌舞伎役者 片岡仁左衛門」上映会は大成功のうちに終了しました。ご来場の皆様、ありがとうございます。

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 南座「吉例顔見世興行」夜の部は、幸四郎の「石切梶原」、錦之助襲名口上が付いた「寿曾我対面」、藤十郎の「娘道成寺」、仁左衛門の「河内山」、そして松緑・菊之助の「三社祭」と翫雀・扇雀の「俄獅子」である。
 まず「石切梶原」。幸四郎の梶原景時はさすがの演技である。とくに見せ場である太刀の目利きから理に勝る梶原を見せる。やはり幸四郎はこういう理知的な人物の造形が上手い。石橋山合戦の物語でも、情よりも理によって頼朝を助けた梶原という観があった。もうひとつ素晴らしかったのが二つ胴の試し切りの場面。太刀を構えるときに、ジリジリと剣先を挙げて決まる。もちろん手水鉢も後ろ向きに切る。吉右衛門型の様式美を見せてくれた。大庭景親と俣野景久兄弟は我当と愛之助。敵役としては憎体が不足。錦吾の六郎太夫、高麗蔵の梢、さすが一門で固めただけあって手堅い。罪人剣菱呑助は家橘。もうけ役だが、酒尽しのセリフで沸かせた。梶原方の大名、山口十郎に亀鶴、川島八平に薪車。
 「寿曾我対面」は、劇中に錦之助襲名の口上が付いた。先代時蔵亡き後、錦之助を指導してきた富十郎が挨拶。「一から歌舞伎を勉強したいと、信二郎君が私の下に訪ねてきました」と語っていたが、富十郎にとっても良い生徒を持てたのでは。いずれ錦之助が天王寺屋に恩返しするときが来ると思う。肝心の芝居は、やや退屈。まず錦之助の五郎は仁が違う。菊五郎の十郎との遣り取りでも、工藤祐経に飛び掛ろうとするところ、手順をなぞっているだけの観が強く、切迫感に欠けた。だから見せ場である杯を割り、三方を押しつぶすところでも力強さがない。せっかくの襲名披露なのだから、もっと錦之助の仁に合った演目を選択すべき。富十郎の工藤は、さすが座頭役者の貫禄である。ただ、幕が切って落ちてから最後まで高座に座ったまま。鶴の見得でも立たないのは残念。足の調子でも悪いのだろうか。舞鶴は時蔵。道化味が不足である。秀太郎の大磯の虎は、さすがの艶やかさ。鬼王新左衛門は梅玉、この人が登場するだけで気分が良くなるのは贔屓目か。化粧坂少将は扇雀、喜瀬川亀鶴に梅枝、近江小藤太成家に松緑、八幡三郎行氏に愛之助。梶原景時、景高親子は團蔵と亀鶴。
 さすがの舞台を見せてくれたのは藤十郎「娘道成寺」。あれだけ腰の据わった踊りは、そうそうない。どれだけ複雑な振りをしても、体の中心線がぶれず。そして若々しい。ただ、喜寿記念と銘打つのはいかがなものか。初代鴈治郎は死ぬまで若旦那で通し、決して自らの老いを見せなかったことで知られる。いくら高齢化社会とはいえ、歌舞伎役者が老齢自慢をするようでは困る。もうひとつ、聞いたか坊主が般若湯(酒)、天蓋(蛸)を出す場面もチャリが不足。せっかく亀鶴、薪車以下、上方の若手を起用しているのだから、もっとサービスして欲しかった。
 仁左衛門の「河内山」は、質見世の場から始まるのが嬉しい。ここでお数寄屋坊主の姿を見せることで、次の松江邸での偽使僧姿の違いが面白さを増す。さて仁左衛門の河内山は不敵さ、凄みがいい。おまきから事情を聞いて、大名への反骨心が湧き上がる好戦的な河内山である。竹三郎の後家おまきも落ち着いた演技。甲高い声で一本調子なセリフ回しも批判が多いが、逆にファンである私からすればたまらない。東蔵の和泉屋清兵衛も世間知に富む人物だ。松之助の番頭伝右衛門、あいかわらず場を盛り上げるのが上手い。序幕から上々の出来である。松江邸広間の場、翫雀の松江侯は殿ご乱心。これではまるで馬鹿殿である。もう少し国持ち大名としての高貴さと、その裏返しである気儘さを出して欲しい。ただ、書院の場では、河内山との遣り取りで充分相手を挑発する。これに河内山が「もってのほかなるご乱行」となるわけで非常に面白かった。仁左衛門の使僧北谷道海実は河内山宗俊は、お数寄屋坊主姿とは打って変わった気品がある。だから玄関先で「それじゃ大膳は、知っていたのか」とガラリとくだけるところ、見せ場である「悪に強きは善にもと」のセリフも堪能した。そして見事なのは玄関先から花道に進んでの「馬鹿め」。ここでも翫雀が充分に口惜しさを表現したことが効いた。左團次の家老高木小左衛門は常識人。團蔵の北村大膳は、狡猾さの中にどこか小役人風情があり好演。愛之助の宮崎数馬、孝太郎の浪路。仁左衛門以下、さすがの舞台を見せてくれた。
 大切は踊り二つ。松緑と菊之助の「三社祭」は、若さあふれる舞台。技術的なことは置いておいて、こういう若くてピチピチした踊りを見るのは楽しい。翫雀と扇雀の「俄獅子」もよく息が合った踊りであった。とくに若い衆をたくさん使っての立ち回りは爽快。立ち回り大好き人間の私からすれば、疲れが一気に吹き飛び、楽しい気分で一日の観劇を締めくくれたのが嬉しかった。
(12月23日所見)

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始めまして。襲名披露もあって良かったですね。南座も風情があり・・・、いいですね。。

2008/1/20(日) 午前 11:49 sha*ap*u


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