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「すごい」けど薄かった「トキメキ」

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『昆虫はすごい』(丸山宗利・著/光文社・刊)を読んだ。タイトルどおり、昆虫のすごい生態を一般向けにわかりやすく紹介した本。内容は盛りだくさんで、文章も読みやすい。……なのに読み終えるまでに、ずいぶん時間がかかってしまった……。
紹介されている内容は確かに「すごい」。すごいのだけれど、そのわりに「トキメキ」が薄かった……。盛りだくさんすぎて(?)、それぞれの説明があっさりめとなり、感動に昇華する前に(未消化のまま)どんどん話題が移り変っていく印象がある。本来ならもっと知的好奇心を刺激し感銘につなげることができるような素材だろうに……その扱いがあっけなく物足りなさを感じ、読み進むにつれてそのモヤモヤ感(不完全燃焼感)がつのって、何度も読書を中断してしまったしだい。
文系の「うんちく話」としてならこれでも良いのかもしれないけれど、もう少し科学読み物としてのトキメキのようなものが欲しかった……というのが率直な感想だ。

とはいっても、これは僕の個人的感想。この本を客観的に判断すれば、内容は充実しているし、おそらく著者が意図した通りのものは描けているのだと思う。この本はあちこちで話題になっているようだし、実際に売れているというから、《成功》した作品といえるだろう。僕もこの本は評価しているし批判するつもりはない。
ただ、僕が個人的に期待するものが著者の意図(狙い)とはズレていたというだけのことなのだろう。この不満(?)は僕の側の問題であって、《高級フランス料理店に入って、「お茶漬けが食いたかったんだけどなぁ……」と言っているようなもの》なのかもしれない。
それをふまえた上で、「個人的な感想」をもう少し記してみたい。「こう感じた読者もいた」ということで。本書に対する《批判》ではなく、あくまでも《個人的な感想》である。

本書のカバー(カバーは二重になっていて下のオリジナルカバー)そでには次のような紹介文が記されている。
地球上で最も多種多様な生き物たちの生態に迫る
私たち人間がやっている行動や、築いてきた社会・文明によって生じた物事 は、ほとんど昆虫が先にやっている。狩猟採集、農業、牧畜、建築、そして 戦争から奴隷制、共生まで、彼らはあらゆることを先取りしてきた。特に面白いのは 繁殖行動。相手と出会うため、あの手この手を使い、贈り物、同性愛、貞操帯、 子殺し、クローン増殖と何でもアリだ。どうしても下に見がちな私たち の思考を覆す、小さな生物のあっぱれな生き方を気鋭の研究者が大公開!
ヒトが発達した脳みそを駆使して作り上げてきたシステムは、すでに小さな昆虫達が先に実現している──というアピールには「驚き」がある。「すごい」のは間違いない。ただ、見かけ上はよく似たシステムでも、ヒトが構築したものと昆虫が獲得したものとでは、意味合いがずいぶん違う。このことは著者自身が「おわりに」の中で次のように述べている。
 昆虫により親しみを感じていただくために、ところどころ昆虫とわれわれヒトとを対比している。最初に述べたように、昆虫の本能的な行動と人間の学習による行動では意味が異なるし、昆虫の種間の関係と、ヒトの個体間、集団間の関係とはまったく別のものである。誤解を与えないように注意して書き進めたが、そのことだけは念をおしておきたい。(P.228)
《ヒトと同じような事を昆虫は先取りしてやってきた》というのは「すごい」をわかりやすく説明するためのアプローチなのだろうが、その「すごい」ことをどうして昆虫達は実現してきたのか──そこが「すごい」以上に肝心なところだと僕は考える。
「すごい」現象を「なぜ?・どうして?」という科学的視点(?)で掘り下げて「なるほど!・そういうことか!」と納得できて本当の意味での「驚き」「感銘」──知的好奇心のカタルシスが生まれるのではないだろうか。
「すごい」事例だけをたくさん羅列しても、それだけでは知的好奇心は満たされない。「なぜ?・どうして?」が未解決のままでは、むしろモヤモヤ感を蓄積しフラストレーションとなりかねない。

