星谷 仁のブログ

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ヤニサシガメのベタベタは【分泌物】なのか【松ヤニ】なのか?

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ヤニサシガメは主に松類に生息している捕食性カメムシ(捕えた獲物に針のような口吻を「刺し」て体液を吸う「カメムシ」→「サシガメ」)。ヤニサシガメは幼虫時代、松ヤニをまとったようにベタベタしている(体表面が粘着物質でおおわれている)──これが名前の由来だろう。
画像↑は昨年5月に撮った擬木上の新成虫。僕が見かけるのは、もっぱら擬木の上だが、たいていその近くには松や杉(orヒノキ)の木がある。幼虫は松や杉の樹皮下で集団越冬するという。
今年3月に撮った越冬明けのヤニサシガメ幼虫の捕食↓。
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餌食になったのは、まだ牙(脱落性牙状大顎突起)が片方残るマツトビゾウムシ新成虫だった。

実はヤニサシガメについて、僕はこれまであまり関心を持って見てこなかった。それが最近ある別の昆虫のことを考えている過程で、にわかに「知りたいこと」が出てきて気になっている。
《ヤニサシガメのベタベタ(体表面をおおう粘着物質)は【分泌物】なのか【松ヤニ】なのか?》──ということだ。ネット上には【分泌物】であるとする情報と【松ヤニ】だとする情報が混在している。はたして、どちらなのだろう?
とりあえず、実際にベタベタしているかどうか──まずはその確認から。
サシガメに刺されると、とても痛いらしいので、これまで不用意に触れないようにしていたのだが……口吻が届きにくそうな背中に触れてみると──なるほどベタベタしており指に貼りついてきた。
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脚や背中を含め、全身が粘着物質でコーティングされているようだ。
このヤニサシガメ幼虫のベタベタについて、百科事典マイペディアの解説には【分泌物】と記されている(世界大百科事典の「サシガメ(刺亀)」の中では肢からヤニを出すと記されている)。一方、ネット上には【松ヤニ】(を塗りつけている)とするサイトが見受けられる。おそらく同一ソースの記事からの引用や伝聞情報と思われる……が、その元記事は削除されているのか、現在見ることができない。

松ヤニ説によれば……ヤニサシガメが主に松類に生息しているのは、「松ヤニを利用している」からで、「松ヤニを体に塗りつけることで(その粘着性によって獲物の保持力を強化し)獲物の捕食効率を高めている」というような理屈らしい。
なるほど「おもしろくて判りやすい解釈」だが……真相を知らない僕には不自然に感じられた。
(あくまでも真相を知らない僕が)想像するに……ヤニサシガメが松類に多いのは、この昆虫が幼虫で越冬するため──幼虫がもぐりこんで越冬するのに適した樹皮を持つ松類が生活の場に選ばれたということにすぎないのではなかろうか。もし他の場所に拡散していたなら、幼虫で越冬するヤニサシガメは冬を前に越冬場所まで飛来して集まることができない。幼虫は飛べないのだから、最初から越冬に適した場所(松類)付近に制限されて生活しているのだろう──そう考えるのが自然な気がする。
ひょっとすると、越冬明けの幼虫は(獲物が少ない時期に)植物の汁を吸うようなこともあるのかもしれない(カメムシは捕食性の種類でも植物の汁を吸うことがあるそうだ)。「越冬に適した(潜り込める形状の)樹皮」と「越冬明けに吸汁できる常緑樹」という条件から松類が生息の場に選ばれたのかもしれない……などという可能性も想像してみたが、これは根拠の無いただの憶測。

