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【即興超短篇(38)】 「バンくん、逝く」 星ひかる著 二十二年と一ヶ月。 ぼくは猫としてヒカルンのうちにやってきた。 優しいおじいちゃんと、おばあちゃんとも出逢えた。 少し恐かったけどヘレンお姉ちゃんと、怒ったのをみたことない白いふわふわのロンお兄ちゃんとも出逢えた。 ヒカルンの彼女にも、確か……二人、出逢えた。 ヒカルンに抱かれて観るベランダからの景色が大好きだった。 ちょっと煙草の煙が目に痛かったけど。 夜は、お星さまを眺めた。 昼には、雲を見詰めていた。 ヒカルンは時々、睫毛を濡らしていた。 ぼくがいつも舐めてあげていたんだ。 おばあちゃんがヒカルンのご飯を一生懸命作っていた。 フライパンの音が軽やかで耳に心地好く聴こえてくるんだ。 ぼくもお腹すくから、ヒカルンの隣で一緒に食べていた。 おじいちゃんとは、いつもテレビを観ていた。 おばあちゃんは、おじいちゃんの病気の看病でいつも疲れていたから、ぼくが横に並んで眠ってあげていた。 でもね、ぼく……、そろそろ行かなきゃ。 ヘレンお姉ちゃんとロンお兄ちゃんのところに行かなきゃ。 もう少し居ても良かったけど、みんなが元気なうちに行くね。 ヒカルン、おじいちゃんとおばあちゃんを大切にするんだよ。 エリカさんとミーちゃんを幸せにするんだよ。 悲しませたらぼくが承知しないよ。 夜には、ぼくのお星さまを探してね。 昼には、ぼくは雲になってみんなの前に来るから見付けてね。 約束だよ。 二十二年も、ありがとう。 ぼくは、幸せでした。 みんなに出逢えて、幸せだったよ。 じゃあ、ね……。 〈了〉 |
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2016年04月20日
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