別の分野で例えるなら──「月は地球の周りを回転しているのに、いつも地球に同じ側を向けている」「ブーメランは投げると戻ってくる」という科学的事実は、それ自体おもしろい。しかしその事実を提示しただけでは科学的好奇心は満たされないだろう。「なぜ?・どうして?」を掘り下げ、そうした科学的疑問に対する答がみいだせたときに初めて知的好奇心のカタルシスが得られる。
昆虫の驚くべき生態も、科学的事実を列挙するだけではなく、読者が抱くだろう「なぜ?・どうして?」の気持ちをもう少しフォローして欲しかった……というのが、個人的感想だ。それぞれに明確な回答・解説をつけるのは難しいのかもしれないが、提示された「すごい」に付随して想起されるであろう「なぜ?・どうして?」が未解決のままどんどん次の話題が展開される贅沢な内容に、僕はすんなりついて行けなかった。

昆虫の風変わりな生態を紹介しただけでは「スゴイ」話で終わってしまう……うんちく話集としてはそれで良いのかもしれないし、それを意図して書かれたものであれば、それ以上のものを望むのは「読み手の勝手な期待」なのだろうが。
僕の場合、この「読み手の勝手な期待」があったために、すんなり読み進めず立ち止まる事が多くて、読了するまでに時間がかかってしまった。これには僕の理解力不足という要素も大きかったのだろうが……そんな「ひっかかった部分」について少し記してみたい。

カギバラバチの謎

カギバラバチという二重寄生をするハチについての記述↓。
 寄生性の昆虫には、ほかにも遠まわしな寄生方法をとるものがいる。
 カギバラバチ科のなかまにはスズメバチに寄生するものがいるのだが、その方法はツヤセイボウよりさらに遠まわしで、まるで宝くじのようである。
 まず、カギバラバチは植物の上に非常に多数の微細な卵を産みつける。次に、その葉を食べるイモムシが、葉と一緒に卵を食べる。イモムシに傷つけられた卵は、イモムシの体内で孵化する。そして、スズメバチがそのイモムシを捕まえて、肉団子にして、巣に持ちかえり、幼虫に与える。
 運良くスズメバチの幼虫の体内に入ったカギバラバチの幼虫は、スズメバチの体内を食べ、そしてそれを食い破り、さらに外から食べ尽す。
 カギバラバチの卵の圧倒的多数は、植物の上に産みつけられたままで、さらにイモムシに食われても、そのイモムシがスズメバチに狩られる可能性はかなり低いだろう。このような宝くじ的な確率に運命を委ねているせいか、カギバラバチには個体数の少ない珍種が多い。(P.94〜P.95)
これは、「スズメバチからカギバラバチが羽化した」ということなのだろう。その事実をうけて寄生ルートを調べてみると、カギバラバチの卵が産みつけられた葉を食べたイモムシ経由であることが判った──そういうことではないのか?
本文の説明(引用部分)では、「カギバラバチのターゲット(宿主)はスズメバチで、わざわざ手間のかかる非効率的な方法を選んで寄生している」というニュアンスを感じるが……ちょっと納得でない。「では、いったいどうしてそんな面倒ことをすることになったのか?」──誰だって疑問に思うはずだし、この解説だけでは合理性に欠け説得力がないように思われた。

正解はもちろん僕にも判らないが……僕なりの解釈で整理してみた。まず事実関係として確かめられているのは、きっと──、

(1)カギバラバチは葉に卵を産みつける。
(2)スズメバチからカギバラバチが羽化した。
(3)その寄生ルートは、カギバラバチの卵が産みつけられた葉を食べたイモムシ経由。

