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「墨俣一夜城物語」(その三)
21墨俣城・築城
人夫たちの中で指揮している藤吉郎。
藤吉郎、棟梁に向かって、自慢そうに言う。
藤吉郎「一に資材、二に戦闘じゃ!」
棟梁「?」
藤吉郎「三に築城。城はアトでいいんじゃ・・・・城は
ハリボテでかまわん。紙でいいから造れ!」
棟梁「?(さっぱりわからない)」
藤吉郎「恰好だけ造って、川向こうにおる敵の眼を、騙(だ)ましゃあいいんじゃ!」
棟梁「へ、へい!(やっと納得)」
材木を肩に運ぶ人足たち。
その築城の様子をフラッシュ映像で描く。
また、美濃・斎藤家との戦いが、フラッシ
ュ映像でインサートされる。
駆け回る騎馬・雑兵。
22墨俣城
工事のさなか、信長が来る。
いっせいに道を開ける、人夫たち。
伝七と新吾たち、平伏する。
信長「者ども、三日で城をつくるんじゃ! たわけ! さっさと取りかかれい!」
藤吉郎、叱咤する。
藤吉郎「城は形だけじゃ! 窓は絵で描きゃあええ!敵をだますだけじゃ!」
22A同・休憩所
千草が飯炊きの手伝いに来ている。
伝七がそれを見つける。
伝七「おお! 千草どの・・・・よう来られたのう」
と千草に近づく。
千草「半兵衛さまに言われて手伝いに来たの。あん
たたちとは関係ないわ」
伝七「まあ、そう言うなよ」
伝七、千草にさらに近づこうとする。
信長、その伝七の姿を見つける。
伝七「なあ、知らない仲じゃないんだから」
信長、職場を離れて、女にうつつを抜かしていると見て、伝七の所へつかつかと来る。
伝七、千草の肩を触ろうとする。
信長「!・・・・」
一刀のもとに、伝七を斬ってしまう。
血だらけの伝七の首、ドサッと地面に落ちる。
新吾、駆け付け、伝七の首を見つめる。
信長「者ども、さっさと働け!」
と、さっさと背を向けて行ってしまう。
新吾「!・・・(信長を睨みつける)」
23栗原山・半兵衛の家
新吾、半兵衛に話す。
新吾「私は、もう厭になりました。信長さまは鬼じゃ」
半兵衛「信長さまより藤吉郎さまの方が上じゃ」
新吾「ええっ?」
半兵衛「私は、藤吉郎の下なら、従おうと思っている」
新吾「ハア?(けげんな顔をする」
半兵衛「岐阜城攻略に・・・そちも・・・・わしについてきて、手伝って貰おうと思っているんだが・・・」
新吾「わ、わたしですか?」
新吾、よく飲み込めない。
半兵衛「いやかな?」
新吾「・・・・いや・・・・(うつむく)」
24岐阜城
藤吉郎軍、岐阜城を攻め上げる。
新吾、藤吉郎軍について、参加している。
藤吉郎、采配を振って、
藤吉郎「沢から裏山の崖を登れ」
ひょうたんの馬印を持った兵卒が走る。
新吾、その後を走る。
25敵の射手、その馬印を狙って撃つ。
25A藤吉郎軍
兵卒、敵の弾に当たって、すっ飛んで死ぬ。
新吾、馬印を拾って走る。
26敵の射手、その新吾を狙って撃つ。
26A藤吉郎軍
銃声!!
