★★★POPLIFE★★★

あたしの毎日。のぞいてください。色とりどりの感情が咲き乱れる毎日をそれぞれの感性で受け取って. 飛び跳ねて,幸せで楽しい日々を☆

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透明人間

電話に向かって泣いている女の声がする。

「最近、ストーカーがあたしを狙っているみたいで・・・。
 怖くて眠れないの。助けて!」

その男は金もなく、喧嘩も弱かったが、
女を好きな気持ちは誰よりも人一倍大きかった。

「俺が助けてあげるよ、心配しないで。」

男は女を助けようと心に誓った。
そんな男のもとへ、一枚のチラシが舞い込んだ。

【K探偵事務所】
 あなたの悩みをお聞かせください。
 とくにややっこしい恋愛関係のまどろみ等はお手の物。 
 浮気調査、ストーカー調査、はたまた、彼女の気持ちを探るまで
 くだらないことだと諦めずに、どうぞお気軽にご相談くださいませ。
                  K県A市▲−○−XXX K

「A市といったら、彼女の住んでいる街だ。
 これも運命かもしれない、でもお金がないな…
 とりあえず相談してみるのはタダだ。
 もしかしたら、アドバイスをくれるかもしれないしな。」

次の日、男はKをたずねた。
ドアに【K探偵事務所】と札がかけてあったので場所はすぐにわかった。
どんな人が現れるのか内心ドキドキしていた。
これも彼女のため・・・と言い聞かせ、思い切って玄関のチャイムを鳴らした。
現れた男は自分と同じくらいの年齢で、人を安心させるような優しそうな顔立ちをしている。
男は、内心ほっとした。

「実は・・・」

2人は、通じるものを感じすぐに打ち解けていった。
いろんな話をしているうちに、
たった数時間で男はKのことを心底尊敬し
信頼のおける男だと洗いざらい全てを話した。
それほどにKという男は他人の気がしなかった。
自分のことを何でも手に取るように理解してくれる気がしたのだ。

「わかりました。それではこうします。
 あなたには透明人間になれる薬をお作りしましょう。
 3日たったら、またここへ来てください。
 あなたはそれで、まずストーカーが誰なのか探ってきてください。」

Kは完璧なプランを考え出した。
これなら彼女を救えると男は天にも昇りそうな気持ちになった。
すぐにでも行動に移してしまいたくて、身体がうずうずした。

「…でも、申し訳ございません。
 非常にいいにくいのですが、やはりタダでお受けすることは出来ません。
 しかし、あなたを助けてあげたい。
 なぜだか私はあなたが他人だとは思えないのです。
 どうでしょう?
 特別にあなたの大切なものをひとついただけないでしょうか?
 そうしていただけるのなら、お代はいただきません。」

Kは言った。

男はとにかく女が助けたかったので、
むしろ好都合だと神に感謝をした。

「すぐに君の肩の荷をおろしてあげるよ。
 もう少しだけ待っててくれ。」

男は快く条件をのんだ。


薬を待つ間も、男は女を見守りつづけ、
3日後、男はKの元へでかけていった。

「約束のものはできあがったのでしょうか?」

「えぇ、もちろん。」

棚にたくさん並べてある数々の薬のうち
透明な液体の入ったビンをKはもってきた。
ただの水にしかみえないこの液体が自分を透明にするのだ。
男はとても信じられなかった。

「今この薬を飲んで、ストーカーが誰か分かったらまたここへきてください。 
 なんせ、透明になる姿は誰にもみられてほしくない。
 ここだけの秘密にしておきたいのです。
 私の前で、まず透明になっていただきいて、彼女の家へ行く。
 ここへ戻ってきたら、その時また次の指示を致しますからね。」

男が薬を飲むと、少し苦味が口の中に残ったが、とりたてて飲めないものではなかった。
が、しかし何の変化も起きない。
男は拍子抜けした。なにもおこらないじゃないか。この薬は失敗なのではないか。
半身半疑の男にKは言う。

「どうぞごらんください、あなたはまさに透明人間だ。
 これで誰にもばれず彼女を守ることができますよ。」

Kはそういって、男の前に鏡を差し出した。
鏡を見た男は信じられない光景をみた。
自分の姿が全く見えないのだった。
確かにKは鏡に映っているのに、自分の姿は空気の中にしっかり溶け込んでしまっている。

「これはすごいぞ。」

男はなんでもできる気がした。

わき目も降らずすぐに女の家に向かった。
チャイムを鳴らす、

「変ね、誰もいないわ。」

女がドアを開け確かめる間に男は女の家にするりと入っていった。
全てKの作戦だ。
出かけるのを待って、女の後ろにいるのが誰なのか探る。
単純な作戦のようにも思えたが、
男は透明なのだから、大丈夫だ。

女は何度か時計をちらちらと気にした。
作戦どおり、どこかへ出かけるらしい。
しばらくして女は家を出た。
男の気配に気付くそぶりは全くみえなかった。
後ろを見張る。
男以外は誰もいないようだ。
女の後ろを男はそっとついてまわった。
何ひとつ見逃すまいと必死になりながら・・・。

そして、辿り着いた先はひとつの家の前。

・・・

女が向かった先はなんと、
先ほどまで自分がいた【K探偵事務所】であった。

「おかえりなさい。
 実は彼女にストーカーがいて困っていると相談を受けましてね。
 あなたも嘘がうまいものですね。
 彼女を苦しめていたストーカーは・・・
 あなたそのものだったんじゃないですか。
 私はあなたがここへくるようにわざとあなたの家にチラシをいれました。
 あなたはまさにこちらの思惑通りにここへ来たわけです。
 こんなに簡単にいくとは思いませんでしたがね・・・。
 ちなみにその薬ですが、あなたをもうすぐ本当に透明にしてしまいますよ。
 彼女にはあなたが薬を飲んだときから、きっかり1時間後にここに来るように言いました。
 その薬は一時間きっかりで効果があらわれるはずです。」

「どういうことだ!?お前は俺を裏切ったな!」

「裏切ったなんて・・・とんでもない。
 私は自分の仕事をしたまでです。
 そうそう、あなたの大切なものはしっかりいただきましたよ。
 彼女は僕の婚約者なんですから。
 よくも今まで彼女を苦しめたな!!」

「うわぁぁぁ。助けてくれ!!」

男の身体から煙が次々に出始める。
先ほどの薬が彼を徐々に溶かしていったのだ。
薬は透明人間になった気にさせてしまう毒薬であった。
女は男の存在を知りながら見えない素振りをしていただけのことであった。
何も知らない男は確認もせずKを信用し、まんまと薬を飲んでしまったのだ。

そして、
男は本当に消えてなくなってしまった。



Kは女にささやく。

「君があの日泣きながら電話をかけてくれた時、
 僕は君を助けると誓ったんだ。
 もう心配いらないよ。」


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