──ということだろう。
合理的な解釈をしようとすれば、次のようなシナリオが考えられるのではないか。
まず、寄生蜂の《カギバラバチが葉に卵を産みつける》というのは、そういうプログラム(本能)で繁殖してきた(それで必要な生存率は保ててきた)ということだろう。カギバラバチを「寄生者A」とし、そのプログラムが成立し得たのはなぜかを考えると、近くに「カギバラバチの宿主(寄主)B」がいたからだと考えるのが自然だ。カギバラバチと同じように葉に卵を産みつける寄生蜂もしくは寄生蠅などを「B」としよう。「A」と「B」が同じようなプログラムを持っていれば、同じような植物の同じような場所に産卵する事はあり得るだろう。もっと積極的に「A(カギバラバチ)」が「B」の産卵の痕跡を探して産卵している可能性もあるかもしれない。同じ環境下で「A」が「B」の卵の近くに産卵することは「宝くじ」に当るほど難しい事ではないはずた。「A」も「B」も「卵がどうなるかを考えて」そこに産んでいるわけではない。ただ同じようなプログラム(本能)に従って産卵しているだけ。それがどうやって寄生が成立するかというと、卵が産みつけられた葉を(これを食草とする)イモムシが食べ、「A」と「B」両者の卵がイモムシの体に入る。イモムシの体内でまず「B」が孵化しイモムシを体内から食いはじめる。そのさい、「A(カギバラバチ)」の卵も一緒に食べ、「B」の体内に「A(カギバラバチ)」が取り込まれることで二重寄生が成立する。A(カギバラバチ)は「宿主(寄主)B」の体内で孵化し、Bを食って成長する──というシナリオだ。
これならば、「A(カギバラバチ)」の「B」への寄生は「宝くじ」に当るような特別なことではないだろう。
これが基本的な寄生シナリオだったのではないか。それならば「あり得そうだ」と思える程度に自然で納得できる。

ではなぜ「A」は最初に卵を食べたイモムシへの単純寄生ではなく「B」への二重寄生という、より複雑な方法をとるようになったのか? そのプレシナリオも想像してみる──。
「A」は元々イモムシへの単純寄生をしていたのかもしれない。ところが同じようにイモムシに寄生する「B」という競争相手が現れ、同じイモムシの体内で「A」と「B」がかち合うことが頻発するようになったのではないか。イモムシの体内で孵化した「B」幼虫は強く、「A」の卵や幼虫を食い殺して、この競争を制していたとする。劣勢に立たされた「A」だが、「B」に食われた卵の中から「B」の幼虫体内で孵化し、二重寄生に成功するものが出てきたとすれば──「A」は寄生対象を「イモムシ」から「B」にシフトすることで巻き返しを図ったという可能性も考えられなくもない。
これはあくまでも想像で、実際の進化の過程はわからないが……「A」は《最初に食われた時には孵化せず2度目に食われるのを待って孵化し寄生する》という新たな戦略に活路を見いだしたのではないか……。

さて、イモムシに食われ、その体内で2度目に食われるのを待つ「A(カギバラバチ)」の卵──この《「A」の卵を体内に取り込んだイモムシ》をスズメバチが狩り、幼虫のエサにすることもあるだろう。そのさい、「A(カギバラバチ)」が孵化するのは「B」の体内ではなく「スズメバチの幼虫」の体内ということが起こる。そうして「A(カギバラバチ)」はそのまま「スズメバチの幼虫」に寄生するというシナリオが派生する。
「A(カギバラバチ)」が「B」に寄生する基本シナリオよりも「スズメバチの幼虫」に寄生する派生シナリオの方が確率的には低いだろう。しかし食料資源としては「B」より大きな「スズメバチの幼虫」の方が利用価値が高く、「A(カギバラバチ)」幼虫も大きく育ち、より多くの卵を産める成虫になるという利点がありそうな気はする。スズメバチに寄生できる確率は低いが、それがかなえば繁殖能力は高まる──この寄生確率と繁殖率のかねあいで、スズメバチに依存した方が有利であった場合には、「スズメバチがメイン・ターゲット」という選択肢が生まれるのかもしれない。しかし、そうでないとすれば、《「A(カギバラバチ)」のターゲットは「B」が基本》で《「スズメバチへの寄生」はしばしば起こるアクシデント》程度のものではないか……という気もする。
いずれにしても、《スズメバチからカギバラバチが羽化した》という事実だけから、《「宝くじ」的な寄生方法をとる蜂がいる》──というニュアンスのプレゼン(解説)に直結したのだとすると、ちょっと違和感があり、僕にはすんなり納得できなかった。