松ヤニを体に塗りつけて捕食効率を高める──という解釈にも、いささか無理を感じる。ヤニサシガメがどのようにして松ヤニを調達するのかわからないが、それは小さな幼虫にとって大きな負担となる作業ではないのか。ヤニ源は松の木には豊富にあるものなのだろうか? 粘度が高ければ松ヤニに捕えられてしまう危険だってあるかもしれない。手頃な粘度の松ヤニを探すのは大変そうな気がする。あるいは自ら松に傷をつけて松ヤニを採取するのだろうか? いずれにしても、手間をかけて調達し、わざわざ体中に塗り付けて──果たしてそれだけの労力や危険にみあうほどの効果があるのだろうか?
他のサシガメたちはそんな手間ヒマをかけずに、ちゃんと狩りをしている。捕食中のサシガメを見るとカマキリのようにしっかり獲物を保持しているわけでもない。労力を費やして松ヤニの粘着力を借りなくてもさほど困ることはないのではないか?
松ヤニを体に塗りつける意味が「獲物の捕獲率を高めるため」ならば、獲物をおさえる前脚だけに塗ればよさそうなものだ。しかし、実際はヤニサシガメ幼虫は全身ベタベタしている。わざわざ全身に塗りつけるのは無駄だし、粘着性によって獲物の捕食効率が向上するというなら、同じ理由で天敵からおそわれたときの被捕食率も高くなるはずだ。触れた指に貼りついてくるくらいなのだから、天敵に襲われたときも逃れにくくなることは明白だ。松ヤニを全身に塗ることは、労力を費やしてわざわざデメリットを増やしていることになりはしないか。
もし本当に松ヤニを全身に塗りつけているのだとしたら、それは「捕食効率向上」では説明がつかない。あるいは松ヤニに「天敵に対する忌避効果」のようなものでもあるのであれば、説明はつくが、それは捕食効率とは全く別の話である。果たして松ヤニにそんな効果があるのだろうか?

疑問のきっかけは粘着物質つながりでハリサシガメ

僕はヤニサシガメのベタベタは【分泌物】だろうと考えた。そのきっかけはハリサシガメだった。ハリサシガメは幼虫がゴミをまとってカムフラージュするというユニークな習性を持っている。ゴミをまとうさいに使われているのは「粘着性のある分泌物」であろうと思われ、ここから全身が粘着物質に覆われたヤニサシガメ幼虫との関連が思い浮かんだ。ハリサシガメとヤニサシガメは同じサシガメ科だし、脚のまだら模様などの特徴も似ているところがある。幼虫時代に粘着性のある物質を分泌するという共通の生理システムがあるのではないか?
ヤニサシガメのベタベタの延長→ハリサシガメのゴミをまとう習性(粘着性の利用)──と考えたわけだ。樹上性のヤニサシガメはベタベタのままでいるが、地上性のハリサシガメでは細かなゴミがつきやすいだろうし……ゴミをまとうことでカムフラージュ効果が生まれ、そうした方向で習性が培われてきたのではないか?

ヤニサシガメにしてもハリサシガメにしても、全身をおおう粘着物質が何なのか・どうしてそんなことになったのかは判らないが……「分泌物」であれば、両者に共通する生理システムとして捉えることができる。
ヤニサシガメのベタベタが分泌物ではなく松ヤニであったとすれば、それでは(松ヤニとは無縁の)ハリサシガメ幼虫の粘着物質は何なんだということなる。
ハリサシガメの粘着物質が分泌物であるなら、ヤニサシガメの粘着物質も分泌物ではないか──と考えるのが「つじつま」的にはスッキリする。
こうした思考経緯があって、「ヤニサシガメのベタベタの正体は【分泌物】なのか【松ヤニ】なのか?」ということが気になりだした次第。
はたして真相はどちらなのか──ネット検索では納得できる情報がみつからないので自分で確かめてみることにした。

もしこれが松ヤニなら、幼虫が脱皮をすれば松ヤニは抜け殻に残される。新たに「塗りつけ」が行われない限り、脱皮後の幼虫はベタベタしないはずだ。松ヤニの供給が無い状況で脱皮した幼虫が、その後ベタベタするようであれば、それは分泌物ということになる。
ヤニサシガメ幼虫を飼育し、脱皮後の幼虫のベタベタの有無を確認すれば真相が明らかになるのではないかと考えた。

別の案として採集した個体から粘着物質を取り除いて(松ヤニのない環境下に置いて)ベタベタが復活するかどうか(再び分泌するかどうか)を確かめる──という方法も考えたが、ハリサシガメの抜け殻から付着物を取り除こうとして苦戦し、きれいに取り除けきれなかったことから、生体の粘着物質を完全に取り除くことは困難だと判断。飼育して脱皮後の確認をした方が確実だろうと考え、脱皮前の幼虫を持ち帰って飼育してみることにした。

