今号は1960年(昭和35年)に公開された「透明天狗」です。同じ吉田鉄郎さんの脚本によるvol37「透明剣士」のオリジナルとのことで、どうアプローチが違うのか楽しみにしていました。
販売時のパッケージと中身の冊子、右下クリックで拡大できます。
今回はいつもの折り込みポスターが無く、ページ数が少なくなっています。まず表紙を開くと右ページが目次、左ページ(1ページ)が「作品解説」で、大映ニュースで使われたと思われる写真と「解説&みどころ」が掲載されています。ここには「時代劇に透明人間、荒唐無稽のようだがミステリータッチで見どころも多い」ということが書いてあります。
3ページ目には「怪人図鑑」として透明天狗の解説と説明の写真が3点、4ページは浅井和康さんによる「台本とその周辺」が掲載されています。ここには「鞍馬天狗」と「透明人間」の姿がどちらも「黒」を基調としていたこと、和のヒーロー「鞍馬天狗」に洋の「透明人間」を掛け合わせた大胆な企画だったことと、鞍馬天狗の歴史が書いてあります。
目次と1〜3ページ
4〜5ページは「俳優名鑑」で、4ページに4人(中村豊さん/近藤美恵子さん/島田竜三さん/真城千都世さん)・5ページに大勢という構成。島田竜三さんは顔も声も印象的な方なので、今回の覆面/透明の役に抜擢されたのかもしれませんね。
6〜7ページは「撮影秘話」で、中村豊さん/夢路いとしさん/喜味こいしさんの写真や、撮影風景のスナップ4点が掲載されています。ここの解説には、この映画が「大映の透明人間3作目」であったことと、赤胴鈴之助のような明朗痛快な路線ではない「怪奇特撮時代劇」という新しい路線となったことが書いてあります。
4〜5ページ「俳優名鑑」、6〜7ページ「撮影秘話」、8ページ「資料館」
8ページの「資料館」には地方版ポスター1点、大映プレスのウラ面が1点の他は、朝日/毎日/読売の各社新聞広告が掲載されています。面白いことに、新聞広告はすべてキャッチコピーが異なってます。
・覆面だけが、刀だけが斬りまくる
・お命頂戴、透明天狗 只今参上
・魔か天狗か、顔のない白覆面が飛んで、斬って走る
・白覆面に首がなく、胴をはらえば身体が消える、空を斬らせてあざ笑う快剣士
同じ映画のような、違うようなという感じですね。4つ目のは完全に「透明」ではなく存在が消えてる解釈ですし・・・もしや、ある程度のストーリーを見せておいて、宣伝文句は各紙に好きに書かせたのかも、とも思えます。
次号は、1952年(昭和27年)に公開された、水戸光子さん主演の「怪談深川情話」です。
水戸光子さんといえば・・・1965年生まれの私にとっては、女優さんというよりも、ルバング島から帰還された小野田少尉が、好きな女性のタイプを聞かれて「水戸光子みたいなひと」とお話しされていた方、という印象の方が強いです・・・すみません・・・。
・・・
中心となる登場人物が少ないせいもあって、透明天狗の正体はすぐにわかります。本誌の解説では「そう思わせといて意外な人物という効果」と書いてありますが、それは難しいです。透明天狗の声も笑い方も、誰がどう聞いても、主人公の友人・佐々木昌之助(島田竜三さん)だし。
なので、おそらく製作したときの狙いは、わりと早いうちに「観客には正体がわかっている」状態に持っていき、そこから透明天狗の復讐の標的=犯人捜しや、天狗の葛藤・正体を明かす過程といった「登場人物の心情やストーリーを楽しませよう」というものではなかったかと思います。
透明になる「南蛮渡来の薬」も、場面によって服まで消えてたり身体だけ消えたりと都合のいい=(良い意味で)細かいことは気にしない=絵的な面白さ優先という代物になっていたり、透明天狗(佐々木昌之助/数馬)にわかりやすい声質の島田竜三さんを起用したのも、同じ理由ではないかと思います。
自ら頭巾を掴んで脱ぐと、向こうが見えてます
ゆっくり包帯を解く透明人間よりもインパクトあり
主人公・新八郎(中村豊さん)は貧乏長屋に住んでいる若い侍、どことなくやんごとなき方のような雰囲気もあるのに気さくな性格なので「若旦那」と呼ばれて親しまれている。そして、目明かしの清吉(南部彰三さん)の娘・お仙(近藤美恵子さん)は新八郎に想いを寄せている。そこへ、新八郎の友人・同心の佐々木昌之助(島田竜三さん)が赴任してくる。
その頃、目付の館に「透明天狗」と名乗る透明人間が現れ、これから連続殺人をすると宣言していき、巷でも物が勝手に動いたら「天狗が出た」と騒がれるようになる。
ある夜、見回りをしていた清吉の目の前で無人の大八車が走り出し、清吉は透明人間と格闘になる。透明人間は「聞きたいことがある」と言うが、清吉は倒れた材木の下敷きになって死んでしまう。
次に殺されたのは、1人の与力。透明天狗の犯行予告から、かつて大名の不正を隠すために勘定奉行を陥れて無実の罪で切腹に追い込んだ面子が、透明天狗の狙いらしいと判明する。
実は新八郎は、かつてニセの資料を掴まされたことに気付かず、件の勘定奉行に有罪を言い渡した勘定吟味役の息子。自分の父親も、透明天狗の復讐相手の1人となっていることに気づき、透明天狗になりすまして、黒幕である大名の正体を記した訴状を手に入れる。
一方、新八郎が勘定吟味役の息子と知った昌之助は態度が急変。これに気付いた新八郎が、彼の妹・八重(真城千都世さん)から、実は昌之助が勘定奉行の息子・数馬だということを聞き出す。
新八郎は勘定吟味役の父親に、大名の不正を糾弾して数馬の家を復興してもらうよう懇願するが、すでに透明天狗は目的を遂げに来ていた。新八郎の必死の説得、それに対し「俺の正体を知ったならやらせてくれ」と聞く耳を持たない(でも躊躇してる)透明天狗。
このシーンは雪が積もっていて透明天狗の足跡がわかるのですが、前に進んだり、後ずさったり、膝をついたりという表現をすることによって、非情に徹しきれない透明天狗の人間臭さを表現していて秀逸でした。
そしてラストは、悪いことをした人間がすべて処罰されると締めくくります。透明天狗も、理由はどうあれ何人も人を殺めた罪を一身に背負います。
この映画のリメイクと言われる「透明剣士」と較べてちょっと難解な部分もありますが、むしろこれぐらいの難しさの方が、子供に見せるにはいい映画だなと感じました。話そのものも面白いし、感情表現もわかりやすいわりに大人びてますし。
ああ、でも透明剣士も、あの一途な雰囲気は捨てがたいなぁ・・・