上記のシナリオはあくまでも想像ではあるが、「A(カギバラバチ)」と「B(Aの寄主でありイモムシの寄生者)」そして「イモムシ」──このような3者の関係は実際に存在するらしい。
飼育環境下で卵から育てたアサギマダラ(蝶)からマダラヤドリバエという寄生蠅が羽化することがあるという。アサギマダラ幼虫にエサとして与えた葉にマダラヤドリバエの卵がついていて、これを食べたアサギマダラ幼虫体内でマダラヤドリバエが孵化し寄生が成立するらしい。そしてアサギマダラ幼虫に寄生したマダラヤドリバエの蛹から、さらにキスジセアカカギバラバチという寄生蜂が羽化することもあるというのだ。キスジセアカカギバラバチもイモムシが食う葉に卵を産みつける。つまり、前述の「A(カギバラバチ)」:「B」:「イモムシ」の関係と「キスジセアカカギバラバチ」:「マダラヤドリバエ」:「アサギマダラ幼虫」の関係は構図としては同じといえる。
アサギマダラのエサとして与えた同じ葉にマダラヤドリバエとキスジセアカカギバラバチの両者の卵があることは、さほど不思議な事ではないだろう。
そうした寄生を受けたイモムシを、たまたまスズメバチが狩ることで《スズメバチからカギバラバチが羽化した》という状況が生まれる──そういうことではないのだろうか?
余談だが、キスジセアカカギバラバチと思われる蜂は狭山丘陵でも見たことがある。ここでもアサギマダラの姿はたまに見かけるが、狭山丘陵でのキスジセアカカギバラバチの寄生ターゲットはアサギマダラではないだろう。おそらく多くの(?)種にフレキシブルに対応(寄生)しうる種類なのだろう。それが、たまたまスズメバチのような狩り蜂に寄生するケースもある──というだけで、寄生蜂が「宝くじ」のような冒険をおかしているわけでは決してないだろうと思う。
仮にスズメバチをメイン・ターゲットとするカギバラバチがいたとしても、そこへ到達するまでには、合理的に説明できるルーツ(シナリオ)が必ずあるはずだ。

植物が寄生蜂を呼ぶという説明

本文内での順序は前後するが、植物と寄生蜂の関係について記された箇所がある↓。
 寄生蜂の生態についてはあとでも述べるが、この寄生蜂を護衛に利用する植物は多い。
 ヨトウムシというガの幼虫がトウモロコシやワタの葉を食べると、植物の成分とヨトウムシの唾液が混じって、寄生蜂を誘引する化学物質が作られる。つまり、植物が寄生蜂という殺し屋(といってもすぐに相手は死なないが)を呼んでヨトウムシをやっつけてくれるようよう助けを求めているのである。
 ヒトもよく食べるキャベツなどのアブラナ科植物は、実は大部分の昆虫に有毒である。しかし、モンシロチョウなどのいくつかの昆虫は、この毒を克服し、逆に自身の摂食行動を誘発する物質として利用している。ただしその物質も、モンシロチョウが食べると、ほかの物質と混じって寄生蜂を呼ぶ物質となる。(P.38〜P.39)
この部分を素直に読めば、「寄生蜂を呼ぶ植物はすごい!」ということになる。そう受け取った読者も多いと思う。形としてはそうなのだろうが……因果関係で言えば《植物が寄生蜂を呼ぶ》というより《(ガの幼虫の食餌の際に発生するニオイを嗅ぎ付けて)寄生蜂が来る》というのが正しいのではないか? あっぱれなのは植物より、蛾の幼虫の存在を示すニオイを察知できた寄生蜂の方なのではないか……と感じた。

