英会話習得NAVI

英会話習得方法、習得すべきものを紹介していきます。

短編小説「代償」

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全1ページ

[1]

第1話「まさか!」

 初めて訪れる家でもない。それどころか、暗闇でも簡単にドアを開け、部屋まで辿り着くことができる。それくらい勝手知ったる家――6畳ふた間の古いマンションだけど。しかし、大阪の街の中心地――梅田にも難波に出るのにも便利。 いつもそう思っていた恵子だった。
 その恵子が、ふたたびこの家に戻ってくることとなった。
 まさか、自分がここに足を踏み入れることなんかない。
 恵子は、そう思っていたのは火を見るよりも明らか。
 今も勝手知ったる元我が家にもかかわらず、玄関の前でもじもじしている。
 昨日からもう既に八時間以上は経過している。にもかかわらず、いまだ目を腫らし、涙が溢れ出ている。
 玄関のところどころペンキのはがれたドアも、あの時のまま。
 だが、そんなことなど気づいてはいないだろう。
 背中を丸くし、俯いたような格好。そして身体全体が揺れている。
 涙が枯れることなく、ずっと泣きじゃくったままだからである。
 ようやくコンバースのバスケット・シューズを履いた小さな左足をゆっくりと動かした。もちろん前へと。玄関に足を踏み入れようとしたとき、ガタンガタンと環状線が通り過ぎる大きな音が鳴り響いた。
 このマンションのすぐ横手が高架になっており、環状線やJRの電車がひっきりなしに走っている。だから、この近所の住人はこんな騒音にも慣れっこ。
 久しぶりに聞いた騒音に、恵子はびっくりしたわけではない。ただ勇気を持って家に入ろうと思った気持ちが、萎えてしまった。
「わたし、本当にここに入ってええん?」
 恵子は足を止め、後ろを振り返った。
「入ってええから、一緒に帰ってきたんやろ?」
「それは、そうなんやけど・・・・・・」
「恵子。お前の家は、どこにもないんやで。お前の帰るところはここなんや。ここが、俺と恵子のウチや」
 恵子の手をぎゅ〜っと握りしめながら、少し白い歯をのぞかせながら、健吾はそう語った。いつものように熱く。そして力強く。
 
 
*今日の会話in English
 
"Is it really okay if I get in?"
"You're coming back with me, if I would like to let you in."
"That's right. But..."
"Keiko. Your place is nowhere else but here. This is the place for you and me to live."

全1ページ

[1]


.
yosh
yosh
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
友だち(2)
  • aka12aya70
  • kiyu
友だち一覧

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

Yahoo!からのお知らせ

よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事