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「もてない女の人のマイナス感情は、やっぱり分からない。また外見は正直なんだかんだ言っても、無視することはできないって思うよ」
「相変わらずだよねー」
やはり大きな勘違いをしている。
「でも、千賀とかもそうだけど、私、思うの。何ももてないからといって、卑屈になる必要なんてないって。もてないからと言って、気にすることなんてないよ」
「気にするなって言われてもさー、そんなの無理なんだーって」
そんなことは絶対ない。もてるからとかもてないからとか、関係ないんだから。
「誰だって、きっと波長の会う人、気の合う人、趣味が同じ人とか。そんなの私も、千賀も、誰だっているでしょ? そんな人を好きになったら、いいのよ。絶対そんな人いるはずだし。見つける気があれば、絶対見つかるよ」
「そうかなー?」
「もてるから幸せ。もてないから不幸せ。そんなもの、何も関係ないもん。何の自慢にもなんないけど、私、全然幸せなんかじゃないから」
「亜理紗。ありがとう。私、なんだか勇気が湧いてきた。亜理紗。ところでさー、別のまったく違う質問っていうか、お願いしていい?」
「男の話だったら、もう勘弁してね」
「違うよ。今度一回、亜理紗の家に泊まりにいってもいい?」
「どうして? 家になんか来て、何するの?」
予測なんかしているわけがなかった。
亜理紗にとっては、突然のしかも困った話だ。
父を他人になんか会わせたくも、紹介したくもない。
ましてや、友人の千賀になんて存在すら知られたくなかった。きっと父のことだから、友人の前でも関係ない。逆にいつも以上に異常なことをしたり、要求してくる可能性が高い。
同じ変態のDNAを持つ亜理紗だから、なんとなく想像がつくのかもしれない。
いずれにせよ考えるだけで、身の毛がよだつ思いだ。
だからといって、千賀にあからさまに不快な表情を見せるわけにはいかない。ごく自然に問い返したつもりだった。
「私ね、少し変わってるのかもしれない。でもさー、本当にねー、親しい友達って思った人は、必ず互いの家に泊まり合うの。朝までさー、いろんな話をしたいんだ」
「そうなんだ。でも私ん家、父がすごく干渉してくるし、うるさいの」
「私さー、不思議と年の少し離れた人には、結構人気があるの」
「そうなんだ」
恋愛のことなど意識もしない年配の人であれば、千賀の言う通りだろう。そのように感じたが、千賀に対して失礼極まりない。素直に反省した。
「だからさー、亜理紗のお父さんにも気に入られるかもね?」
千賀には申し訳ないが、父が気に入ることはないだろうって思う。でも本当に気に入られたりするほうが、困ってしまう。即座に、大切な友達を失うことになる。
ただ変態性を持つ父だから、やはり百パーセント安全とは言い切れない。
「父って、かなり変わってるから。千賀が逆に、嫌がると思うよ」
「そんなこと絶対ないよ。でも、私が泊まりにいくのってさー、やっぱり迷惑?」
冷酷無情の女にはやっぱりなれなかった。千賀の申し出を快諾してしまった。
自分でいうのもおかしいが、女友達は大切にするほうだ。男に関しては、粗末に扱ってしまっても、心が痛んだりはしないのに。
「そうしたら早速だけど、今度の二二日の日曜日に泊まりにいってもいい?」
「分かった。いいよ」
心の中で、何度も両手を合わせて祈願した。千賀が家に来ても、無事でありますようにと。
最初は、同時にもう一つお祈りをしていた。これを機に、千賀との友情が深まりますようにと。だけど、そんな厚かましいお願いはやめることにした。
咄嗟に、『二兎を追うものは……』という、否定的な諺を思い浮かべてしまった。
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小説「トラウマ」(日本語)