共生関係はそれ自体「すごい」し「おもしろい」。しかし、言葉が通じない・意思疎通ができるとはとても思えない、全く別の生物間でどうしてそのような関係が成立し得たのか──「なぜ?・どうして?」という当然の疑問が浮かぶ。
《植物の葉を食う幼虫が現れ、それに対抗する防衛物質を精製できる能力を獲得した植物(トウモロコシやワタ・アブラナ科植物)が誕生する……さらにその防衛物質に耐性のある虫(ヨトウムシやモンシロチョウ幼虫など)が現れた……植物の防衛物質は、その虫に無効になったかに見えたが、幼虫の唾液が混ざることで発生する化学物質のニオイを察知してこれを利用する寄生蜂が現れた》──この共生関係が成立し得たのは《寄生蜂のサーチ能力》があってのことだろうと僕は想像する(であれば納得できる)。
引用した部分からもそう解釈できなくはないが、文章どおり《(植物が寄生蜂に)助けを求めている》と《植物のSOS信号》主体で生じた関係だと解釈した読者も少なくないのではないかと思う。
あるいは植物の方でも蛾の幼虫に食われた時に寄生蜂が察知しやすい物質を多く生み出すような──いってみれば「《寄生蜂に助けを呼ぶ声》を大きくする」ような進化は(生存率が高まることで子孫にその傾向を色濃く残すことで)あったのかも知れないが、この共生関係が成立し得た因果関係を考えると、原点は《エサの居場所をさぐりあてる寄生蜂のサーチ能力》にあったのではないか……という気がして、解説にいささか違和感を覚えた。

クロナガアリの記述/貯蔵した種子を管理する話

クロナガアリが収穫した種子を発芽しないように管理するという話↓。
 とくに活発に活動するのは、実りの秋である。すでに肌寒い時期、地面にこぼれた種子をちりぢりになって集め、巣へと持ち帰る。そして冬を越し、春になると、さらにこぼれた種子を拾いに外へ出る。
 面白いことに、多くの虫が活発に活動する夏前後にはあまり外に出てこない。巣は地下数メートルの深さまで掘り進めてあり、そこで晩秋と早秋の短い間に集めた穀物を食べて過ごすのである。
 さらに面白いのは、地面に持ち込んだ種子が勝手に発芽しないように管理することである。発芽してしまっては、巣のなかが大変なことになるし、栄養の詰まった種子がただの草になってしまう。そこでクロナガアリは、雨水の影響を受けない地下深くに種を貯蔵し、湿度と温度が安定した条件で保管するのである。(P.142)
ここでは《アリが収穫した種子を発芽しないような環境を作って管理している》という「すごい」ことが記されている。
ヒトならば《考えて計画的に管理》することができる。しかしどうしてアリにそんなことができるのだろう?──という疑問が浮かぶ。
想像するに……このアリたちの祖先は最初は手当り次第にエサを巣に運び込んでいたのではないか。その中で利用価値の高い種子が優先的に集められるようになった……。巣の内部の浅い部分に貯えた種子は発芽し(利用価値が下がる)、深い部分に貯め込んだ種子は保存率がよかった──たまたま(?)深い所に貯めた種子が利用価値が高かったために、その傾向(貯蔵庫の深層化・効率のよいエサの選択)が強められていったのではないか。
最初から計画的に《種子を湿度と温度が安定した条件で保管する》ことを考えてこのスタイルを作ったのではなく、色んなエサを集め色々な深さに蓄え、うまく利用できたものが選択的に残った──その結果なのではないのか。

例えて言えば……ある人が競馬で、手当たり次第に色々な馬券を買い、レース後にハズレ券は捨てて、当たり馬券だけを持参して換金に来たとする。この人が持参した馬券が当たり馬券だけだったことを見て、「すごい」と言っているようなものではないか……という気がチラッとしないでもなかった。

