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誰にとってもある程度は同じ様なものであるとは思うのだが、筆者の場合、小学校時代に体験した数々の出来事が、四半世紀を経た現在に於いても性格に強い影響を与えている。あの頃に得た知識、手で触れたもの、目で見たもの、そして耳で聴いたもの、全てが自分を形成する根底の部分でとても重要な意味を持っている。筆者の場合はまさにそれが1970年代だったと云う事になる。町を走る自動車の形も、怪しい原料で出来た駄菓子の味も、今とは違ってとても道徳的な意味合いを持ったアニメーションのストーリーも、そしてロマンティシズムに溢れていた音楽の熱っぽさも、やはりこの'70年代のものにとても共感するのだ。
'70年代というと、日本の音楽界に蒔かれたロックの種が芽となって育ってきた時期であり、当時の若い音楽家達が海外の新しい音楽を積極的に聴いて研究し、またそれを自分のものにして新しい解釈で自分たちの音楽を創り出したりといった事が盛んに行われる様になっていた。だから今の耳で聴くと技術的な未熟さを感じる事はままあるものの、音楽の本質的な部分で急成長を遂げた「日本での新しい音楽」を聴く事が出来る時期でもある。
サディスティックスとはもの凄いバンド名ではあるが、これは元々加藤和彦率いるサディスティック・ミカ・バンドの面子が、ミカ・バンド解散の後に丁度ヴォーカリストを外した形で活動を続けた事による。全然違う例えだが、ジェームス・ブラウンのバンドがJB'sとして活動しているのと形態は似ている。即ち、高中正義のギターに今井裕のキーボード、後藤次利のベースに高橋幸宏のドラムスといった豪華4人編成である。バンドの顔である加藤和彦とミカを失ってはしまったものの、時代は正にフュージョン・ブームの夜明けであり、元々当時の日本人ミュージシャンの中では凄腕と云われた彼等の事、海の向こうのスタッフ(=Stuff、バンド名)の成功を横目で見て頑張っていたに違いない。
実際、日本でそうしたプロ集団的なミュージシャンと云えば既に何度も紹介してきた「はっぴいえんど」に端を発する細野晴臣〜ティン・パン・アレイ周辺の人達が居るが、サディスティックスはもう一世代若い。しかし、それ故に更に新しい演奏技術とセンスを持ち併せている、その後の日本音楽界にやはり大きな貢献をしていく、もう一つの太い流れである。
サディスティックスは3枚のアルバムを残して自然消滅するが、セールス的に成功したとは残念ながら云えない。しかし、ここから高中はギタリストとして前代未聞の大ヒットをし、高橋はYMOでこちらも大ヒット、後藤は裏方になるが数々のミュージシャンの重要なバックアップを経て「おニャン子クラブ」系でまた大ヒットと、それぞれの道で大きな飛躍をしていく。
このアルバムは彼等がまだ大ブレイクする寸前の、お互いをリスペクトし合いながら創り上げられた、ダイアモンドの原石の様な作品である。だけど、'70年代の雰囲気を色濃く持っているこのアルバムを筆者はかなり好きである。勿論これだけの面子が集まって創り上げた作品である、ハイ・センスで上質なポップスには仕上がっている。しかし、YMOの時代の高橋の「何かやってやろう」的な構えは感じないのだが、逆に好きな事を好きな様に気ままに歌っている感じも、なんともアンニュイではあるが好きなのである。
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▼曲目
1.WE ARE JUST TAKING OFF
2.BLUE CURACAO ※
3.ADIOS
4.CLOSE YOUR EYES
5.NAO
6.GAME
7.ON THE SEASHORE
8.FLOATING ON THE WAVES
※スペイン語で表記される独特のアルファベットが表示出来ないので、
似た形のアルファベットで代用して表記しています。
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