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大学に入ってすぐ、軽音楽部に入った。大好きな音楽にいつも触れていたい。また、一曲でいいから、オリジナル曲を作ってみたかった。
クラブに入って、すぐにバンドのメンバーも決まった。また、すぐにそのクラブ内で、友達もできた。不思議なことに、友達になったのはみんなバンド・メンバー以外の女性だった。彼女たちは、友達というよりも合コン仲間というか飲み友達みたいだった。そんな友達が四人ほどできた。ただ彼女たち以外に、友達と言える人間は一人か二人しかいなかった。
彼女たちの中でも絵留奈は、普通の友達に限りなく近かった。彼女は亜理紗と一緒で、かなり美しくお色気ムンムンの美女。彼女も、まったく男に不自由することはないみたいだ。
絵留奈とも違うバンドだったが、時々ジャム・セッションをした。彼女は亜理紗と同じで、ギターを担当している。亜理紗ほどではないが、結構腕が立つ。
好きな音楽も考えかたなども、ほぼ同じ。彼女とはかなり気が合ったし、互いに信頼できる関係でもあった。少なくとも、亜理紗はそう思っている。
大学三回生の梅雨のある日のこと。相変わらず、絵留奈が相手を見つけてきて、合コンに参加していた。
合コンの相手はたしかその時、都市銀行に入ったばかりの新入社員だった。
「亜理紗。今日だけは、ホントにお願い」
「何? 地球最後の日みたいな顔してるわよ!」
「どうしてもあのメガネの男の子、私に譲ってほしいの」
合コンが始まってしばらくして、千賀がやってきて耳元で懇願してきた。
「別に私はいいけど。でも、よりによって、あんなブサイクな男でいいわけ?」
「とにかく譲ってもらっていい?」
「余計なお世話だと思うよ。でも、世の中もっとまともな男はいっぱいいるから。何も銀行マンだからといって、そこまで自分の値打ちを下げなくてもいいんじゃないの?」
「ありがとう。亜理紗のその言葉、その気持ちはすごーく嬉しいよ」
「だったら、考え直すんだよね?」
「でもね、私さー、外見とかあんまり気にしないし。それになんてたって、銀行マンと結婚できたら、将来もさー、すごーく安泰だしね」
「今頃から結婚とか、もうそんな将来のことを考えてるの?」
「え?」
とぼけたみたいな気がする。答えたくないのかもしれない。そんな千賀の気持ちも分からなくもない。でも、合コンはお見合いじゃない。
そのことを千賀に認識してほしかった。
「千賀にとって、恋愛って結婚の手段ってわけ? 今まで合コン参加してたのも、お見合いパーティーだったてこと?」
「そうよ。別に亜理紗たちに迷惑かけたわけじゃないし、何も問題なんかないでしょ?」
しつこく問い詰めるもんだから、とうとう千賀は開き直ってしまった。
「私には、いや、私たちには何の問題もないよ。でも、千賀はホントにそれでいいわけ?」
「いいから、そう考えているんでしょ」
少し機嫌が悪くなってきた気がする。
「『もっと恋愛を青春を楽しまなくっちゃ!』みたいな気持ちってないの?」
「亜理紗には、きっといくら話しても分からないと思う」
不機嫌になりかけたと思ったら、すっかり呆れられてしまった。
「どうして? 私、そんな馬鹿な女でも、薄情な女でもないと思うけど」
「そういうこと言ってるんじゃない」
「じゃあ、どういうこと?」
「亜理紗みたいにさー、男にいつもチヤホヤされてる人に、男に相手にもされない私みたいな女の気持ちなんて理解できっこないんだーって」
「ごめん。嘘つくの厭だから、本当のこと言うけど……」
「いつもみたいに、ズバッと言ってくれていいのよ」
千賀は何か勘違いをしている。そんなズバズバと辛辣なことを言った記憶がないんだけど。
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「お父さん。ひょっとして、毎日私の箪笥とかチェックしてるの?」
「俺は、お前を心から愛してるんだ。俺は、もうお前なしでは生きていけないんだよ!」