「なぜ?どうして?」の疑問が未解決だと後ろ髪を引かれる

僕の「解釈」が当っているかどうかはわからない。本書を読みながら浮かんだ疑問を、合理的に説明するにはどんなシナリオがあり得るのかを、狭い知識の中で「つじつまあわせ」してみただけに過ぎない。要するに『昆虫はすごい』の中で次々に展開される「すごい」ことをどう解釈すれば良いのかわからないまま先へ先へと読み進むことは僕にはできなかった──ということである。「なぜ?・どうして?」という一番知りたいことが未解決のまま読み進めるのは、宿題をどんどんため込んでいくような気持ち悪さが残り、何度も立ち止まって考えなくてはならなかった。
「すごいこと」より、それがどうして成立し得たのかということの方が、僕にとっては興味が大きいのだが……本書ではそのあたり説明が充分ではなかった気がする。
「月は地球の周りを回転しているのに、いつも地球に同じ側を向けている」「ブーメランは投げると戻ってくる」という事実そのものよりも、「なぜ?・どうして?」の方が僕には気になる。
「なぜ?・どうして?」の向こう側にある「なるほど・そうだったのか!」が到達点だという読み方──自然の不思議・驚異に対する《謎解き的な面白さ》を期待する読み方をすると、「すごい」事例を列挙することに主眼を置いた本書は、いささか物足りなさを否めない……しかしこれは最初に記した通り、僕の個人的な読み方の問題であって、この本の主旨とは別のものだろう。
この本そのものは良くできているし、オススメできる内容だと僕も思っている。



『ツノゼミ ありえない虫』とツノの謎!? ※丸山宗利氏の本を読んで思ったこと

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凄い!・・・
昆虫は凄い!と思って単純に、この本を読み進めた私ですが・・・
今は・・・
「星谷さんは、凄い!」の本が読みたく成ってる処です・・・
ここまで、深く読まれてるとは・・・
は〜〜〜{凄い!」の言葉しかでません・・・
(誰か「星谷さんは、凄い!」の本を書いて下さい!)
と思ってしまいました・・・
私なんて「昆虫はすごい」の本の内容が理解しきれず・・・再度ライン・マーカー引きながら(本にラインを引く事は、失礼かとも思いましたが教科書感覚で失敬!)
寄生バチと植物の関係を他の本文でも読みました・・・
(何のほんだったけな〜?)

カギバラバチの二重寄生のお話があまりに(凄い)ので・・・
脳がテンパってしまって・・・
とにかく誰か早く「星谷さんは凄い!」の本を書いて下さい!
「お願い致します・・・」☆

2015/6/10(水) 午後 11:27 [ 今日も、こっそり自然観察! ]

> 今日も、こっそり自然観察!さん

いやいや、そんなたいそうなものではありませんが……大評判の影で、こんな感想を持つ読者もいたということで。

この本に紹介されている内容は充分に面白かったのですが……それだけに「なぜ?・どうして?」がどんどんふくれあがって、すんなり読み進むことができませんでした。

僕はラインマーカーは使いませんでしたが、付箋がたくさん貼り付けてあります(笑)。

2015/6/10(水) 午後 11:58 [ 星谷 仁 ]

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おはようございます。
無学は私にとって、
今読ませていただいてる、星野仁さんの記事でさえ難しいです。
まだ何回も訪問させていただいてませんが、
星野仁さんは凄い人だと実感しております。

2015/6/11(木) 午前 8:32 kaneo93

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本の感想って、いいですね!
私はこの本、全然物足りなくなかったのですが
物足りなく感じたという感想を読んで、あーなるほど!と思いました。
たぶん、「虫にちょっとは興味がある」くらいの
読者層がマーケティング的に成り立つのかもしれないですね…。

科学って、意外と「このような行動の理由はまだ分かっていません」が多いですよね。
こういう物質が分泌されてこうなる、という機構は分かっても
理由づけとなると、ほんとうのところを解明するのは難しいのでしょうね。。。
そこで自分なりに考察するという星谷さんの姿勢を見習わなくては!といつも思います。
もしかしてこの本は、星谷さんのような人を研究に焚きつけるという裏の目的があるのでは?!

