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『炭水化物が人類を滅ぼす』夏井睦
発刊半年で十刷、二十万部、コミック版も出てベストセラーらしい。
現在の私は糖尿病ではないので、糖質制限については話題になっているもののどうかな、という程度の理解である。 ただ、生物学者がコメを食べすぎる事に懸念を示すのを講義で視たことがあって、それについての中立的疑問は以前からある。 読後、糖質制限は糖尿病患者(予備軍も含む)には全面的に適用すべきであり、かつ通常人にはその必要はなし、と私は感じた。 著者は、糖尿病以外の現代人全般にこれを適用すべきと考えているらしいが、それは全く矛盾である。少なくとも現在の世界人口、その増加傾向を考えれば、肉食ではなく人間こそが草食化した方がましである。が、この食糧問題はそれができていないから問題になっているのであって寧ろ、近代化と云うか現代化による、高齢化とその結果としての少子化、つまりは人口減によってこそ解決するだろうし、そうすべきだと考えた方がよい。食糧そのものをどうかする事によってはそれこそ限界があるからだ。 他方で、現代の糖尿病患者数をそれを多いとするか少ないとするかはあろうものの全体の一割とするとその一割の人が確実に穀物を諦められるには、穀物神話からの解放からが確かに必要かもしれない。学会はそれを前提としていないだけである。故に著者はこれを打ち破ろうとしているのではあるが、それが為に大半の人間の食糧を否定しようとするのは近藤誠の癌治療不要論と丁度逆である。 抗がん剤治療が本当に必要であるのは全体の一割くらいしかない、大半の人には必要がないと云うのと何処か似ている。これを全面適用すれば、一割の本当に必要な人が犠牲になるかもしれないのだから。 一割のために全体を覆そうとするのと、九割のために一割を犠牲にするかもしれないのと。 尚、動物の血糖値の話や著者の「生命進化とエネルギー獲得法の変遷に関する仮説」は、近年の雑誌化する新書には珍しく内容の濃い興味深いものがある。 また、本書中盤から終始無造作に出て来るATPとは、アデノシン三リン酸Adenosine TriPhosphateの事。 |
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