完全に狂っている。心がすさんでいるというより、腐っている。父にそんな熱く恋を語られても、嬉しいはずがない。ただただ恐怖で、身の竦む思いだった。
「お父さん。私、お父さんのことは好きだよ。でもね、私たちは親子なの」
「そんなことは分かってるさ」
「もちろん、お父さんが可哀想だと思ったし、お父さんのこと好きだから……だから、セックスはしてあげてきた」
「俺はお前を抱きたい。それしかない」
「でも、お父さん。分かってると思うけど、私たち異常な関係なの! 私たち間違いなく変態だし、倫理観のかけらもないんだって思う。
だから、お父さん。いくら私のことが好きだって言ってくれても、そんなこと、あっては駄目なことなの! それに私もやっぱり、普通に彼氏を作って、普通に恋もしたいよ」
「亜理紗。さっきも言ったように、俺はお前のことを心から愛している。お前が俺のすべてなんだ」
「そんなこと言われても……」
「だから、今日のことも絶対に許さない! これからももちろん、そんなことしたら、俺はその相手の男を殺してやる!」
ついに、聞いてはならない一言を聞いてしまった。
完全に狂っている。常軌を逸していた。
父の発言は、早かれ遅かれ、現実のものとなる。そんな気がすごくした。
「お父さん。お願いがあるの。聞いてくれる?」
「俺は何も、気なんか狂ってないぞ。だから、病院なんかは行かないからな」
亜理紗の気持ちは、完全に読まれていた。
何か言葉を返さないといけないと思ったけど、何も出てこなかった。
父が、そのまま話を続けた。
「それにさっきも言ったように、亜理紗は俺の女。それは、これからもずっとそう。お前を誰にも渡したりなんかしないからな」
「お父さん。分かった。私、一生お父さんの女になるから。その代わり、病院にだけは行ってほしいの。今のままだったら、きっとお父さん、気が狂ってしまうようになるもん!」
少しだけ、芝居がかってしまった。涙交じりに、可愛く、そして切なく伝えた。
「亜理紗。お前、そんなこと言って、俺から逃げようとでも思ってるんだろ?」
「お父さん。私は、お父さんを悲しませたりなんか絶対しないから」
「なんか無理して言ってないか?」
「どこにも逃げも隠れもしないよ。私は、純粋にお父さんが心配なだけ。今のままだったら、私が何もしなくても被害妄想で人を殺める。そんなことも、あり得るから」
「でも、入院とかは絶対厭だからな」
父の態度が、緩和した。妥協案にも似た発言をしてくれた。
「そんな心配は、お父さんはしなくてもいいから。すべては、先生に任せれば?」
父の意向に敢えて、反論しなかった。まずは父を病院に連れていくことが、先決だ。だから、肯定もしなかったが、否定もせず、父が病院に行くという意思を固めようとした。
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その日家に帰ると、父が玄関で仁王立ちをして、亜理紗の帰宅を待っていた。
「亜理紗。こんな時間までどこへ行ってたんだ」
帰宅時間が遅いと非難されるのは、合点がいかなかった。家に入る前に、時間を確認していた。まだ八時前だったんだから。
どういう理由なのかは分からない。だが父が怒っているのは、一目瞭然。少し離れていても、お酒を飲んでいるのが分かる。すごい臭いが嗅覚を刺激してくる。
普段も家にいる時は、よくお酒を飲んでいる。だけど飲むのは好きなくせに、あまり強くない。すぐ酔っ払い、呂律が回らなくなる。今も、それに近い状態だ。
「お父さん。まだ八時前なんだけど」
「そんなことより、亜理紗。今まで、どこへ行ってた?」
依然として、怒った口調で問い詰めてくる。
最後まで言い切ると、しゃっくりをし、身体がよろめいていた。
「友達の家だけど」
「そこで何をしてた?」
「何をって、別に……」
いくら変態の父だといっても、さすがに「セックス」とは言えなかった。
「別に。私が何をしようが、お父さんには関係ないでしょ!」
「開き直るのか?」