擬木上のヤニサシガメ幼虫は みなベタベタしていた

これまであまり気にとめることがなかったヤニサシガメだが、擬木の上でも見ることができる。
問題解明の飼育観察に使う幼虫は、越冬前に脱皮をしてくれる個体が望ましい……そんなことを考えながらヤニサシガメ幼虫を物色していると、何かを捕えた幼虫が目に入った。
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意外に小さな虫も獲物になるようだ。何を捕まえたのかと思ってよく見ると極小のアリだった。
やはり擬木の上にいた別個体のヤニサシガメ幼虫↓。
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この幼虫は体も小さいが翅も小さい。全身テカッてみえるのはヤニのような粘着物質に覆われているからだろう。腹もヤニが乗った部分でテカっているが、中央部の盛り上がった箇所がヤニ・コーティングから取り残されているようにも見える。
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もしこれが松ヤニで、塗りつけられたものであれば、でっぱった部分から付着し凹んだ部分に塗り残しができそうな気がする。もしでっぱり部分が「取り残されている」のだとすれば、滲出液のように(?)しみ出した粘液が、出っ張った部分を残して腹をおおっているのかもしれない!?
テカリが粘着物質のコーティングであることを確かめるために触れてみるとベタベタしており、指に貼りついてきた。
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これ↑が脱皮した後のステージと思われる、やや大きなヤニサシガメ幼虫↓。
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パッと見、黒い部分が多く感じる。翅も前の個体より大きい。触れるとやはりベタベタで貼りついてきた。
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さらに別個体のヤニサシガメ幼虫↓でも試してみるが、結果は同様。
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擬木の上にいたヤニサシガメ幼虫10匹ほどに触れて確かめてみたが、もれなく全身がベタベタしており、指に貼りついてきた。
再び別の小さな個体↓。
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粘着物質でコーティングされた腹の右背面にゴミ粒が付着している。これを全身に付着させたらハリサシガメ幼虫のようになるのではないか……。
この個体も粘着テストをしてみたが、この通り↓。
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小さめながら腹は大きく膨らんでいる。同じ日に見られたやや大きめの個体に比べるとまだ翅も小さい。近いうちに脱皮が期待できそうだと判断してこの個体↑を持ち帰って飼育してみることにした。
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飼育ヤニサシガメ幼虫のハリサシガメ的アクシデント

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我流の飼育セット↑。知識も経験も無いので、これが適切であるかどうかはわからない。足場用の枝と樹皮(トウカエデ)、乾燥防止用に水を含んだテッシュペーパーを設置。ピンで孔をあけたフタを被せて飼育容器とした(詳しくは【ヤニサシガメぷち飼育中】)。
エサには何種類か与えてみたが、その1つがクワの葉の裏に集団でいるメダカナガカメムシ(成虫の体長が2〜3mm)の幼虫(ちょっと見はアブラムシのよう)。
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エサとして投入したメダカナガカメムシ幼虫だが……ヤニサシガメ幼虫の背中へ登り、粘着物質に脚をとられて動けなくなってしまうというアクシデントが発生した。
ヤニサシガメ幼虫も背中の虫が気になるのか、何度か後脚を腹の背面にもちあげる仕草をしたがメダカナガカメムシ幼虫がとまっているところには届かない。そのうち、やはりエサとして投入していた小型のアリまで付着するしまつ……。(松ヤニの供給がない環境で)飼育開始して5日目のことだが、ヤニサシガメ幼虫をおおう粘着物質の効力(?)は継続していた。
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ヤニサシガメ幼虫はこの後、腹端に付着したアリについては後脚を使って落とすことができたが(引きはがしたアリを食すことはしなかった)、背中に乗ったメダカナガカメムシ幼虫は落とすことができずにいた。何度も後脚を持上げて背中をかこうという仕草をみせるが、アリには届いた後脚がメダカナガカメムシ幼虫の位置までは届かない。
ということは──もしヤニサシガメ幼虫が松ヤニを脚を使って体に塗りつけようとしても、メダカナガカメムシ幼虫が貼りついた位置には届かないのではないか。しかし、実際はそこにも粘着物質がコーティングされているからメダカナガカメムシ幼虫は貼りついたわけで……脚の届かない背中(背面)全域に粘着物質をコーティングするのは「脚を使って塗りつける」という方法では難しそうに思える。やはりコーティングは分泌したものではないかと改めて思わせるアクシデントだった。
この背中に虫たちを貼り付けたシーンは偶然のものだったが、ハリサシガメ幼虫が獲物の残骸を背中に貼りつけた姿と良く似ている。
樹上生活しているヤニサシガメも飼育容器の中ではケースの底を歩くし、狭い飼育容器内では獲物や死骸と接触する機会が多くなる──そのために起こったアクシデントではないかという気がする。
本来であれば樹上生活しているヤニサシガメは体表面がベタベタしていても異物が付着する機会は少ないだろう。それに対し土粒や細かいゴミがたくさん落ちている地上で生活しているハリサシガメは異物を拾いがちなので、積極的にこれを利用するようになったのではないか?
ヤニサシガメ幼虫のアクシデントの延長──その発展型にハリサシガメ幼虫があるのではないか……そんな想像をしたくなる。
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この2種類のサシガメの粘着物質を「分泌物」という共通の要素で考える方が、「片方は松ヤニで、もう一方は分泌物」と複数の要素で捉えるよりも解釈としてはスッキリすると思うのだが……。

