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https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%A7%E3%82%82%E8%B2%B4%E4%B9%83%E8%8A%B1%E8%A6%AA%E6%96%B9%E3%82%92%E5%8F%A9%E3%81%8F%E4%BA%BA%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%82%8A%E3%81%A0%E3%81%99%E3%80%8C%E4%BA%8B%E5%A4%A7%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E7%97%85/ar-BBNOxUv#page=2
先日、夕方のニュースをつけていたら、二度見してしまうようなすごい場面に出くわした。
この日は、貴乃花親方が「電撃引退」を発表したということもあって、スタジオには相撲記者クラブ会友のおじいちゃ……いや、いや、経験豊富なベテランジャーナリストの方がいらっしゃっていた。
会見のVTRが流れた後、強面のキャスターが、なぜこんなタイミングで引退をするのだと疑問を投げかける。会見では、告発状(貴ノ岩の受けた暴行事件に関して、内閣府に告発状を提出していた)が事実ではないと認めるよう迫られたからだと説明しているが、もっと別の理由があるのでは、みたいな感じで水を向けた。
すると、ジャーナリスト氏は吐き捨てるようにこんなことをおっしゃったのである。
「まあ、自尊心の強い人ですからね。一兵卒にはなったけれど結果が出なかった。それが我慢できなかったのでしょう」
思わず飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。キャスターは「なるほど」と大きくうなずき納得した様子だったが、「印象操作」にもほどがあるからだ。
このやり取りが公共の電波にのって日本全国津々浦々へ流れたら、ピュアな視聴者の多くは、貴乃花親方が引退した本当の理由は、プライドの高さゆえ、「一兵卒」が耐えきれなくなってヘソを曲げたからだと思ってしまう。
もちろん、親方が「年寄なんてやってられっかよ」と周囲にくだを巻いていた事実があるとかなら分かるが、完全にジャーナリスト氏のフィーリングである。長年、相撲界に貢献してきた功労者が自分自身で語った引退理由を、わずか30分で「全否定」してしまう社会のムードが、なんだか薄ら寒い物を感じる。
●なぜ貴乃花親方は叩かれるのか
なんてことを言うと、「こいつは貴乃花シンパだ!」となって、ここから先は何も言っても「と、相撲協会のアンチが言いました」と聞く耳を持っていただけないのでしっかりと釈明をさせていただくと、親方に特に肩入れをしているわけではない。と言うより、相撲にそんなに興味もないので、この世界がどうなろうとも知ったことではないし、誰が権力を握ってもあまり関心もないのだ。
興味があるのはただひとつ、なぜこの人がここまで叩かれるのかということだ。
「洗脳されている」「目つきがヤバい」などの誹謗(ひぼう)中傷を除外すると、ネットなどで散見される「貴乃花批判」のパターンは主に以下のような感じである。
「改革すると大見得切ったのに、自分の思い通りにならないから辞めるなんて我慢が足りない」
「弟子のため、弟子のためと言いながら、部屋を存続させないのは無責任すぎる」
「一兵卒になると宣言したくせに、自分の非を認めて一門に入れてもらおうとしないなんてプライドが高すぎる」
筆者はこれまで報道対策アドバイザーとして、スキャンダル政治家や不倫タレントや不祥事企業など、ありとあらゆる「叩かれる人」を研究してきた。だが、そういう人たちと比べると、親方はやや異なり、かなりトリッキーな叩かれ方をしているのだ。
ご自身が不正を行なったり何かモラルに反したりしたわけではない。むしろ、弟子が横綱たちに密室でボコボコにされるという理不尽な暴力を受けた「被害者」だ。にもかかわらず、一部の人たちからは暴行を行った日馬富士や、その事実をネグろうとした相撲協会と同じか、それ以上の「罪人」扱いとなっている。
「協会もダメだけど、貴乃花も悪いよね」「信念を貫くのは立派だけど頑なすぎてダメ」「もっと世渡り上手にやればいいんだよ」。
このように貴乃花親方に苦言を呈する人たちの「ロジック」のムダな贅肉を削ぎ落としていくと、最終的にはこの一言にすべて集約される。
「組織に従わないのがけしからん」
●「ほう・れん・そう」をしていないので大問題
確かに、暴行事件はあった。でも、組織人なんだから協会幹部と連携して事態を丸く収めるのが筋ではないか。協会の対応にも問題があったのは事実だが、なんの説明もなく唐突に、内閣府に告発状というのは、余計な混乱を引き起こしてファンを悲しませている――。最もらしい理屈をこねているが、その主張をよくよくかみ砕いて見ると、なんのことはない、親方が相撲協会にちゃんと「ほう・れん・そう」をしていないことが、大問題だと糾弾しているのだ。
チーム大好き、集団主義の日本人らしいと言えばらしいが、集団リンチやその被害を闇に葬り去ろうとすることよりも、「組織のルールに従わない」ことのほうがはるかに問題で、はるかに罪深いとするのは、いささか度が過ぎている。
なぜここまで日本人は「組織」をあがめたてるのか。そして、なぜ「組織に背を向ける者」に嫌悪感を抱くのだろうか。個人的には、我々日本人が祖先から脈々と受け継いできた「事大主義」が影響しているのではないかと考えている。
事大主義とは、「自分の信念をもたず、支配的な勢力や風潮に迎合して自己保身を図ろうとする態度・考え方」だ。オレはそんなズルい人間じゃないぞと憤慨する方も多いだろうが、これは「少しも珍しくない日本人的現象」だと指摘した人がいる。
日本と日本人について考察し続けてきた評論家・山本七平だ。
著書『一下級将校の見た帝国陸軍』(文春文庫)の中に、「ある役付きの位置」に置かれると一瞬にして態度を変えるという、事大主義に頭のてっぺんからつま先まで毒された人が登場する。
学生として徴兵検査を受けにきた会場で、山本は声高で威圧的な軍隊調で学生たちに怒鳴り散らす1人の男が目についた。どこかで見たことがあると思ったら、彼はいつも家に御用聞きとして訪れる商店の配達人だった。愛想笑いを浮かべ、もみ手で誰に対しても偉ぶることのないその御用聞きは、山本の視線に気付き怒声をあげた。 |

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