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粗食のすすめ【「栄養素」にとらわれすぎる日本人、食物を「部分的に」にとらえるのは無意味】#5
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「栄養素」にとらわれすぎる日本人
「栄養素」から食生活を考えることが、科学的だと思いこんできたことは問題である。栄養素とは、食物に含まれている糖質、タンバク質、ビタミン、ミネラル類のこと、現代の私たちは、食物にはどのような栄養素が含まれているか、かなり知るようになった。科学の進歩のおかげである。

しかし、科学の進歩が、現代の私たちの食生活にどのような影響を与えてきたのかを考えてみると、必ずしも良い影響をもたらしたとはいえない。

長い間「肉は良質のタンパク源」といわれてきたが、最近では、動物性の脂肪の多い肉類は食べ過ぎないほうがよいといわれるようになった。イカやタコ、貝類などは、コレステロールの多い食品とされていたが、今ではこれらの食品はタウリンという成分が含まれていて、逆にコレステロールを抑制する働きがあることが分かった。

さらに緑茶にはタンニンが多いので「飲みすぎると鉄を吸収して貧血になる」といわれてきたが、近ごろでは「ビタミンCが豊富なので、ガンの抑制に効果がある」という意見がよく聞かれる。ホウレン草は鉄分が多いから貧血にいいという人もいれば、蓚酸(しゅうさん)が多いのでカルシュウムと結合して結石になるという人もいる。

何がなんだか、何を信じていいのかさっぱり分からない状態になっている。食品にはそれぞれメリット、デメリットがあり、「身体にいい食品」が存在しないように、「身体に悪い食品」も存在しない。食品にどんな栄養素が含まれているのかを知り、それを参考にすることは悪いことではない.

しかし問題は、ある一面だけを見て、それを絶対だと結論づけるのはよくない。例えば「小魚にはカルシュウムがたくさん含んでいるから食べよう」などと結論づけてしまうのは、「木を見て、森を見ず」の状態と同じである。

「栄養のバランスをとること」が、健康のために大切だということを疑う人はいない。もちろん栄養素のバランスがとれていることは大切であるが、実際にどのようにすればバランスがとれているといえるのか、分っている人がいるのであろうか。

少し健康に関心のある人なら「一日に30品目の食品をとること」がバランスのとれた食事だと考えているであろう、しかし、それは正解ではない。例えばビタミンひとつを考えても、私たちの生命を維持していくのにいくつのビタミンが必要とするのか、解明されていないのが現状である。よく分っていない栄養素のバランスをどうやってとればいいのか、誰にもわからないはずである。
だから、栄養について話をするときには、「今、分っている範囲では」という条件が必ずつくはずなのに、ほとんどの人がそのことを忘れて「一日30品目」とか、「栄養のバランス」といった言葉だけを鵜呑みにしてしまっているのは問題である。


「食物」を見ずして「栄養素」を見る
毎日牛乳を1リットルも2リットルも飲む子ども、毎日1キロ近くも肉を食べる男性、ご飯も食べずに朝から晩まで果物を食べている女性。このような人たちに「どうしてそのような食生活をしていたのですか」と尋ねてみると、ほとんどの人が決まったように、「牛乳はカルシュウムが豊富だと聞いたから」「肉は良質のタンパク質が豊富だから」「果物にはビタミンCが豊富に含まれているから」と答える。

また、次のような場合もある。同じ卵でありながら、毎日5個も6個も食べている人がいる一方、まったく食べない人もいる。好みの問題というなら分かるのだが、5個も6個も食べなる人は「卵には良質のタンパク質が豊富だと聞いたから」というし、まったく食べない人は「卵はコレステロールが多いから」という。

卵をたくさん食べる人は卵そのものを忘れ、卵の中のタンパク質だけを見ている。卵を食べない人は、卵を見ているのではなく、卵の中のコレステロールだけを見ているのである。卵の中の一部分(栄養素)だけをとらえて、善し悪しを勝手に決めているのである。実際に食べるときには、タンパク質だけを食べることもできないし、コレステロールだけを食べているわけではない。


食物を「部分的に」にとらえるのは無意味
幕内は「食物を『部分的に』にとらえるのは無意味である」という考えを説明するために、アーサー・ケストラーという人の書いた『ホロン革命』(工作舎)の一節を紹介している。

「・・・科学者が複雑な現象をその構成要素に分解することはきわめて正統なことだし、必要不可欠でもある。ただし、分解の過程で必ず何か本質的なものが失われるという事実認識があってのことだ。全体は部分の総和以上であり、全体の属性は部分の属性より複雑である。それゆえ複雑な現象の分析は全体像の断片ないしは側面を明らかにするだけで、それをもって『・・・に過ぎない』などといえるものではない」


<現代の我々は食品の成分に含まれる成分について知らないことの方が多い。だから、もっと科学者が分析した成分を知ることは必要である。だが、アーサー・ケストラーが言うように、科学者の分析したのは全体から切り離した部分であり、断面であり、全体を明らかになどしていない。ということは、部分にとらわれて全体が見えていないことである。食品を部分的にとらえて、何々の食品はたんぱく質が豊富だとか、何々の食品はカルシュウムが豊富だというような食物を部分的に解釈するのは意味のないことである。科学によって栄養素のことが色々と解明されるのはよいことであるが、それを鵜呑みにして、食物全体のことが分かったと思うのは、食物のことを考えているようで、逆に食物の本質から離れていくという皮肉な現象になっているようだ。木庵>

栄養素やカロリー計算は時間の無駄
近頃、我々は「OOを食べて痩せる」式のダイエットに振り回わされている。ゆで卵やパイナップル、こんにゃく、海藻など、とにかくあらゆる食品が、魔法のダイエットアイテムとして登場し、ブームを起こしては消えていっている。

これらのダイエットは、実は「OOを食べて痩せる」のではなく「OOしか食べないから痩せる」方法である。

ワンアイテム・オンリーのダイエットには、「卵はタンパク質が豊富」「海藻は脂肪がない」といった、特定の栄養素だけを問題にした一面からしか食物をとらない、偏った見方が存在している。

しかし、当然のことながら、先にもふれたように、卵に含まれているのはタンパク質だけではない、一つの食品には、現代の科学では解明できないものも含め、さまざまな栄養素が含まれている。
それに栄養素だけを問題にして栄養素を摂取するそれぞれの人間の吸収能力についてはあまり議論しない傾向がある。

食品成分表を見ると、育ち盛りの10歳の子どもも、70歳の老人も、ご飯一杯は177キロカロリーということになる。食物は体内で吸収されてはじめて熱量になるのだが、消化吸収能力は人によって違うはず。同じものを同じ量食べたからといって、子どもと老人が同じカロリーになるはずがない。また、同じ人でも精神状態や体調によって、消化吸収率がかなり違ってくる。

こういった人それぞれの違い(個人差)を考慮せず、「何グラムで何キロカロリー、だから多い、少ない」と計算するのは、あまりにも人間の身体を単純にとらえすぎているようである。


写真の説明:アーサー・ケストラー
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転載元転載元: 木庵先生の独り言

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