松ヤニ説を紹介したカメムシの本

さて、ヤニサシガメ幼虫の飼育を初めて1週間程経過してのこと……問題の「ヤニサシガメのベタベタ」を松ヤニだとする本を偶然見つけた。図書館で借りてきた『いたずらカメムシはゆかいな友だち』(谷本雄治・文/つだ かつみ・絵/くもん出版/2006年)という本で、その中では次のように紹介されている。
 松の木で見つかるヤニサシガメは、ヨコヅナサシガメを黒くしたようなカメムシです。その名前の通り、べたべたした松やにをからだにつける習性があります。
 松やにを見つけると前あしでやにをとり、あしを器用にあやつって、あし全体やおなか、せなかとこすりつけます。人間でいえば、コータールをべたべたとぬりつけるようなおかしな行動です。
 どうしてそんなことをするのかというと、集団で冬越しをするときに体温の低下をふせぐためだとか、乾燥をふせぐため、べたべたしたからだにすることで、うっかりくっついた虫をえさにするため──だとかいわれています。
 ほんとうのところはヤニサシガメにしかわかりませんが、観察の結果を見ると、どれもが正解のように思えます。泥や木の葉、アリの死がいなどをからだにつけて歩くヤニサシガメもいるので、敵から身をかくしたり、すてきなファッションのつもりでいたりするのかもしれません。
(『いたずらカメムシはゆかいな友だち』P.92〜P.93)
著者はヤニサシガメが松ヤニを体に塗りつける様子を観察したかのように記しているが……「本当なのだろうか?」というのが読んだ時の率直な感想だった。この本の記述内容には間違いや怪しいと思われる箇所がいくつかあって、いささか信用性に欠く印象が否めなかったからだ。

この本ではヤニサシガメが体に松ヤニを塗るのは《集団で冬越しをするときに体温の低下をふせぐためだとか、乾燥をふせぐため》と説明しているが、僕が擬木上のヤニサシガメ幼虫に触れてみたところ、冬までにまだ脱皮すると思われるステージの個体もベタベタしていた。「越冬時の防寒&防乾用」に松ヤニコーティングをするのであれば、冬が来る前に脱皮で脱ぎ捨ててしまう体表面にわざわざ手間をかけて塗りつける意味がない──脱皮前の「塗りつけ」は全くの無駄ということになってしまう。
著者は《松やにを見つけると前あしでやにをとり》と記しているが、適度な粘度(?)のヤニ源は簡単に見つかるものなのだろうか? 粘度が高い松ヤニに手を出せば抜け出せなくなって命取りになる危険もあるかもしれない──特に小さな個体が粘着性の高い松ヤニを前脚でとるというのは危険が伴う作業ではないかという気がする。そんな危険を冒してわざわざ松ヤニを利用する意味があるのだろうか……。そもそも適度な粘度のヤニ源は容易くみつかるものなのだろうか?
飼育中のヤニサシガメ幼虫の観察では脚が届かない背中までベタベタしていた──脚の届かない部分にどうやって松ヤニを塗り付けているのかという疑問もある。
もしかすると、『いたずらカメムシはゆかいな友だち』に記されているヤニサシガメが「松ヤニを体に塗りつける行動」は昆虫がよく見せるグルーミングなのではないか……グルーミングを見て、マツヤニを塗つけていると勘違いしたなんて可能性も考えてしまう。
また、引用した後半の《泥や木の葉、アリの死がいなどをからだにつけて歩くヤニサシガメもいるので》という部分は、おそらくヤニサシガメではなくハリサシガメ(別種)のことだろう。この本の内容については信頼性に疑問が残る。
僕には疑問も多い松ヤニ説だが、こうして書籍でもしっかり「松ヤニを体に塗りつける行動」が紹介されていることがわかった。
はたしてヤニサシガメのベタベタは松ヤニなのだろうか?──という思いが強くなる。

