【中編連載小説】
「ちぎれ雲 〜起立編〜」第二十話
星ひかる著
私は未だに、銀行の窓口業務で売られている投資信託のことが心配でならない。
銀行といえば、元本保証のイメージが強すぎて、その銀行員から、
「預金の他に、こんなにも良い商品がありますよ」
となれば、いくら元本が保証でないといわれたとしても、元本保証の気分で買ってしまうお年寄りはいるだろう。
フィナンシャル・プランナーと称して、年配者に近付いては退職金の使い道をあれこれアドバイスしている。
銀行預金や日本国債でしか運用したことのない人はたくさんいるわけで、そのようなガチガチの元本保証の商品しか買ったことのない人にしたら、たとえ一割しか損してなくても怒るのは必至であろう。
「そんなもの買った覚えがない」
と顧客からいわれたらお仕舞いだ。
商品を販売する上での大切な説明義務を果たしていないことになる。
訴訟を起こされたなら、弱者救済の観点からも販売した側が全面的に負けることだろう。
私はそういう修羅場を幾度とみてきた。
大抵は言った言わないの水掛け論になる。
こういう事態を避けるために、最近では用意周到に委託注文伝票を書かせたり、この取引はなにがあっても自己責任である旨、記載された書類にサインを求めるようにもなったようだ。
正直、私自身、詳しく説明しないで販売したこともあるが、得てしてそういう顧客は、余りトラブルにはならない。
お互い意思の疎通のとれている彼らにあっては、投資に対しても自己責任を常に持ち、至っておおらかなものだった。
自分の損失を後回しにして、営業員の苦労の心配までしてくれる。
細心の注意を払うだけ払い、顧客も私も納得して購入してもらっていたはずの方が寧ろトラブルは多かった。
人間、お金持ちになればなるほど、そのお金を減らしたがらないわけで、彼らはみな、投資に対しては慎重派だ。
特にその資金が、先祖代々から引き継いできた場合、もしも自分の代で無くすようなことでもなったら大変だ、と考えてしまうのだろう。
元々の金融商品取引法では、投資家は弱者とみなされているわけで、販売する側は、細心に細心の注意を払わなくてはならなかった。
この法律があるなしに関わらず、きちんとした説明をした上で商品を販売するのは当然である。
各銀行とも投資信託を奨めている銀行員のセールストークには、細心の注意を払っているはずとは思うが、トラブルはどんなに注意をしていようと、起きてしまう。
ニュースには取り上げられないが、表に出てこないだけで、投資信託のトラブルは日常的に起きていることであった。
かつて「自己責任」と盛んに叫ばれていたが、これとてどこまでが自己責任なのか非常に曖昧な言葉であるのだ。
「いまから会議に入るみたいです」
神坂がいった。
「そうか、じゃあ電話を切らないとな」
私が電話を切ろうとすると、
「先輩、いいんです。ちょっと話があるんです」
神坂の早口で小さな声が、私の電話を切ろうとする手を止めた。
〈第二十一話へ続く〉
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銀行が持ってくる話は、必ず「元金保証」ですね。
だけど、細目を見ると違うときがあります。
銀行自身ではなく、第三者に委託しているときは要注意です。
知らない間に元本割れしているときがあって、そこで銀行に問い合わせても、担当者は異動させられていなくなっていたり…とか。
お金がらみの商品には、必ずリスクが付きまといますね。
ヘッジみたいなハイリスクではないにしろ、リスクがあります。
2015/11/20(金) 午後 5:33 [ ねずみ ]
ねずみさん、こんばんは。
未だに、ありますね、この問題は……。
オレオレ詐欺でもそうですが、これもほぼお年寄りがやられてます。
もしくは、金融をしらない金持ちの素人さん。
いつもありがとうございます♪
2015/11/20(金) 午後 6:52 [ ホシヒカル ]
兄さんて、凄いというか、壮絶な業界に身を置かれてたんですね(^^)
敢えて、ノンフィクションでも面白みがあるのかな?とも思いました^^*
2015/11/20(金) 午後 7:29 [ よっち ]
よっちさん、おはようございます。
この世界はある種、特殊ではあります。
みんながみんなというわけではなく、やればやるほどそうでありますが、
仕事しない人には平凡な世界かもしれません。
いまいる清掃業も同じく特殊と思いますし、どの世界でも極めるとはそういうことなのかもしれません。
私は、中途半端だったかなあ……。
いつもありがとうございます。
2015/11/21(土) 午前 5:58 [ ホシヒカル ]