「そんなんじゃない。でも、いちいちお父さんに何もかも言う必要なんかないでしょ!」
「俺がこの前買ってやった下着に着替えて、出ていっただろ!」
この時、父がすべてを悟っていることが分かった。同時に、単なる変態ではなく、狂った獣だと思った。
父に対して、言葉では言い表せないほど、恐怖心をもつこととなった。
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その日を境に、父は三日に一回ほどのペースで亜理紗の身体を求めてきた。
父は、明らかに狂っている。また母も父とはまったく種類が違うが、最低な女だと思っている。
二人とも異常な人間なのだ。
そんな両親のもとで生まれ育ってきたからなんだろう。
また、いくら家族とはいえ、他人のことを偉そうに言える立場じゃなかった。
父に抱かれること自体、世間一般ではあり得ないこと。そんなことがあれば、ほとんどの女性は、大きく深い傷を残すだろう。立ち直れなくなるかもしれない。そう言っても、過言ではないだろう。
亜理紗も、初めて抱かれた男が父だったということは、もちろんショックだった。暫くは、とてつもなく傷ついた。そこまでは、きっと普通の女性と変わりないはず。
だけど、そんな哀しい思いとは別に、セックスに対する興味が大いにあった。それでも、他の同年代の女性も、同じ感覚は持っているはず。
ところが、亜理紗はやっぱり両親の、特に父のDNAを受け継いでいたんだろう。いくら興味が大いにあったとしても、父とそんな関係を望むことはないはず。それくらい、興味もそうだが、倫理観や性的欲求が尋常じゃないんだろう。
初めてのセックスは、痛いだけ。そんな予備知識を持っていた。
だけど、相手が父であるにもかかわらず、なんだか刺激的で快感を覚えた。
それが、亜理紗の初体験の感想だ。
近親相姦という言葉は知らなかった。しかし、そのようなことが異常であることは認識していたつもり。
にもかかわらず、気持ち良いことをして、お小遣いがもらえる。
道徳心のことなんかより、いい小遣い稼ぎになる。それくらいにしか、思っていなかった。
また父とのこともあり、相手が誰であれ、セックスに対する抵抗はなくなった。それどころか、『来るもの拒まず』状態だった。ただ気持ちはそうだったが、現実的には父以外の男と、肌を合わせることはなかった。
というか、そんな機会をことごとく父に潰されたのだ。それでも気持ちの中では、いろんな男と、いろんなセックスをしたい。かなり貪欲なセックス観を持つこととなった。
更に、男に対して、尊敬とか信頼などの概念はまったくなくなった。亜理紗の認識は、男は単なるセックスをする相手。つまりは、欲望を満たす為の道具ぐらい。そんな薄っぺらい、価値も尊厳も何もない。
高二の春になり、父に対してまったく異なる感情を抱くようになった。
大学生の彼氏ができ、亜理紗は初めて父以外の男と性行為をした。
その時、すごくショックを覚えた。
どうしてなんだろう?
変態なのかもしれない。
彼氏との初めての性体験にもかかわらず、まったく感じなかった。
それにひきかえ、父はすべての性感帯を心得てくれている。意図的に激しくしてみたり、焦らしてみたりなど。とにかく、多種多様のテクニックを披露してくれる。
その結果、狂ったように悶絶の声をあげてしまうのだ。
やはり、彼氏は大学生だからだろうか? 経験が少ないから、未熟なプレイしかできないんだろう。
また、テクニック云々もそうだけど、気持ちに余裕がまったく感じられない。いや、余裕だけじゃない。気のせいかもしれないけど、気遣いがまったく感じられない。
こっちが感じているのかいないのか、何を求めているのか、まったく気に留めていない。彼氏は、自分のことで必死。抱かれている間、ずっと落ち着かなかった。
フラストレーションだけが溜まる、彼氏とのひとときとなった。
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