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グレッグは私より半年ほど先輩の英語講師。彼のアドバイスに
したがって、みごとかなりお気に入りだった田口麻美と彼女の友達を誘うことに成功した。
今こうしてグレッグと4人で、客観的に見ればダブル・デートをしているように見える。
グレッグは、彼が皆と一緒に飲みに行きたいといって誘えば、絶対成功する。そう教えて
くれた。そして、彼のアドバイスは私に明るい光を照らしてくれた。
「Keiko. Wouldn't you like to get to know me much more? Actually, I'd really like to get to know you
more.佳子。私のこともっと知りたくない? 僕はあなたのこともっと知りたいんだけど。ちょっとこっちで話し
てもいいですか?」
グレッグは、本当に優しいいいやつだ。
私に気を利かしてくれようとしている。
お気に入りの麻美と2人だけで話ができるように段取りをしてくれている。
「Greg. I'm sure that you really wanna talk to Ms. Kawai. And you know, vice versa.」
私は彼の行為に感謝をしながら、麻美の友達の川井佳子もグレッグに気があることを示唆してやった。
「Thanks, Michi. So, I wanna talk to her, so enjoy talking to Asami. Asami, please have a good time with
Michi.」
「えっ、八戸さん。今グレッグは何て言うてはったんですか?」
「彼はちょっと川井さんと話がしたいらしいです。だから、田口さんは私と楽しく話をしてくださいって言うてます」
「あっ、あぁそうなんですか」
彼女のテンションが一気に下がっていったのがはっきりとわかった。
「田口さんは、習い始めてまだ・・・・・・」
「でもなんで八戸さんは、英語がそんな上手に話せるんですか? そんなルックスやのに」
英語は顔で話すものじゃない。
彼女にそう抗議してやりたかった。でも大人げないので、やめることにした。
「慣れですよ。それに勉強のコツっていうのがあるんです」
「そうなんですか」
「ところで、田口さん。私と一緒にいてたら英語喋れるようになりますよ。よかったら、私と付き合いませんか?」
「えっ!?」
「突然でびっくりしました、やっぱり?」
麻美は目が飛び出そうなくらい、鳩が豆鉄砲食ったような顔をしている。
「突然とかっていうより、そんな告白していいんですか? 私、生徒ですよ。それに、ごめんなさい。
その八戸さんのルックスで、よくそんな自信満々に告白できるんですね」
私のテンションが、ここにきて一気に下がってしまった。
外見に関してはコンプレックスの塊みたいなもの。
だからその外見のまずさを指摘されるのは慣れているので、ショックではあるが落ち込むほどではない。
彼女の今の話しぶりでは、良い返事などもらえない。
そう思ったことで、目の前が真っ暗になった気分になったのだ。
「では、やっぱり駄目なんですね」
「1週間だけという限定で、私のわがまま何でも叶えてくれるんやったら、付き合ってもいいですよ」
「えっ、ほ、ほんまですか!?」
「はい。私嘘は嫌いですから。正直、八戸さんの外見は合格点に達してないです。でも、すっごい優しそう
やし、それに楽しい時間を私に与えてくれそうやから」
「そ、そらぁ、もちろん。アイ・ウイル・ドゥー・エニシング・フォー・ユー。田口さんのためやったら、私何でもしますよ」
大阪の街が一瞬にして、リオになったような気分。
カーニバルが始まり、大騒ぎだ。
こんなに嬉しくて身体が震えたのは生まれて初めてのできごと。
「有難う。でも、私の寿命を延ばすことはでけへんと思います」
「えっ!?」
身体の震えは止まった。
いや、正確に言うなら、震えは続いている。ただ、その震えかたが異なったようだ。
「はっきりは言いたくないですけど、でももう1回確認していいですか?」
「な、何ですか?」
「私たち付き合うの1週間だけでいいんですよね?」
「そ、それはもちろん」
その翌日、彼女が余命数カ月と医者から宣告されたことを聞いた。
最後に素敵な思い出を残したいから、彼女が憧れだった青い目の外国人と
親しくなりたいから、英会話を習いに来たそうだ。
私は昨日は子供のようにはしゃぎまくったが、やはり彼女の思いを本当に叶えて
あげたい。
そう思って、いくらほんの1週間とはいえ、彼女と交際するのを諦めた。
そして、グレッグにその事実を告げ、彼に彼女と楽しい時間を共に過ごしてやるよう
お願いした。
勿論、グレッグは2つ返事で私の要求を呑んでくれた。
私の初めての恋の成就は、1日も経過せず終了した。
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3分恋愛小説
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「どうしたんですか、冬野さん」
私は平静を装い、彼女に白々しく問うた。
「先生とコミュニケーションとるの手伝ってほしいんです」
「いいですよ。任せてください。Richard, what were you going to tell her?」
リチャードもかなりの役者。
全く動じるようすもなく、涼しい顔で私たちの話を聞いている。
「Michi. I was gonna tell her that I would give her something great. You know,
the paperback you just found for her.」
「Oh, thanks, Richard. It's really sweet of you.」
彼女がどれだけ理解できているか分からないが、まったく彼とは普通に真実味を帯びた
会話をごく当たり前にした。
「八戸さん。何だったんですか?」