脱皮したヤニサシガメ幼虫はベタベタしていなかった

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飼育開始から9日目↑。ヤニサシガメ幼虫は飼育容器内の枝にぶら下がってあまり動かなくなった。背中にはメダカナガカメムシ幼虫が貼りついたまま。そして10日目、ついに脱皮をした↓。
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容器越しの撮影でかなり不鮮明になってしまったが↑……前脚・中脚。後脚と抜けていくのがわかる。脱皮に気づいた時はこの状態だったが、これから20分ほどで完全に抜け殻から離脱した。
ヨコヅナサシガメは木の幹などの鉛直面で脱皮や羽化が行われていたが(それでトウカエデの樹皮で垂直面を設置した)、ヤニサシガメの脱皮は枝にぶら下がる形で行われたのが意外だった。後日、松を観察に行ってヤニサシガメの抜け殻を10余り見つけたが、新芽に残されていた1つをのぞいて、いずれも松葉にぶら下がる形で脱皮は行われていた。
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細い松葉や枝をかかえるようにぶら下がるのがヤニサシガメの脱皮スタイルなのかもしれない。
飼育個体に戻って、ヤニサシガメ幼虫の脱皮後まもない姿↓。
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抜け殻から伸びた細い糸のようなものは、古い気管壁だろう。脱皮後の幼虫は本来黒い部分の色がうすい。腹の方が黒っぽいので、コントラストが逆転したような感じがした。
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抜け殻の背中には5日前に貼りついてしまったメダカナガカメムシ幼虫がそのまま残っている。抜け殻に触れてみたところ、まだベタベタしていた。幼虫のベタベタの有無も確かめてみたいところだが、体が固まっていないうちに不用意にさわると傷つけてしまうかもしれないのでこの時点では自粛。
おそらく脱皮直後からベタベタしているわけではないはずだ(ベタベタしていたら古い殻を脱ぐのに障害となる)。
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脱皮した翌日のヤニサシガメ幼虫の姿↑──体色も通常のものになり、動き回ってもいたので体も固まっているのだろう。画像を撮ってみると、つやがありヤニ・コーティングがなされているかのようにも見える。だが、触れてみると、まったくベタベタしておらず、むしろサラッとしていた。
画像をよく見ると脚にかすかに産毛のようなものが毛羽立っているのがわかる──粘着物質がまだからんでいない状態なのだろう。

脱皮の時点では新たな体がベタベタしていたのでは困るだろうから、直後の幼虫が粘着物質をまとっていないのは当然ともいえる。ベタベタの正体が分泌物であったとしても、脱皮後の分泌(再コーティング)が始まるまで時間がかかるのかもしれない。
脱皮後、栄養不良で分泌が正常に行われない──ということがないように、ちゃんと食事しているのを確認しつつ様子をみる。
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ハバチの幼虫の体液を吸う脱皮後のヤニサシガメ幼虫↑。画像右はおよそ5時間(あるいはそれ以上)かけて吸っていたハバチ幼虫の死骸(左の捕食されているものとは別個体)。消化液を注入しながら吸うのだろうか。かなりしっかりと中味が吸い取られている。

当初は「飼育下で脱皮させ、ベタベタを確認できれば、粘着物質の正体は自前の【分泌物】であると判るだろう」──そう考えていたが、脱皮後1週間を経過してもベタベタは確認できず、ヤニサシガメの体の表面は乾いたままだ。
ということは、粘着物質のコーティング素材は自前の【分泌物】ではなく、外部調達によるもの──【松ヤニ】なのだろうか。
「捕食効率を高めるために松ヤニを体に塗りつける」という解釈には疑問があるが、解釈の真偽は別にして、松ヤニを利用している可能性はあるのかも知れない。
しかしながら、松ヤニだとすればどのように調達して体中に(脚の届かない背中にも)塗りつけるのだろうか──そうした疑問が残る。
なれない飼育をして脱皮後のチェックをしてみたわけだが……これで「スッキリ解決」という感じにはならなかった。

