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NYに住んでいた1980年代後半、いつもの如くW 4 ST.にあるヴィレッジのTOWER RECORDでレコードを漁っていた時だった。Jazzのフロアーになんだか気持ちの良い音楽が流れてきた。良いなぁなどと思いながら、なおもレコードを漁っていたのだが、どうもさっきから店内に流れているそのアルバムの音が心地良いのだ。探し物もそこそこに、キャッシャーにいた黒人のお兄さんに「今流れているのは何?」と訊いてみた。するとナントカカントカと教えてくれるのだが、どうにも聞いた事の無い名前でわからない。筆者の様子を見てお兄さんはそのアルバムのある所まで連れて行ってくれた。そこはなんとブラジル音楽のコーナーで、手に取って見せてくれたのがこれまたその優美な響きの音楽には似合わない、新興宗教の教祖みたいなオジサンが点描イラストで描かれた安っぽいジャケットのこのアルバムだった。筆者の英語があまりにもダメダメで、全く違うものを案内されてしまったのかと不安になりながらも、そのCDを買って家に帰った。
果たしてそのCDは、先程店内に空気の様に満ちていたあの音楽で間違いなかった。ちょっと映画音楽的なオーケストラの扱い方、複雑な響きを持った気持ちの良いハーモニーは、イージー・リスニング好きで、なおかつテンション・コード好きでもある筆者の好みにピタリと一致した。
エルメト・パスコールなのかエルメート・パスコァルなのか、正確な読み方がいまだに良く判らないのだが、この音楽家はブラジル人で、かつてアイルト・モレイラ(アイアート)がチック・コリアのリターン・トゥ・フォーエヴァーに参加するまで一緒に活動しており、このアルバムはその彼のファースト・アルバムの再発盤だったのだ。キーボードやフルート、その他身の回りにあるどんなものでも楽器として活用してしまう、かなりブッ飛んだ人である。しかし、彼は音楽的教育は全く受けておらず、それがむしろ彼が音楽をピュアに創る事が出来る要因になっているのかもしれない。意外に日本でも早くから人気が高く、実は今年もう69歳という高齢であるが割とちょくちょく来日公演などもこなしている。
実際、ストリングスとRhodes電気ピアノの音がとても心地良いこのアルバムは友人達に聴かせても一様に評判が良い。時々フリー・ジャズの様にブチ飛びそうになる事があるが、気持ちの良いうちに帰ってきてくれるので、これはこれでまた良い。
ブラジルの音楽家には変わった人が多いのが特徴だが、とんでもなく高度な音楽を創る人が多いのも特長と云えよう。しかし、筆者も色々な偶然で良い音楽に巡り逢う事が多いので、そういう意味ではとても恵まれているなぁと実感する。
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▼曲目
1.COALHADA (Yogurt)
2.HERMETO
3.GUIZOS (Bells)
4.FLOR DO AMOR (The Love Flower)
5.ALICATE (Pliers)
6.VELORIO (Mourning)
7.AS MARIANAS (The Marianas)
8.FABIOLA
9.VOU PRA RIO CLARO (I Am Going To Rio Claro) ※
10.MIMHA FAMILIA (My Family) ※
11.SUDDENLY ※
※DOM SALVADORの「Mimha Familia」というアルバムからのボーナストラック
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