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足掛け3年に渡って刊行された大映特撮コレクション、最終号は1959年(昭和34年)に公開された、長谷川一夫さん主演の「四谷怪談」です。
販売時のパッケージと中身の冊子、右下クリックで拡大できます。 表紙を開くと公開当時のポスター折り込み、その裏の3ページが「幽霊図鑑」として「お岩」や「小平」の亡霊の解説、4ページは浅井和康さんによる「四谷怪談・脚本をめぐって」のコラム、5ページが「作品解説」として解説&みどころが書いてあります。
ポスターページと3〜5ページ
6〜7ページは「俳優名鑑」で、、6ページに長谷川一夫さんを筆頭にメインの7人・7ページにその他キャストという構成。長谷川一夫さんは「怪談映画」に初出演だったとのこと。脇役でも経験が無かったんですね。
8〜9ページは「資料館・特別編」として、かなり宣伝に力を入れていた様子が窺える大映スコープやポスターなどとともに、妖怪映画の人気から週刊少年マガジンで掲載された巻頭特集「パノラマ図解劇場 四谷怪談ウルトラ妖怪画報」が11ページ掲載されています。
6〜7ページ「俳優名鑑」、8〜10ページ「資料館」
10ページの「資料館」には立て看板ポスターやチラシ、新聞広告、ロビーカードなどが掲載されています。大映系の映画館ではなんと「1本立て公開」だったようです。まさに「イチ押し」の映画だったんですね。
そして今号が最終刊ということで「刊行終了のお知らせ」と「アンケート」が入っていました。隔週刊だったので120週間60作品、これで終了と思うと少し寂しい気がします。
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これまで数多く製作されてきた「四谷怪談」の映画、その中でも「長谷川一夫版」とも言える今作は、実は初見でした。公開当時は盛り上がっていたような感じですが、今となっては「長谷川一夫さんのもあったんだ」というほど埋もれてしまってますね。
公開年の1959年といえば、個人的に「すごい! これは最高の四谷怪談かも!」と思った新東宝・天知茂さん主演の「東海道四谷怪談」も封切られてます。もしかしたらあっちに負けたのか?・・・いやでも何度もリバイバル上映されたって書いてあるから人気だったんだよな・・・
一言で言えば「私には合わない映画」でした。面白いカメラワークや美しい絵面、考えられた演出、中田康子さんのお岩も辛さや怒りをぐっとこらえつつ伊右衛門が大好きで最後まで信じてる姿などなど、見どころも盛り沢山。
でも、でした。
「1つ貼って5文」の傘貼りをする毎日に飽きてちょくちょく釣りに出かけたりする民谷伊右衛門(長谷川一夫)は、妻のお岩(中田康子)に支えられながら仕官の口を捜していた。しかし、良い話があってもかなりの賄賂を渡さなければ門前払い、そんな状況に嫌気が差していて、お岩にも冷たくあたることが多かった。お岩が、妹夫婦・与茂七(林成年)とお袖(近藤美恵子)にもらった打ち掛けを着ていても、若い頃のものを引っ張り出したのかと言うほど無関心。
ただ、伊右衛門は男前だし、腕っ節はたつし、なかなか男気もあるので、似たような状況の旗本崩れ仲間からは慕われ頼りにされている。仲間がわざと商人ともめ事を起こしてボコられても、頼まれれば割って入って相手を叩きのめす。そこで仲間が相手から金をせしめ、伊右衛門はそのおこぼれを頂戴するという具合。
ある日、お岩の父親が持ってきてくれた仕官の口を頼ってみるが、やはり賄賂が必要で、伊右衛門は早々に追い返されてしまう。むしゃくしゃして立ち寄った茶屋で飲んでいると、店に難癖を付ける客がいて、鬱憤晴らしついでにその客を追い返す。
感謝する主人が名前を聞いても「助けようと思ってやったんじゃない」と名乗らずに店を出ていく伊右衛門。そこに立ち会わせていた武家の娘・お梅(浦路洋子)は伊右衛門に一目惚れ。なんとかして名前が知りたいと騒いでいると、伊右衛門の仲間・直助(高松英郎)がお梅に近づき、彼の詳細を教える。
後日、伊右衛門は「久しぶりに2人で出かけようか」とお岩を誘う。喜ぶお岩は弁当を作り始めるが、そこに仲間がやってきて「是非とも助けに来て欲しい」と頼まれ、伊右衛門は仲間との人付き合いを優先してしまう。
ところが、招かれたところで待っていたのは、お梅。お酌をし、しなだれかかったりして伊右衛門と添い遂げたいと誘惑するお梅だが、伊右衛門はその状況を楽しみながらも、のらりくらりとりあわない。
