星谷 仁のブログ

↑クリックでTOPへ/★メニュー★自作ヒーロー/フェレット漫画/童話/コノハムシほか

全体表示

[ リスト ]

昨年7月下旬、初めて出会った珍虫ハリサシガメ。今年は5月末に幼虫を確認してから、注目してきた。謎はまだまだ多いけれど、わかってきたこと・気がついたコトなどを改めて少しまとめておくことにした。昨年の【ハリサシガメぷちまとめ】につづいくパート2ということで。

ユニークで個性豊かな?ハリサシガメ幼虫

イメージ 1
雑木林のふちにあたる石垣で見られるハリサシガメ。この昆虫の最もユニークなところは、幼虫が異物をまとって全身を覆い隠していることだろう。土粒を体中にコーティングし、アリの死骸やゴミをデコレーションしている。背中に盛りつけられるデコ(レーション)素材は色々。捕食したアリも背負うが、アリが巣から廃棄したと思われる虫の残骸やアリの繭(抜け殻)・死骸なども利用しているようだ。
イメージ 2
デコ素材の中には奇抜な(?)コレクションも見受けられるが、念入りな土粒コーティング&異物デコレーションを行うのはカムフラージュのためだろう。ハリサシガメは捕食性カメムシで餌となるのはもっぱらアリ。獲物を得るにはアリの行動圏内に入らなくてはならない。万一、アリに気づかれ集団で反撃されたらかなわない。狩りのさいもアリに悟られずに近づく(待ち伏せする)ことが重要だ。アリはあまり視力が良くないという。触れてニオイで相手を確認するアリに対し、ハリサシガメ幼虫は体の表面を土粒でおおい隠し、アリが廃棄したゴミを身にまとうことでアリを欺いている(ように見える)。チェックに来るアリがいても、自分たちが捨てた用済みのゴミと判ればスルー。デコられたアリの死骸に興味を示すこともあるが、本体のハリサシガメ幼虫には気がつかない──コーティング&デコレーションはアリに対する《隠れ蓑(かくれみの)》なのかもしれない。アリの行列のそばで狩りをするハリサシガメ幼虫を観察したことがあったが、アリはすぐそばで仲間が捕食されているというのにまったくの無反応──ハリサシガメ幼虫の存在に気づきもしないようだった。
また、ハリサシガメ幼虫のボディラインを隠し撹乱するこのコーティング&デコレーションは、視覚にたよって狩りをする昆虫ハンターに対してもカムフラージュの効果があるに違いない。ハリサシガメが見られる石垣では、昆虫ハンター・ヒガシニホントカゲの姿も多く、両者のニアミスはしょっちゅう。接触するシーンを見かけることもあるが、ヒガシニホントカゲは(も)ハリサシガメ幼虫には全く関心を示さない。
イメージ 3
同種の昆虫はどれも同じように見えるものだが、ハリサシガメ幼虫に関しては、デコ素材やそのレイアウトがそれぞれ違っているので1匹1匹に個性を感じる。デコ・コレクションを鑑賞するのも楽しい。

デコ素材は後脚で盛る

異物を背中に盛るというユニークな特徴を持つハリサシガメ幼虫だが、どのようにデコっているのだろう? 中には脚が届かないほど高く積み上げられたデコレーションを背負っている個体もいる。デコ素材が貼り付くしくみについては、まだよくわからずにいるが、盛りつけ行動は今年何度か目にする機会があった。捕食後のアリを後脚を使って、すでにデコられた素材と腹の背面の間に押し込むようすは、こんな──↓。
イメージ 4
捕らえたアリの体液を吸い終えると、アリの死骸は股をくぐって後脚に渡され、両後脚で腹端側から背中に押し込まれる↓。
イメージ 5
可動範囲が広い後脚(青矢印)でアリをぐいぐい押し込もうとする……。
イメージ 6
こうして背中にたくさんの異物を盛りつけるハリサシガメ幼虫だが……脱皮のとき、背中のデコ素材はどうするのだろう?──というのが、咋シーズン解明できなかった謎の1つだった。昨年は羽化後の抜け殻を見ることができたが、抜け殻にはデコ素材が残されていたので驚いた↓。
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-cc-0f/ho4ta214/folder/260812/14/38212514/img_13_m?1497849389
ハリサシガメは成虫になるとコーティング&デコレーションをしない。だから抜け殻にデコ素材が残されているのはわかるが……背中を割って成虫が出てくる際にデコ素材はジャマにならないのだろうか?
そして考えたのが、「羽化」ではなく「脱皮」の場合。またコーティング&デコレーションをしなければならない幼虫の場合は、どうするのだろう? 脱皮前のデコ素材は古い表皮の──抜け殻となる部分の外側に貼り付いている。脱皮したばかりの新幼虫は当然「丸裸」のはずだ。コーティング&デコレーションの再開を始めるのはいつからなのだろう?
もしデコ素材で使われるのが「捕食した獲物だけ」だったとすると、脱皮直後はデコレーションなしで狩りをしなければならなくなる。狩りに必要な《隠れ蓑》ともいえる(?)隠蔽装備なしに「丸裸」で狩りをするというのは考えにくい。おそらく……脱皮をすると、体が固まった時点でアリのゴミ捨場に行ってデコ素材を調達するのではないか──そんな想像をしていた。ところが、実際は……。

