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今ではJ-POPSという言葉が定着している日本人ミュージシャンによるポップス・ミュージックだが、80年代はまだニューミュージックと呼んでフォークとは区別していた。要はフォーク(日本風の)ではなく、ロックでもなく、また歌謡曲とも違う新しい音楽と云う意味で使っていたのだろう。所謂ニューウェーヴとは言葉の響きは似ているが全く違うものだ。誤解を恐れずにニューミュージックを定義したとすると、フォークの様な詩的、或いはメッセージ性を持った歌詞を、ロックやフュージョン等の当時の先進的なサウンド(往々にしてエレクトリック楽器の力を借り)にのせて歌う作品を総称して呼ぶジャンルの名前である。とはいえ、別に決まり事でもないのでハッキリした定義ではなく、AOR風なものからテクノ風なもの、ロックっぽいものまで幅広く指していた。
井上陽水と云えばユーミン共々、ニューミュージック界の代表として以前からとても人気のあるミュージシャンだった。井上陽水が凄いなぁと思うのは、デビュー以来常に音楽界に新しい提案をしつつも、その基本には普遍的でキャッチーなメロディ、色々なメッセージを持った実験的な歌詞、しっかりと安定した歌唱力等々を併せ持っている事であろう。シンガー・ソングライターとしては理想的だ。
このアルバムは陽水が今よりもっとフォーク色の強かった1973年、4作目のアルバムだ。タイトル曲の『氷の世界』も有名だが、なんといってもこのアルバムでは『心もよう』がハイライトだろう。サビで入ってくるピーター・ロビンソンの、まるでエレキギターの様な激しい電気ハープシコード(恐らくはホーナー・クラヴィネット)の音が、この曲のもつ精神的に追いつめられる様な感じを良く表している。アルバム全体の雰囲気としては、今となっては大分古っぽいサウンドなのではあるが、それでも日本の70年代初期の作品としてみれば、なかなかポップで新しい音作りにはなっている。またしても細野晴臣が3曲でベーシストとして参加しているし、高中正義も2曲でギターを弾いている他に『Fun』では珍しくベース・プレイを披露している。成毛滋のバンド「フライドエッグ」以外ではなかなか聴く事の出来ない高中のベースは興味深い。ちょっとフレージングはギター的ではあるが、シャッフルしながらノリを出している辺りはなかなかだ。他にも所々で深町純がシンセサイザー、メロトロン、クラヴィネット等のキーボード類で彩りを添えたりしている。
陽水に関しては80年代に入って、よりポップス度を高めて聴き易くなっていき、1990年の「ハンサムボーイ」等でニューミュージック路線を極めた感もある。しかし、筆者は『心もよう』を聴くと、一気にこの曲をよく聴いていた中学生の頃の自分に引き戻され、胸の奥の方で暖かいものが湧き出してくる感覚が何とも云えず好きだ。素朴な歌の中に、彼の類い希なる才能を感じずにはいられない。
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▼曲目
1.あかずの踏切り
2.はじまり
3.帰れない二人
4.チエちゃん
5.氷の世界
6.白い一日
7.心もよう
8.待ちぼうけ
9.桜三月散歩道
10.Fun
11.小春おばさん
12.おやすみ
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失礼いたします。カミさんに「氷の世界」を尾崎豊の「デビュー前の貴重な音源だ」と言って聴かせてみたら、納得していました。それくらい陽水にしては熱い歌ですね。
2005/3/20(日) 午後 11:40
このアルバムは母が好きで持っていました。今聴いても色あせないっていうよりも、むしろカッコいい。特に「氷の世界」のリフはロック好きの僕にもかなりアピールがありました。陽水の世界感は大好きです。
2005/3/21(月) 午前 0:44 [ themanovertherainbow ]
陽水、流石に人気ありますね。やはり本物の音楽を作る人は時代にかかわらず受け入れられますものね。 ※themanovertherainbowさん、折角コメント下さったのがダブって投稿した記事の方だったので削除してしまいました。勝手ながらthemanovertherainbowさんのコメントをこちらに移させて頂きました。m(_ _)m
2005/3/21(月) 午前 1:05