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「崖の上のポニョ」公開前のお話ですが
NHKの「仕事の流儀」という番組で宮崎駿さんが特集されました。
彼のアニメ制作にかける情熱がひしひしと伝わってくる内容で
作り手というのはこれほどまでに身を削るものかと痛々しい思いで見ていましたが
その中で、ひよの心に深く突き刺さったエピソードがあったのでご紹介します。
「ポニョ」のアニメ制作に入り、スタジオジブリのアニメーターたちは
分業でセル画制作に当たっていたのですが、その途中で宮崎さんが
ベテランアニメーターを激しく叱責するシーンがありました。
主人公の少年の画をチェックする宮崎さんの目が厳しく光ります。
そして「これは宗介じゃない」と言うのです。
「どんどん絵が変わってきてる。こんなのは(自分が求める少年像と)違う。
なんでこうなっちゃったんですか。描き直して下さい。
描けないからと言って、作品を自分の方に引き寄せるんじゃない」
ガツンと頭を殴られた気分でした。
まるで自分に言われたみたいなショック。
そうだ。それはひよたち翻訳者にも当てはまることなんだ。
作品の本質を見抜こうとする努力が足りず、それ故、的確な日本語で表現できず
経験とテクニックでごまかして、作品を自分の方に引き寄せた翻訳をしていないだろうか。
本当にしていないと言えるだろうか。
映像翻訳にはある種のクリエイター的要素も必要です。
でもそれは原作の世界から飛び出るほど主張してはいけないもの。
作品の本質に寄り添い、できるだけ離れず、
ひたすら真摯に日本語に変換していくことが、基本中の基本なのです。
それは作品や作り手に対する最低限の礼儀でもあります。
その礼儀を無意識に欠いてはいないだろうか?
本当に欠いていないと言えるだろうか?
字幕も吹き替えもさまざまな制約の中で作らなくてはいけません。
だからこそ、この仕事を続ける限り永遠の課題として
常に念頭に置いておかなくてはいけないことだと思いました。
そして、宮崎さんがそのアニメーターに投げかけた
「まるでケンカを売られている気分です。非常に不愉快です。」
という言葉を、自分の肝に銘じて、楔としなくてはと強く思ったのでした。
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