デコ素材は再利用〜驚きの脱皮

イメージ 7
石垣の上に残されていたハリサシガメ幼虫の(羽化ではなく)脱皮の抜け殻↑。頭部背面から背中にかけて新幼虫が抜け出した裂け目が残されている。今年はいくつかこうした抜け殻を見ることができた。「!」と思ったのは、背負われていたはずのデコ素材がきれいに剥ぎ取られていることだ。ハリサシガメ幼虫は脱皮した後、抜け殻から、デコ素材を引きはがして再利用しているらしい。
考えてみれば《デコ素材の再利用》は合理的だ。その《荷移し》はどのように行なわれるのだろう? 背中が割れて脱皮する際にデコ素材はジャマになるだろうから、脱皮前に剥がしておいて、脱皮後に拾うのだろうか?
実際に脱皮のようすを見て確かめてみたいものだと思っていたところ、そのチャンスがおとずれた。
イメージ 8
石垣の隙間でみつけた脱皮前の幼虫↑。実際は鉛直面で頭を下にとまっていた(画面左が下側)。これが、この後……↓。
イメージ 9
予想もしていなかった《デコ素材をまといながらの脱皮》──そのため脱皮が始まったことにに気づくのが遅れてしまった。脱皮前の幼虫/脱皮後は抜け殻の脚の位置(矢印)は変わっていない。
この約30分後↓、体の色が濃くなりつつあるハリサシガメ幼虫。
イメージ 10
脱皮前、デコ素材と新幼虫の背中の間には古い表皮(抜け殻)があって、これによって隔てられていたはずだ。なのに抜け殻を脱ぎ捨てるとデコ素材は、ちゃんと新幼虫の背中に移っている!?──何ともフシギな光景に見えた。テーブルクロスを敷いた食卓の上に食器や花瓶を並べ、一瞬でテーブロクロスだけを引き抜き、食器や花瓶を食卓の上に残す──そんな「テーブルクロス引き抜き」芸を連想してしまった。
この後の展開と思われるシーンは、時を前後して石垣の上で目撃していた↓(別個体)。
イメージ 11
抜け殻がデコ素材にくっついてきてしまったようだ。テーブロクロスが引き抜ききれなかった形!?
イメージ 12
このときの抜け殻は完全離脱した時点で両触角が折れていた──それだけ離脱に手こずったケースだったのだろう。まるで《抜け殻と新幼虫の間でデコ素材の奪い合いをしている》かのようで、これも何ともフシギな光景だった。
抜け殻もついでにデコってしまえば良さそうなものだが、苦労してまで切り離すのには理由があるのだろう。ハリサシガメ幼虫がアリとの接触で(ニオイで)バレないように体表面を土粒でおおい隠しているのだとすれば、自身の(ニオイのついた)抜け殻をデコらずに排除するのは理にかなっている。

