無題
ふたつの男
香田はその日、区役所で金をもらうはずだった。
香田は行くと決めた前日から、意識して相手の都合を推し量ることをしなかった。
1週間前に買った45円のモヤシを一袋、5日かけて食べつないだ。
2日間の絶食を経て、救急車を呼ぶのと散々迷った挙げ句ようやくその決心を固めたのだ。
空腹で死にそうな人間を、果して助けてくれるものなのか。
救急隊員に恫喝される様子を想像して、とうとう断念したのが昨日のことだった。
しかし、区役所はモヤシのように透き通りそうな香田の勇気など簡単に折ってしまう存在感だった。
香田の最も苦手とする、人生に疑問も迷いも持たずに真面目に働いて暮らす人々の群れだった。
同じ目の高さで呼吸していることだけで、香田には罪深いことに思われた。
だから、男に手首をを掴まれた時、香田はとうとう捕ま
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