|
今号は1957年(昭和32年)に公開された「怪猫 夜泣き沼」です。入江たか子さんの怪猫シリーズ最終作で、残念ながら入江さん主演ではないのですが、これまでとは違った彼女の演技を見ることができ、またよく出来た時代劇としても楽しめる映画です。
販売時のパッケージと中身の冊子、右下クリックで拡大できます。
表紙を開くと公開当時のポスター折り込み、その裏の3ページが「妖怪図鑑」として「こま」が取り憑く2人と竜造寺閑斉の亡霊の紹介。4ページは「台本とその周辺」として浅井和康さんによる解説、5ページが「解説&みどころ」となっています。
4ページには、完成映像は台本よりもシーン数/セリフとも少なく、特に登場人物の設定の説明など「男女の関係を扱った場面」が多く削除されているとのことで、これは赤胴鈴之助シリーズが併映に決まったからではないかとの推察があります。
ポスターページと3〜5ページ
6〜7ページは「俳優名鑑」で、6ページに4人(勝新太郎さん/三田登喜子さん/阿井美千子さん/千葉登四男さん)・7ページに大勢という構成。入江たか子さんは、黒幕の家老・磯早豊前(大邦一公さん)の妹・浪路なので、扱いは左ページになっています。また家老の母親・お杉(小林和奈枝さん)は、vol32「赤胴鈴之助 三つ目の鳥人」で巫女さんだった方ですね。今回もなかなか怪しい役どころでした。
8〜9ページは「撮影秘話」で、撮影中の田坂勝彦監督がらみの写真3枚と、撮影風景のスナップ4枚で構成されています。ここには田坂監督の簡単なプロフィールと、入江たか子さんが翌年に女優業を引退するも、後年 椿三十郎/時をかける少女/麗猫伝説に出演されたことにも触れています。
10ページの「資料館」には、立看板用ポスターや地方版B3ポスター、新聞広告などの宣材が掲載されています。どの宣材にも必ず「主役と怪猫」の勝新太郎さん/三田登喜子さん/入江たか子さんの顔が入っています。
次号は、1960年(昭和35年)に公開された「透明天狗」です。既刊のvol37「透明剣士」が「ホラーテイストだった透明天狗をスポ根ノリにしたもの」とのことだったので、どんな映画なのか楽しみです。
・・・
今作は完全に「勝新太郎さん主演の時代劇」で、入江さんのご活躍はその後ろで花を添えるような形になっていました。個人的にはちょっと寂しいのですが、お家乗っ取り騒動の勧善懲悪もの・馴染みの少ない(高尚なイメージのある)能のエピソード・切れの良いチャンバラといった側面から捉えると、正統派時代劇として良く出来ている映画です。そしてそこに、うまく化け猫をからめて大活躍させてます。
いわば「化け猫映画」と「正統派時代劇」の見事な融合。怪奇映画に寄りすぎることもなく、またvol44「怪猫 呪いの壁」ほどチャンバラ映画に寄りすぎることもなく、かと言って中途半端な印象も感じない、どちらのファンにも見応えのある「エンターテインメント時代劇」といった趣の映画でした。
鍋島藩の家老・磯早豊前(大邦一公さん)が暗躍して、鼓の腕が自慢のバカ殿様・鍋島丹後守(細川俊夫さん)をそそのかし、殿様のご意見番であり鼓の師匠でもある竜造寺閑斉(荒木忍さん)を殺害、忠義な家臣・小森一馬(勝新太郎さん)も放逐させて、お家乗っ取りを謀ります。
(実は「バカ殿様」も元は聡明だったのに、磯早豊前に褒め殺しされ続けて「目が曇ってしまった」とのことで、豊前の母親・お杉(小林和奈枝さん)が用意した「呪いの鼓」を「高級な鼓」と思い込まされるほど。竜造寺閑斉や小森一馬の進言も素直に聞けなくなってます)
そこへ、閑斉のことを心配して追ってきた黒猫の「こま」が、絶命した閑斉の血をすすって化け猫になり復讐を始めます。城内に鼓の音が響くと、呪いの鼓の上に竜造寺閑斉の生首が現れ、磯早豊前を手伝っていた腰元が喉を噛み切られて殺されていきます。