凛々しい成虫は翅多型

イメージ 13
体を覆い隠していた幼虫時代から一転!? ハリサシガメの成虫は凛々しく見える。濃淡のある黒い背中に逆「ハ」模様が美しい。前胸背の両側に突き出した突起(側角)や小楯板から突き出した厳めしい突起にも魅力を感じる。
イメージ 14
ルックスが精悍になっただけでなく、動きも成虫は幼虫のときより俊敏になっている。これは《隠れ蓑》を捨て、獲物や天敵から見つかりやすくなったことを考えると当然なのかもしれない。なぜ成虫になって《隠れ蓑》を捨てたのかという疑問が湧くが……繁殖という重要な役割りを担う成虫では伴侶を見つけるさいに《隠れ蓑》はかえって障害になるのかもしれない。また、昆虫の成虫は飛翔能力を持つものが多いが、翅を開閉するときコーティング&デコレーションはジャマになるのではないか──という可能性についても当初は考えた。しかしこれまで僕はハリサシガメが飛翔したり飛ぼうとするところを見たことがない。ハリサシガメは飛ぶことができないのではないか……と(今のところ)思っている。
トレードマークの逆「ハ」模様がある翅だが、個体によって翅の大きさ(長さ)にはかなり格差がある(翅多型)。少なくとも短翅型の個体には飛翔力はなさそうだ。今年これまでに見られた成虫の中から↓。
イメージ 15
イメージ 16
短翅型と長翅型の2極に分化するのではなく、その中間型も存在している。同じ時期に同じ場所で発生しているのに、これだけ違うというのもフシギな気がする。前胸背の側角の間にある紋にも個体差がある。

前脚&中脚のレガースは保定用!?

イメージ 17
ハリサシガメを観察していて気がついた、前脚と中脚の脛節(けいせつ)内側にある《脛(すね)当て》(レガース)のようなもの。これは成虫だけでなく幼虫にもある。ハリサシガメは成虫も幼虫もアリを捕食するが、狩りの際には前脚と中脚を使って獲物を押さえる。そのさいに小さなアリでもしっかり保定できるよう、ラバーのような(?)《脛当て》部分でグリップ力を高めているのではないかという気がする。
イメージ 18
『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』(石川忠・高井幹夫・安永智秀/全国農村教育協会)には、クビアカサシガメ亜科(ハリサシガメ属が含まれる)の項目に特徴の1つとして「海綿窩が前・中脚脛節に存在する」と記されている。用途についての記述は無いが……《海綿窩》というのが、この《脛当て》のことなのだろうか。

成虫♂♀は腹の形が違う

最後にハリサシガメ成虫を見ていて気づいたオスとメスの腹の形の違い。
イメージ 19
イメージ 20
前回の記事で記したばかりなので、詳細は省くが、ハリサシガメこの体勢で交尾している姿をよく見る。オスの腹の湾曲は、この体勢でメスの腹の膨らみに対応した形のように見える。

ハリサシガメぷちまとめ
珍虫ハリサシガメ
ハーリーをさがせ!ハリサシガメ幼虫
ハリサシガメの抜け殻
ハリサシガメ幼虫の粘着性物質は水溶性!?
ハリサシガメ:幼虫・抜け殻・成虫
ハリサシガメの捕食
ハリサシガメは翅多型/腹の大きなメス
アリをデコったハリサシガメ幼虫
ハリサシガメ幼虫のデココレ素材
ハリサシガメ幼虫の装飾行動 ※ハリサシガメ幼虫はどうしてデコるのか?
ハリサシガメ幼虫の狩り
ハリサシガメの脱皮殻
ハリサシガメ:脱皮後の《荷移し行動》
ハリサシガメ幼虫のデコレーション&コーティング
捕食したアリをデコるハリサシガメ幼虫
ベールを脱いだハリサシガメ
「ハ」は「ハリサシガメ」のハ
ハリサシガメのペア
謎めいたハリサシガメの脱皮
翅多型のハリサシガメ
ハリサシガメのレガース
ハリサシガメの腹
本とは違う!?ハリサシガメ
レガースで獲物を保定するハリサシガメ
ハリサシガメの単眼&脛節など
ハリサシガメ幼虫と脱皮殻
ハリサシガメ脱皮後の再装備は?
ハリサシガメ幼虫のスッピン
ハリサシガメの捕食〜擬装行動
白腹のハリサシガメ幼虫
クロオオアリを狩ったハリサシガメ幼虫
ハリサシガメの羽化殻&脱皮殻
ハリサシガメ:初成虫&若齢幼虫
ハリサシガメとファーブル昆虫記
ハリサシガメ羽化殻のレガース
パリコレならぬハリコレ〜ハリサシガメ幼虫:擬装の意味
ハ裏!?針!貼り?サシガメ
ハリサシガメ:前胸背の模様など
アリを襲うハリサシガメ/アリに襲われるハリサシガメ
翅多型のハリサシガメと前胸背紋

ハリサシガメ記事一覧
昆虫など〜メニュー〜
※Yahoo!ブログ終了に伴う移行先→FC2ブログ>チャンネルF+

.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事