2015/6/11(木) 午前 8:45 [ nori ]

> kaneo93さん

僕も無学で、ぜんぜん凄い人ではないのですが……疑問に感じたことは自分なりに納得できるまで考えないと気が済まないもので……。
そうして考えたコトなどをまとめておくためにブログを使っているようなところもあったりします。

2015/6/11(木) 午前 9:43 [ 星谷 仁 ]

> noriさん

この本はけっこう人気があるみたいですね。好評価なのはよく判るし、僕も「良い本」だと思います。
ただ、読み終えるまでに思いのほか時間がかかってしまいました(何ヶ月?)
紹介されているネタが面白いのに、あっさりしすぎて、もうちょっとなんとかならなかったものかと……そんな思いが「個人的」にしてもどかくしもありました。

自然科学だと「まだわからない」ことも多いのでしょうが……例えば、面白い発見も、どういう経緯でそれが解ったのかとか……研究者の試行錯誤の経緯を謎解き風に紹介しても科学的ワクワク感みたいなものが描けたのではないか……という気がしないでもありません。
この本の主旨はそういうところにはなく、この本の主旨が好評価を得ているということなのでしょうが……個人的には、こんな感想を持つものもいるということで、こそっとまとめてみたしだいです。

2015/6/11(木) 午前 9:44 [ 星谷 仁 ]

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いつも訪問ありがとうございますm(_ _)mいやーすごい!頭が下がります。私のブログ見ての通り上辺だけ、星谷さんの所へ時々勉強しに寄らせて貰ってます・・・が、老眼には厳しーい(笑)でもこれだけの文字数考えるとやむを得ませんのでskittoの我儘は控えます(^_^*)

2015/6/11(木) 午後 4:07 skitto

> skittoさん

昆虫関連の記事はよく閲覧しているのですが、僕が見たことのない種類もよく出てくるので楽しく拝見しています。
僕は昆虫に詳しいわけでもないのですが……虫を見て感じたり考えたりすることも多いので、そんなことを気ままに記しています。

2015/6/11(木) 午後 5:17 [ 星谷 仁 ]

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私もこの本を読みました。知られざる昆虫の生態が簡潔に紹介されていて、「スゴイ」ということはわかる本でしたが、なんとなくモヤモヤしたものがありました。特にカギバラバチのところがそうだったのですが、こちらの解説を読んでスッとしました。

2015/6/11(木) 午後 8:07 [ 佛生山孝恩寺 ]

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この本が気になったので、早速アマゾンで注文してみました。とりあえず読んでみます。

2015/6/11(木) 午後 8:31 [ nika4 ]

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いつもナイスをありがとうございます<(_ _)>

記事を読ませて頂いてはいるのですが、とても専門的で、ただの虫好きの私などコメントできるような立場に無いな〜と思っておりましたのに。

ナイスを頂き、感動しております。

今回の記事も、深いな〜
たぶん私だったら「へ〜〜」で終わってしまうと思うのですが。
好きな虫の世界。
もっともっと考える時間を作ろうと思いました。

2015/6/11(木) 午後 9:10 [ メレンゲ ]

> 佛生山孝恩寺さん

佛生山孝恩寺さんも同じような印象を持たれていたようですね。確かに内容は充実しているし、「すごい」んですが……何かモヤモヤ感が残る……。
「このモヤモヤ感は何なんだろう」ということで、思うところをまとめてみたしだいです。

2015/6/11(木) 午後 10:21 [ 星谷 仁 ]

