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「わたし、落ち込んでいたときに、物理学の授業で助けられたことがあるの」
真美は、ころころとした声で言った。
「どういうこと?」
ユミは、あまり関心ががなさそうに聞きかえした。
「彼と別れて凹んでいたとき、物理授業で先生が原子の図を描きながら、電子は原子核のまわりを回
っている、という説明しているのをボーっと聞いていたの。すると自分の体はぶんぶんと高速で動く陽子
と電子の塊だというイメージを感じたの。元気のないわたしの気持ちも、そんなぶんぶんと動いている体
を持っていると思うと、なんだか元気が出てきたのよ」
「うそ〜!」
「半分は冗談だけど、半分は本当よ」
「真美は、単純ね」
「世の中は、案外単純なものじゃないかしら。自分が勝手に複雑にしているだけかもよ」
注文したコーヒーが運ばれてきた。
真美は、何も入れないコーヒーをスプーンでぐるぐる回し、そこにすっとミルクを入れた。
「ほら、銀河系の誕生よ」
ミルクは、ぐるぐると渦を巻きながら小さな銀河を形成した。
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