新吾「!!」
新吾、敵の弾に当たって、すっ飛んで死ぬ。
藤吉郎、駈け寄り、新吾に目もくれず、馬印を拾い上げる。
藤吉郎「今の弾は、前の敵からか、後の方角からか!」
藤吉郎、その馬印を持って走る。
27栗原山・半兵衛の家(室内)
稲葉が一人でやってくる。
稲葉「稲葉山は、あっけなく陥落しましたなあ」
半兵衛「・・・・・・」
半兵衛、自然薯をこねている。
稲葉「わしら三人衆は信長どのに従うことにしたぞ・・・ついては、稲葉山の信長さまの所に、半兵衛どのも拝謁にご同行したいのじゃが・・・」
半兵衛、自然薯をこねていたが、
半兵衛「これが美味い。一徹どの、食(しょく)されまするか」
稲葉「いただこう。半兵衛どの、この世をこのように上手に、こねて見るのも面白いではないか」
半兵衛「・・・・若者を戦いに出したが・・・・惜しいことに撃たれて、命を落としました・・・・」
半兵衛、自然薯をご飯にかけて、稲葉にさし
だす。
稲葉「(ご飯を食べながら)どうじゃ、稲葉山に一緒に?」
半兵衛「(それには答えず)・・・・この地は、滋養がいいものが沢山とれまする」
と、自分もごはんを食べる。
28岐阜城
天守閣で信長が眼下を見ている。
後ろに、一徹たち(三人衆)が控えている。
半兵衛も隅に控えている。
信長「半兵衛、きさま、来ないと思っていたぞ。どうだ、この見下ろした美濃が全部わしのものじゃ」
半兵衛「美濃は小さいと思います・・・・・・」
信長「なにい〜!」
半兵衛「お屋方さまの前には、広い日本がありまする」
信長「きさま、わしの元で天下をとらないか」
半兵衛「信長さまの下では荷が重過ぎます。藤吉郎さまの下でなら、私も自信があります」
信長「勝手な奴じゃな・・・おれの下ならいやか!」
半兵衛「いいえ、そういう意味ではございますぬ。わたしは北近江のお寺に住もうと思っています」
信長「訳のわからんな奴じゃ。勝手にせい!」
と部屋を出ようとする。
あわてる藤吉郎たちの郎党。
藤吉郎が信長を追いかける。
藤吉郎「半兵衛め、ご無礼な奴・・・私が始末しまする」
信長、ジロッと藤吉郎を見て、
信長「たわけめ!」
と、部屋を出て行ってしまう。
29栗原山・半兵衛の家
半兵衛が帰ってくる。
迎える千草。
半兵衛「千草、わしは旅にでるぞ」
千草「?」
30岐阜城・天守閣
信長が天守閣から眼下をみている。
藤吉郎が控えている。
信長「あやつ・・・・半兵衛は、なにを考えているか・・・」
藤吉郎「わたしに始末をおまかせくだされ」
信長「たわけ! 猿! あやつを軍師にしろ。おまえの下でもいい。お前に任せる。できなかったら、猿、おまえから始末するぞ」
藤吉郎「ヘ、ヘエ〜ッ!!(床にはいつくばる)」
31峠
半兵衛、峠を越える。
半兵衛、杖をついて歩いている。
千草がついてくる。
半兵衛「わしに付いて来てもだめだ」
千草「半兵衛さまの体が心配です」
半兵衛「・・・・わしは、藤吉郎さまに付くことに決めたが・・・・とりあえず、近江へ行く。信長さまは近江を近々攻めるはずじゃ。わしは先に行って、近江の様子をさぐる・・・・藤吉郎さまは、すぐ迎えにくるだろう」
32藤吉郎の館
藤吉郎、立ちあがる。
藤吉郎「(部下に)半兵衛の所へ行くぞ。あやつ、わけが分からん奴だからにゃ〜」
と、虚空を睨みつける。
33峠
半兵衛と千草。
半兵衛「しかし、藤吉郎どのが迎えに来ても・・・・わしは病いのため、あまり長くはお仕えできんと思う・・・・」
千草「だったら静かに養生されたら・・・・」
半兵衛「それが、美濃でぐずぐずして居(お)れんのだ・・・・信長さまは、次は近江を攻める」
千草「・・・・・」
半兵衛「(峠から見渡して)・・・・しかし、わしの考え方は、民百姓が安心して生活できる国にしたい・・・・それには、力の争いを止め、敵の存在をも認める政治をする事・・・・それができそうなのは、藤吉郎どのしかいない・・・・信長さまは、あまりにも事を急ぎすぎ、民の命をも犯しすぎる・・・・今に大きく転ぶと思う」
千草「半兵衛さまの考えには、私はついていけませぬ」
半兵衛、峠に立って下界を見降ろす。
鳥が天空を悠々と飛んでいる。
半兵衛、杖で鳥を指して、
半兵衛「わしの思いは『千年おおとり』じゃ。空から大地を見ていたい。ハハハ・・・・わしの考えていることは・・・・やがては天下に実現できる・・・・実現させるのは、わしでなくて、別の人間でも、一向にかまわぬ」
千草、首を振る。
千草「わたしには、さっぱりわかりませぬ」
半兵衛「そちもわしに構っていると嫁にいけぬぞ」
千草「半兵衛さまは・・・・私がいないと、何もできないくせに・・・」
半兵衛、手にした杖を振って、
半兵衛「勝手にせい」
と歩き出す。
千草、ついて行く。
千草「お許しがでたのですね」
半兵衛「勝手にせい」
千草、にっこり笑う。
半兵衛、スタスタ背を見せて歩いて行く。
千草、嬉しそうに後に従う。
二人、峠を越えていく。
(終)
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