《(松ヤニのない飼育下で)脱皮した幼虫が(脱皮後1週間を過ぎても)ベタベタしていないこと》は確認できたものの、だからといって松ヤニ説を受け入れるにはまだ疑問がある……松ヤニ説を支持するには《松ヤニを体に塗りつける》という行動も確かめてみる必要があるように思い、観察に適していそうな松を探し始めている。
今のところヤニサシガメ幼虫や脱皮した抜け殻は見つかるものの、適したヤニ源はみつかっていない。
1度松ヤニの出ているところでヤニサシガメ幼虫を見つけ、松ヤニとの関係を示唆するシーンが……あわよくば《松ヤニを体に塗りつける》シーンが観察できるかと期待が高まったが……何事も起こらず幼虫はすぐに立ち去ってしまった。松ヤニに触れてみると、すでに固まっていてベタベタしていなかった↓。
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透明なしずくのように見えた松ヤニ↑は比較的新しいものだろう。しかし表面はすでに乾いておりベタベタしていなかった……ここで新たな疑問が浮かぶ。
松ヤニは空気に触れると揮発成分が飛んで固化していくわけだが、この雫状の塊の松ヤニの表面が固化するのにどれだけ時間がかかったのだろう? ヤニサシガメ幼虫の体を覆うコーティングはこの松ヤニの塊に比べれば遥かに薄い。これが松ヤニであれば固化する(ベタベタしなくなる)のに要する時間もわずかだろう。
今回飼育したヤニサシガメ幼虫は飼育開始から10日目に脱皮をしている。少なくとも10日以上は松ヤニの補給はなかったはずだが、脱皮後の抜け殻は、まだベタベタしていた。松ヤニであれば、極薄コートでこれほど長い間ベタベタした状態を保っていられるものだろうか?

ヤニサシガメのヤニ(ベタベタ)の正体について、「飼育してみれば判るだろう」──最初はそう考えたが、謎は深まるばかり!?
まだしばらく悶々と思いをめぐらすことになりそうだ……。


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こんにちは・・・
興味深く飼育観察結果を拝見、拝読させて頂きました!
マツヤニに触れぬよう、飼育を試みられた事、又それを成功されたことに感服致します・・・
何故なら、他のヤニサシガメの飼育観察を試みられた方の本によりますと、ヤニを頼りにしてる(その本来の意味は不明ですが)ヤニサシガメは、ヤニのない生活に適応できず弱まっていく・・・と記されてるからです。
その本に記されてる文に・・・
「マツヤニの分泌部分に口吻を差し込んで、吸収することも確認されてる・・・吸収されたヤニが体内で吸収消化されたものが、或いは老廃物として分泌しているという事も考えられる。・・・」との箇所もあります。
「(おもしろ生態と上手なつきあい方:カメムシ)・・・野澤雅美著」より
この本は、カメムシの表面的な紹介にとどまってるようにも想えますが、作者のかたがヤニサシガメについて興味を抱いてらっしゃるの・・・かな〜?と想わせて頂けた本です。

空気に触れると固まりやすいヤニを、ヤニサシガメはどの様な仕組みで常に粘らせることができるのか?
↓に続きます。

2016/10/30(日) 午後 0:49 [ 今日も、こっそり自然観察! ]

↑からの続きです。
私には、全く想像もつかなく不思議なところですが・・・

常にヤニ状に粘性を持たせるための物質をヤニサシガメが体内から出してる?・・・その分泌物こそが、粘着物質の大元なのか?とか、様々な事を考えてしまいました・・・☆

2016/10/30(日) 午後 0:50 [ 今日も、こっそり自然観察! ]

> 今日も、こっそり自然観察!さん

貴重な情報をありがとうございます!
松脂を吸って消化されたものが老廃物として分泌されるというのは「ありそうだ!」と思いました。それなら脱皮後ベタベタしないのもわかるし、生の松ヤニと考えると不自然な所も説明がつきそうな気がします。

これからはその可能性を念頭に観察してみたいと思います。
飼育しているヤニサシガメ幼虫はまだ元気でエサもとっています。観察が終わったので本格的に寒くなる前に松に返そうと思っていたのですが(今日は気温が低めだったので延期)、松脂のある近くに放して吸うかどうか観察してみたいと思います。

2016/10/30(日) 午後 1:20 [ 星谷 仁 ]

研究者張りの観察ですね!
松脂も分泌物もおかしいならば、新しいものをぬりつけているのかもしれませんね。
松脂が固まらない成分などが関係していそうです。
頑張って謎を解き明かしてください!

2016/10/31(月) 午前 7:09 [ タイコウッチ ]

> タイコウッチさん

長文におつきあいいただき、ありがとうございます。
カメムシに詳しい虫屋さんから、ヤニサシガメの孵化には松ヤニが不可欠だという研究があったという情報を教えていただきました。ヤニサシガメと松ヤニには意外なつながりが隠されているような!?
ベタベタの正体も含め、なかなかミステリアスな昆虫ですね。
もう少し調べてみたいと思います。

2016/10/31(月) 午前 8:40 [ 星谷 仁 ]


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