その後、お杉に憑依していた「こま」はいったん追い詰められ額に傷を受けますが、豊前に刺される直前に、豊前の妹・浪路(入江たか子さん)を拘束して素早く乗り移ります。ここの「鼓のバトンタッチ」の演出がさりげなく、かつ観客にわかりやすく、さらにその後に入江さんの顔つきが一変する演出に繋がっています。
アップになるにつれ、額の傷と隈取りが浮かび上がります
竜造寺閑斉の娘・園枝(三田登喜子さん)の懸命な働きで、やっと自分の愚かさに気付いた鍋島丹後守。閑斉の供養として自ら能を奉納することにし、小森一馬の放逐も取り消します。
殿の洗脳計画が頓挫し、これでは落ちぶれたままになってしまうと焦った磯早豊前は、能のワキ方・大北孫兵ヱ(千葉登四男さん)に、シテ方の殿を殺害するように命じます。
ところがこの企みを「こま」(入江さん)が大北孫兵ヱから聞き出し「なに、殿を?」と聞こえよがしに大声で話したことで園枝が気づき、小森一馬に知らせます。
そして殿と入れ替わった小森一馬が舞台の上で悪事を暴き大立ち回り。そこへ「こま」も参戦して、協力して家老と腹心たちを全滅させます。
悪役に「こま」を憑依させて味方とすることで、主人公が暗殺計画を知る行の無理矢理な印象も薄くなり、また敵の中に潜んで虎視眈々と復讐の機会を狙う「こま」の気持ちも強調した形になっています。
またラストのチャンバラシーンでは、勝さんが「とりゃー、てい、おりゃー」と力強く敵をなぎ倒す後ろで、逃げる家老を入江さんが華麗に追いかけていくという美しい画面も印象的でした。時代劇と怪奇映画の融合を象徴するシーンですね。
素直に、見事な映画だと思いました。
・・・しかし、こうして並べると良い映画が多いですね。できればあと1回だけ延長して、藤村志保さんの「怪談 雪女郎」もラインナップに入れてくれないかなぁ・・・撮影秘話とか撮影中のスナップ写真とか見たいなぁ・・・
|

- >
- エンターテインメント
- >
- 映画
- >
- 邦画





【豆はんてん】お疲れ様です!入江さんは「時かけ」で深町くんの「祖母」として出演していましたね。最近のテレビ版では、同じ役回り(偽りの肉親)をマリバロンが。今、思うと複雑です。
実は、初めて「大映」買いました!(例の企画書の前半が載ってるやつ)
駅ビル書店では、最新と一つ前しか置かないのでギリギリでした。後半も早く買わないと…。ゴジラのほうもゴッドマン見たいし、金も場所もヤバすぎです。車に、結構本が積んであるんですよ!
2016/8/30(火) 午前 9:53 [ mam***** ]
「怪談 雪女郎」は欲しいですね。
あととても怖いと云う山本薩夫の「牡丹燈籠」も
そして怖いだけでは無くて内包された幽玄美…
Jホラーと奉られる前の此の時代の恐怖譚は
中々に素敵…
「怪談おとし穴」は、それ程でも無いですが…
2016/8/30(火) 午後 10:59 [ light ]
豆はんてんさん、実は私は「時かけ」で入江さんを見初めて、当時ビデオが入手しやすい映画から遡っていって惚れ込んだんですよ。初めてお見かけしたときの「誰?この綺麗なおばあさん!」って思った衝撃は未だに…え、TV版では高畑さんでしたっけ。あぁ、あの方も入江さんとは違った魅力があって好きなんですよねぇ…なんか複雑です…orz
お、購入されたんですね。でもその状況だとほんとに大変そうですね…かといってロッカーとか借りてもですし、ここは一発「秘密基地」ノリで、マニアグッズを専門に収納する家をお借りになった方が…(笑)
2016/9/6(火) 午後 5:20 [ こーじぃ ]
lightさん、これだけ怪談シリーズを追加したのに
「怪談 雪女郎」が無いってのも不思議なんですよ。
当初の最終巻だった「鯨神」が中止になったのも
不思議ですし…権利関係とかあるんでしょうか?
あとそうそう、ぜひ「牡丹燈籠」も欲しいですね。
確かにJホラー以後の作品にも面白い・素晴らしい
のはありますけど、やっぱ「美しさ」も内包してる
この頃の方が私も好きですね〜
2016/9/6(火) 午後 5:34 [ こーじぃ ]