> nika4さん

昆虫のおもしろ情報としては充実した内容ですので、読んでみて損は無い本だと思います。
解明された昆虫の生態は興味深いものばかりですが、その「結果」に至るまでには、虫屋さんたちの努力・紆余曲折みたいなものがあったはずなので、そのあたりの経緯を「謎解き風」に描いたら、もっとトキメキ感が持てたのではないか……と個人的には思ってみたり……。

2015/6/11(木) 午後 10:22 [ 星谷 仁 ]

> メレンゲさん

この本は昆虫の面白い生態をたくさん紹介していますが、「こたえ」を列挙しているような印象があるのですよね……。その「こたえ」に至るまでのワクワク感がもう少し読んでみたかったという個人的な思いが残りました。

今はインターネットも含め、知りたい情報──「こたえ」が簡単に入手できるようになりましたが、自分の目で見て感じ、自分の頭で考えることが大事だと思っています。
その点、ご自身で飼育し・工夫をしながら生の観察をされているメレンゲさんの記事には共感・好感を覚えています。

2015/6/11(木) 午後 10:24 [ 星谷 仁 ]

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確かにカギバラバチがなぜあんな複雑な寄生をするのかは分かりづらいですね。
小さいハチだと思うのでスズメバチの巣の芋虫に寄生をすれば言い訳なのですが。
植物が寄生峰を呼ぶは、寄生峰が嗅ぎ付けないと行けない訳で、植物よりハチが凄いですね。
それにしてもココまで読んで分析するとは凄いです。

2015/6/12(金) 午前 7:25 [ タイコウッチ ]

> タイコウッチさん

カギバラバチの生態は、本で紹介されている通りだとすると、ちょっと複雑すぎる気がして納得できませんでした。わざわざ繁殖率を下げる方向に複雑な進化をするのはおかしいと思います。それで、もっと納得できるシナリオがあるのではないかと考えてみたしだいです。
「ある現象」をどう解釈するか──というところで、違和感を覚える箇所についても僕なりの解釈を記しました。
この本に紹介されている内容は面白かったのですが、色々考える事も多く、読み終えるまでに時間がかかってしまいました。

2015/6/12(金) 午前 8:39 [ 星谷 仁 ]

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星谷さん お邪魔します
ブログの中身、ゆっくりと、楽しみながら、拝見させていただいています。
それにしても、恐れ入ります。特に小動物、昆虫たちの様子、写真
非常に興味を持って拝見させていただいておりますが、ただ、ただ
恐れ入りましたの一言、すごいの一言、ほんとにすごい。
すっかり虜になりました。
これからの楽しみが一つ増えました。
有難うございます。

2015/6/14(日) 午後 4:20 nkk*19*7

> nkk*19*7さん

どうも、恐縮です。僕自身が興味を感じたものについて、素人考えなどを気ままに記しています。特に想像をまじえて記した部分は飛躍もあるので、実際に正しいのかどうかとは別次元のハナシになってしまいますが……とりあえず、あれこれ思いめぐらせた内容をまとめてみたりしています。

2015/6/14(日) 午後 5:06 [ 星谷 仁 ]

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「虫は凄い」はずいぶん前に購入しました。
え〜〜私は少し読んだだけでホコリをかぶっております。
私の文章の理解力のなさも手伝ってか読み進むことができませんでした。
星谷さんのブログは楽しく最後まで読ませて頂きました。
星谷ワールドいいですね〜〜〜!!
これからも星谷さんのブログを楽しみにしています。

2015/6/15(月) 午前 9:31 ピンちゃんのママ

> ピンちゃんのママさん

つい長文になりがちなブログにおつきあいいただき、ありがとうございます。
『昆虫はすごい』は、紹介されている内容は充実していると思うのですが……そのわりにトキメかない(読書意欲が盛り上がらない)ので、僕も何度も中断しています。
ピンちゃんのママさんも同じような感じを受けたのかも知れませんね。
《スゴイこと》を次から次へ列挙するのではなく、未知なるものを解明して行く面白さが欲しかった──と個人的には感じました。

2015/6/15(月) 午後 2:50 [ 星谷 仁 ]


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