そんなことが何度か続き、お岩は遅く帰ってくる伊右衛門の着物から白粉の香りがすることに気付いた。流産してからずっと体調がすぐれないのが悪いのか、なにか他に不満でもあるのかと落ち込むお岩。お岩のことが好きな下男の小平(鶴見丈二)も、お岩が心配でたまらない。
小平が使いに呼び出され出ているとき、伊右衛門に頼まれていたものだと薬が届けられる。お岩は家に来ていた按摩の宅悦に頼んで薬を煎じてもらい飲もうとするが、すごく変な臭いがする。宅悦も臭いを嗅いでみると、やはり臭い。それでも旦那様のすすめだからと飲み干すお岩。
一方、伊右衛門はお梅から「奥さんが下男と不義密通している」と聞かされる。早く見切りを付けて自分と夫婦になって欲しい、奥さんが死ねば夫婦になってくれるのかと繰り返すお梅。
しばらくして、お岩は顔が熱いと訴え宅悦に手鏡を持ってくるように頼む。その顔を見て怯えてしまい鏡を懐に隠して「見ない方が良い」と言う宅悦だが、恐怖でろくに力が入らない。お岩は力ずくで鏡を奪い取り、そこに写った自分の顔を見て絶望する。
たくえつさま、鏡を渡してくだされ
逃げていく宅悦。そこへ、なぜか伊右衛門の仲間に難癖を付けられ、袋だたきの目に遭っていた小平が帰ってくる。変わり果てたお岩を心配する小平、その気持ちが高じて後ろから抱きしめてしまう小平。拒否するお岩。
間が悪く帰宅した伊右衛門はその姿を見て「まさかと思ったが」と2人を責め、出て行ってしまう。そこにすかさず現れた直助が悪態をついていると「伊右衛門様がこんなことをするはずがない、さてはお主が仕組んだな」とお岩に企みを言い当てられ、直助は激昂してお岩を斬り捨ててしまう。
騙されてるとは知らない伊右衛門はお梅の家に行くが、そこにお岩の亡霊が現れる。伊右衛門はお岩に斬りつけると、それはお梅だった。再び出るお岩、斬るとお梅。伊右衛門は家から逃げ出し、お岩の供養のため寺にこもる。お梅は瀕死の重傷で床につく。
洗濯屋を営んでいる与茂七とお袖は「死体から着物をはぎ取って売り飛ばす商売」をしている者が預けていった打ち掛けを見て、それがお岩に贈ったものだと気付き、お岩の異変を察する。
お袖は以前から言い寄られていたのを利用して直助を誘い出し、真相を話させる。与茂七に連れてこられそれを聞いていた伊右衛門は真実を知り「岩の仇!」と直助を斬り、さらにお梅の家に乗り込んで首謀者のお梅の父をはじめ屋敷の家来たちも斬り捨て、寺に帰ってきて、そのまま衰弱死(?)してしまう。
そしてお岩の打ち掛けがひとりでに浮かび上がり、伊右衛門の亡骸にそっと被さる。
・・・これは四谷怪談なのか?(苦笑)
この「四谷怪談」での民谷伊右衛門は、元の話はもちろん、天知茂さんの「東海道四谷怪談」や、同じ大映・佐藤慶さんの「四谷怪談 お岩の亡霊」などで描かれた人物像とはかなり違った、けっこう「いいヒト」です。決して悪人では無い。それどころか、言ってしまえば伊右衛門も被害者で、最後は妻の仇討ちまでやってのけます。
まあ、ちょっと若い女といちゃついたり、お岩にあらぬ疑いをかけたりはしてますが、決して不義密通まではしていないし、冷たいように見えて妻を愛し続けてます。あくまで横恋慕したお梅、お梅の父親、お梅の乳母の3人が企んだことと、それを実行した直助や友人たちの犯罪に巻き込まれただけ。敢えて言うなら「モテる伊右衛門が悪い」という程度。
原作のある作品の映画化って、主役・脚本・監督の組み合わせで、細かな人物像はもちろん全体の雰囲気も様々に変化します。ともすればストーリーも変わってきます。この「四谷怪談」は最もわかりやすい例ですね。
若山富三郎さんの伊右衛門はデブだけどしっかり怖かった、仲代達矢さんのは豪華俳優陣に囲まれて窮屈そうながらストレートな性格で笑えた、佐藤慶さんのは一見しただけでそれとわかる悪人が優しさを見せる恐さがあった、天知茂さんはこれでもかとザクザク刺された・・・まさに三者三様・十人十色。様々な四谷怪談があり、それぞれの面白さがありました。
そう思うと・・・大映特撮コレクションのシリーズ最後を飾る作品を、大映のウルトラスーパービッグマキシムグレートストロング大スター・長谷川一夫さんで締めくくろうというのは理解できるのですが・・・どうにも残念です。
さらに延長して欲しい・・・まだまだ名作があるのに・・・
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