「いえ、ちょっと照れくさいんですけど、彼が冬野さんに私が見つけてきたスティーブン・キングの
ペーパーバックをプレゼントしようとしてたんですよ」
「えっ!? ペーパーバックって、ひょっとして一番最初ここに来たときにお話ししたもの? 私が
すっごくすごく読みたいって言ってた本ですか?」
話しながら、彼女の表情が時の経過とともに、変貌をとげていく。
顔がくしゃくしゃになっても、彼女は私には美しすぎた。妖艶そのものだった。
「はい、そうです」
「嬉しい。ホントに有難うございます」
さすがに、受付カウンターでの会話なので、私もそこから突っ込んだ話をすることはできなかった。
彼女も嬉しい気持ちでいっぱいだが、それ以上私にとって心臓が飛び出すような言動はなかった。
彼女のレッスンが始まった。
いつもなら、問い合わせ顧客の対応がないときは、7時で業務を終了する。
だがこの日は彼女のレッスンが終わるのを待つことにした。
「八戸さん。今日は帰らへんの? 良かったら一緒に食事でもって思ったんやけど・・・・・・」
私より3カ月先輩で職場仲間の川井が、声をかけてきた。
「ごめん。川井さん。今日はちょっとすることがあって・・・・・・」
「ひょっとして、冬野さんに用事?」
「ちゃうちゃう!」
嘘を平気でつくことに慣れている私は、あまり動じることもなく彼女の話をかわした。
「ほんま。じゃあ、また明日。お疲れ!」
「お疲れさま」
この日は日本人スタッフで夜シフトは、私と川井だけ。
彼女が帰った今、カウンターに座り、レッスン終了後の明菜との会話を思い浮かべ、
頭の中で何度も練習をした。
「お疲れ様でした」
7時40分になり、レッスンが終わった生徒さんたちが次々と出てきた。
さすがは、企業に強い語学学校であり、本町である。
かなりの生徒さんがレッスンを受けている。
レッスン終了して1分もならないが、既に30名ほどの生徒さんがスクールを後にしようと
している。
「あれ、八戸さん。今日はまだいらっしゃるんですか?」
彼女が出てきたのは、この時間きっと最後のグループ。
こんなに数分が長いなんて思ったことがない。
「冬野さん。すみません。ちょっとお聞きしたいことがあったんで、少しだけいいですか?」
「えっ、えぇ」
そう言ってから彼女は同じグループの他の生徒さんたちに、先に帰ってもらうように伝えた。
「八戸さん。お話って何ですか?」
「実は、冬野さん。ここだけの話しですが、今から食事付き合ってもらえませんか?」
「えっ!? どうしようかな?」
「無理やったらいいですけど・・・・・・」
「八戸さん。ちょっと変なこと言ってもいいですか?」
「何ですか?」
「PLS47でもいいんだったら・・・・・・」
「えっ!?」
私の身体が完全にフリーズしてしまった。
今朝夢で聞いたフレーズとまったく同じ。
それが現実になり、しかも川井ではなく彼女から聞いたので、凍りついてしまった。
「ど、どういう意味なんですか?」
「Perfect Love Story 4 7 daysの略。つまり1週間だけ私と恋に落ちる。それでいいんだったら、
八戸さんの思い通りにしていいけど」
「も、もちろん。それでいいです」
私にすれば、彼女と付き合えるだけでもう幸せの極み。
期間がたった1週間でも文句はなかった。
それにあわよくば短期決戦もある。
そう一瞬のうちに考えた。
「八戸さん。ごめんなさい。今日はペーパーバックいただけて感動したけど、でもやっぱりホントがっかり
です。正直、失望しました。失礼します」
彼女は、そそくさと私に背を向けスクールを後にした。
このとき、私は彼女の気持ちがまったく理解できなかった。
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【はじめに】
この小説は私が実際体験したことをモチーフとした、50%以上がノンフィクションの話を
訳のわからないSFのようなメルヘンチックな気持ち悪い小説に仕上げたものです。
では、お楽しみください。
―PLS47 (前編)―
私の名前は、八戸道信。
本当は『みちのぶ』という名前にも関わらず、物心がついたときから『みちのく猿』と呼ばれている。
あだ名が物語るように、顔がかなり猿に似ている。
それに何と言っても、背が低い。
だから生まれてこのかた25年、女性にもてたことなど一度もない。
女性にもてる為の手段を何度も試したが、未だに結果に結びついていない。
最後のチャンスだと思い、念願の英会話学校に転職した。
今度こそは、念願がかなうと固く信じている。
しかしこの学校に入ってから3か月経過するが、まだ結果は出ていない。
(川井さん? どないしたん?)
――八戸さん。女の子にそんなにもてたい?
(あぁ、もてたいけど。でも、なんでそんなこと訊くん?)
――もてるように、私がええこと教えたげよか?
(お、教えてくれ!)
――相手にコクる前になぁ、『PLS47』って言うねん。
(な、なんや、それ!? 『AKB』みたいやん。)
――まぁ、ええから。
(それって、何なん? 教えてくれ!)
そのとき、私の目が覚めた。
その日の夜、私が思いを寄せている冬野明菜が学校にやってきた。
彼女は毎週水曜日の6時15分からのグループ・レッスンを受講している。
彼女は私が初めて説明をして、生徒になってくれた女性。
この本町の大手商社に勤めるOL。
顔もスタイルも完全に私の好み。
彼女を初めて見た瞬間、私のハートは熱く燃えたぎっていた。
その炎はいまだ、消えることなどない。
「Akina. Can I talk to you for a second?」
われらが教務主任のリチャードが、彼女に話しかけた。
「えっ? Yes.」
「Guess what! There's something I'd like to give you.」
「えっ!?」
彼女は商社に勤めてはいるが、残念ながら英語のスキルはあまり高くない。
案の定、彼女は受付のほうへとやってきた。
「すみません、八戸さん。助けてもらっていいですか?」
私のハートが再び点火した。
(後編に続く)
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